強制力が無茶するせいで乙女ゲームから退場できない。こうなったら好きに生きて国外追放エンドを狙おう!処刑エンドだけは、ホント勘弁して下さい

リコピン

文字の大きさ
13 / 27
二章

12 共通イベント 秋の星見1

しおりを挟む
(ん?…これ、マズいんじゃない?)

空き教室の窓の下、お昼休みに、殿下ファンのご令嬢達からの「ちょっと顔貸しなさいよ」イベントをこなしているらしきエンジェちゃん。数回、ランダムで発生するミニイベントのその結末は―

「あ。」

「お嬢様?如何されました?」

「ん?えーっと、あ、ヤバい。バッチリ目が合っちゃった。あ、行っちゃった。」

「お嬢様?窓の外に何か?」

「いやー、誤解されちゃったなー、と。」

取り囲まれ、逃げられなくなったエンジェちゃんの頭上から降り注いだバケツ水。二階からぶちまけられたソレに屈することなく、キッと頭上を見上げたエンジェちゃんと目が合ったのは、三階でランチ中の悪役令嬢わたし

「…『私』、仕事し過ぎじゃない?」

「お嬢様は学園での授業以外にも妃教育に社交と、大変努力されていらっしゃいます。他のご令嬢方の追随を許さぬ、正にこの国の、」

「ありがとう、ジェイク。ジェイクもいつもお仕事お疲れ様。ジェイクのおかげで私、凄い助かってるよ。」

「…恐縮でございます。」

「うん!よし!じゃあ、ご飯だご飯。あ、ジェイクも座ってね。」

「…」

最近は抵抗も少なく同じ食卓についてくれるジェイク。甲斐甲斐しく世話をやこうとするのはもうどうしようもないけど、執事としての態度は少しずつ崩せてるんじゃないかな。

「…お嬢様、食後の紅茶には、お砂糖を多めに致しましょうか?」

「ん?どうして?」

「お疲れなのではありませんか?」

「ああ。」

私の「仕事し過ぎ」発言が効いてしまっているらしい。ジェイクが分かりやすく顔を曇らせている。

「私では、お嬢様のご負担を減らすことが出来ません。せめて、私に出来ることは無いかと愚考いたしました。」

「もう、何言ってるの、ジェイク。さっき言ったでしょう?ジェイクにはいつも助かってるって。嘘でもお世辞でもなく、本当だからね?」

「ですが、それでは…」

「ん?」

「足りないのです。助け…、程度では。私は、出来ることならお嬢様の背負う全て、この身に引き受けたいと願っています。それが叶わぬことが…」

「ちょ、待って!?何!?突然、どうしたの!?」

ジェイクの苦しげ、というよりは最早、切なげと言ってもいいような表情、真っ直ぐにこちらを見つめる瞳に灯る熱―

「これ、勘違いじゃないよね!私、今、ちょっと心臓キュンっていうか、ギュンってきてるよ!?」

「お嬢様?お身体の調子が?いけませんね、本日は早退して、」

「自覚無しか!?」

あっという間に主人を案じる従者の顔に戻ってしまったジェイク。なのに、私の顔の熱は戻らない。

(っ!ジェイクが、可愛くない!)

なんか、悔しくて、恥ずかしくて、

「ねぇ!ジェイク!お願いがあるんだけど!」









―流星群、一緒に見に行こう!



「…後は、念のため、虫除けの香を。…いえ、魔物除けもあったほうがいいですね。汎用品と、特注のシェルスパイダー除け、ギガアント除け、ああ、後はハンガーベアの…」

「…ジェイクは、一体どこの魔境に挑むつもりなの?」

「お嬢様。ですが、お嬢様の身に万一があってはなりません。勿論、何が現れようと、お嬢様は私がこの身を賭してお守り致しますが、あらかじめの対策も、」

「学園裏の森の広場に、星を見に行くだけだよね?学園の結界内にある。」

「…」

「はい。これとこれとこれは、置いて。」

「ですが、お嬢様…」

魔物除けの香をお嬢様に取り上げられてしまい、途端、手持無沙汰になる。心許なさに、視線をさ迷わせれば、

「はい、こっちのバスケット。ジェイクはこれ持って。」

「これは?」

「ブランケットと飲み物。で、空いてる左手には、はい。」

「お嬢様?」

差し出されたお嬢様の右手、しかし、そこには何も握られておらず─

「手、つなご?」

「えっ!?手!?お、お嬢様、それは流石にっ!」

「うん、でも、夜だからねー、暗いから。足元、危ないでしょう?」

「そ、れは確かに、はい。お嬢様のおっしゃる通りですね。」

「でしょう?だから、私が転んだりしないよう、ちゃんと、手、繋いでてくれる?」

「はい!勿論でございます!お嬢様の御身をお守りするのが私の役目!お嬢様のお身体には、傷一つつかせません!」

「うん、…私は時々、ジェイクが心配、ちょっと、申し訳なくなるよ。」

「お嬢様?」

「ジェイクは、変わらずにそのままでいてね。」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

悪役令嬢だから知っているヒロインが幸せになれる条件【8/26完結】

音無砂月
ファンタジー
※ストーリーを全て書き上げた上で予約公開にしています。その為、タイトルには【完結】と入れさせていただいています。 1日1話更新します。 事故で死んで気が付いたら乙女ゲームの悪役令嬢リスティルに転生していた。 バッドエンドは何としてでも回避したいリスティルだけど、攻略対象者であるレオンはなぜかシスコンになっているし、ヒロインのメロディは自分の強運さを過信して傲慢になっているし。 なんだか、みんなゲームとキャラが違い過ぎ。こんなので本当にバッドエンドを回避できるのかしら。

前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした

タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

処理中です...