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序章 先輩が死んだ
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女の子について行ったら、扉があった。本当に扉だけが、ポツンと。入れって言われて、扉を開けてみたら、部屋があって。不思議ーって思いながら入ってみたら、中には、金髪碧眼のゴージャス美女。わーお。
美人のお姉さんが言うには、ここは天国みたいなところで、お姉さんは天使みたいなものなんだとか。死んだ人間の魂は、ここで一回リセットされて、次の人生を歩むんだけど、前の生への未練が強すぎてリセットできないことが、たまーにあるんだって。
で、私の場合がまさにそれ。未練が強すぎて、湖から弾き出されたんだそうだ。うーん、未練ねえ。お姉さんはそう言うけど。
だいたい、さっき湖に飛び込んだ時点で、結構色々なことがリセットされてしまっている気がする。気分すっきり。それに、未練って言われて心当たりがあるのは先輩と先輩の写真くらいのものだけど。
確かに先輩には会いたい。でも、既に亡くなっていて、前世に居ないし、先輩の写真も、会社の誰かが先輩のお母さんに返してくれると思う。一緒に棺に入れてもらえたら、それはそれで嬉しいけれど。
と言うようなことをお姉さんに説明したら、お姉さんの手から何かキラキラしたものが飛んできた。それを浴びた私の体、だと思う辺りからは、タランと赤い糸が床へと垂れる。糸の先は、部屋の外へと延びて見えなくなってた。
お姉さんの説明によると、この赤い糸は、お姉さんの力で見えるようになった私の未練。お姉さんがその先を追ったけど、どうやらこことは違う世界、所謂、異世界ってところに繋がっているらしい。
しかも、赤い糸、私の未練の向かう先は、やっぱり先輩なんだそうで、何と、先輩はその異世界に転生してしまっているのだそうだ。
聞いた瞬間、お姉さんに土下座した。体は無いから、気持ちだけ。先輩に会わせて下さい!お願いします!お願いします!って。
お姉さんはいいとも駄目とも言わなかった。ただ教えてくれたのは、魂だけとはいえ、自力で異世界へ渡ることは難しく、失敗すれば魂が消滅したり、何処とも知れぬ世界へ飛ばされたりしてしまう。
私の場合は、生まれ変わるまでは赤い糸が見えるから、それを頼りに先輩のいる世界を目指すことはできる。でも失敗のリスクは変わらないし、転生済みの先輩には、前世、つまりこの世界の記憶はない。
それでも行くか、と聞かれて、私の返事は当然一つだった。
お世話になったお姉さんに、お礼を告げて、名前を聞いた。もう会うことはないけれど、例えそれが仕事だからだとしても、先輩へと繋がる道を教えてくれた恩人を覚えておきたかったから。
扉を開け、教えられた道へと進む。目の前には、深い闇。その奥へと消えていく、一本の赤い糸。
女の子について行ったら、扉があった。本当に扉だけが、ポツンと。入れって言われて、扉を開けてみたら、部屋があって。不思議ーって思いながら入ってみたら、中には、金髪碧眼のゴージャス美女。わーお。
美人のお姉さんが言うには、ここは天国みたいなところで、お姉さんは天使みたいなものなんだとか。死んだ人間の魂は、ここで一回リセットされて、次の人生を歩むんだけど、前の生への未練が強すぎてリセットできないことが、たまーにあるんだって。
で、私の場合がまさにそれ。未練が強すぎて、湖から弾き出されたんだそうだ。うーん、未練ねえ。お姉さんはそう言うけど。
だいたい、さっき湖に飛び込んだ時点で、結構色々なことがリセットされてしまっている気がする。気分すっきり。それに、未練って言われて心当たりがあるのは先輩と先輩の写真くらいのものだけど。
確かに先輩には会いたい。でも、既に亡くなっていて、前世に居ないし、先輩の写真も、会社の誰かが先輩のお母さんに返してくれると思う。一緒に棺に入れてもらえたら、それはそれで嬉しいけれど。
と言うようなことをお姉さんに説明したら、お姉さんの手から何かキラキラしたものが飛んできた。それを浴びた私の体、だと思う辺りからは、タランと赤い糸が床へと垂れる。糸の先は、部屋の外へと延びて見えなくなってた。
お姉さんの説明によると、この赤い糸は、お姉さんの力で見えるようになった私の未練。お姉さんがその先を追ったけど、どうやらこことは違う世界、所謂、異世界ってところに繋がっているらしい。
しかも、赤い糸、私の未練の向かう先は、やっぱり先輩なんだそうで、何と、先輩はその異世界に転生してしまっているのだそうだ。
聞いた瞬間、お姉さんに土下座した。体は無いから、気持ちだけ。先輩に会わせて下さい!お願いします!お願いします!って。
お姉さんはいいとも駄目とも言わなかった。ただ教えてくれたのは、魂だけとはいえ、自力で異世界へ渡ることは難しく、失敗すれば魂が消滅したり、何処とも知れぬ世界へ飛ばされたりしてしまう。
私の場合は、生まれ変わるまでは赤い糸が見えるから、それを頼りに先輩のいる世界を目指すことはできる。でも失敗のリスクは変わらないし、転生済みの先輩には、前世、つまりこの世界の記憶はない。
それでも行くか、と聞かれて、私の返事は当然一つだった。
お世話になったお姉さんに、お礼を告げて、名前を聞いた。もう会うことはないけれど、例えそれが仕事だからだとしても、先輩へと繋がる道を教えてくれた恩人を覚えておきたかったから。
扉を開け、教えられた道へと進む。目の前には、深い闇。その奥へと消えていく、一本の赤い糸。
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