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Ⅰ 【完結】愛に殉ずる人【57,552字】
Ⅰ 7. Side L
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7.
もう、何度目かの呼び出し。通いなれ始めた王宮への道。つい先日までは、この道を行くことが彼女の道を開くことになる、そう信じることが出来た。いや、実際に開き始めているのだ、彼女の道は。ただ、それが決して、己の道とは交わることがないだけで―
「…今日、お前を呼んだのは、確認したいことがあるからだ」
目の前、己が主と同じ色彩を持つ男が唸り声を上げている。
「リュシアン、貴様、俺達に黙っていることがあるだろう?」
「…」
「貴様が伝えた清めの儀、手順や何かを誤魔化しているのではないか?何故、ミレイユの…俺達の邪魔をする?貴様の目的は何だ?」
「…私は、歴代の神子様がなされていることを、ミレイユ様にお伝えしております」
「嘘をつけ!何が、祈るだけだ!あれは、あんなものは!全く違うじゃねーか!?」
違う―
そう、言い切れる男に、妬心の焔があがる。
「…嘘ではございません。現に、ジルと言いましたか、あの子どもは、ミレイユ様に倣っただけ。しかし、確かに、神々の御許に呼ばれたでしょう?」
「!?」
男は、己の至上に導かれて、神子の役目を果たし始めた。
「違う」と言い切れるのは、その世界を知るが故。ジリジリと、身を焼かれる思い。彼女の命を危険にさらすことしかしなかった己との違い。自身の上げた焔に息が上手く吸えない。
「…何を、企んでいる?」
「…」
「貴様、語っていないことがあるだろう?…知っていることを全て話せ。今、この場で、嘘偽りなく」
「…お断り致します」
「何っだと!?」
「…それを、私が口にすることは許されておりません」
「貴様!裏切るつもりか!?」
「…」
男が、剣の柄に手を掛けた。抜かれた銀の、鈍い輝き。
いっそ―
いっそのこと、ここで斬られてしまえば、彼女がこの男を選ぶことはないのではと、淡い期待が生まれる。それくらい、その程度には、彼女も己を心の内に置いてくれている、そう願うことを、
私は未だ、許されるだろうか―
もう、何度目かの呼び出し。通いなれ始めた王宮への道。つい先日までは、この道を行くことが彼女の道を開くことになる、そう信じることが出来た。いや、実際に開き始めているのだ、彼女の道は。ただ、それが決して、己の道とは交わることがないだけで―
「…今日、お前を呼んだのは、確認したいことがあるからだ」
目の前、己が主と同じ色彩を持つ男が唸り声を上げている。
「リュシアン、貴様、俺達に黙っていることがあるだろう?」
「…」
「貴様が伝えた清めの儀、手順や何かを誤魔化しているのではないか?何故、ミレイユの…俺達の邪魔をする?貴様の目的は何だ?」
「…私は、歴代の神子様がなされていることを、ミレイユ様にお伝えしております」
「嘘をつけ!何が、祈るだけだ!あれは、あんなものは!全く違うじゃねーか!?」
違う―
そう、言い切れる男に、妬心の焔があがる。
「…嘘ではございません。現に、ジルと言いましたか、あの子どもは、ミレイユ様に倣っただけ。しかし、確かに、神々の御許に呼ばれたでしょう?」
「!?」
男は、己の至上に導かれて、神子の役目を果たし始めた。
「違う」と言い切れるのは、その世界を知るが故。ジリジリと、身を焼かれる思い。彼女の命を危険にさらすことしかしなかった己との違い。自身の上げた焔に息が上手く吸えない。
「…何を、企んでいる?」
「…」
「貴様、語っていないことがあるだろう?…知っていることを全て話せ。今、この場で、嘘偽りなく」
「…お断り致します」
「何っだと!?」
「…それを、私が口にすることは許されておりません」
「貴様!裏切るつもりか!?」
「…」
男が、剣の柄に手を掛けた。抜かれた銀の、鈍い輝き。
いっそ―
いっそのこと、ここで斬られてしまえば、彼女がこの男を選ぶことはないのではと、淡い期待が生まれる。それくらい、その程度には、彼女も己を心の内に置いてくれている、そう願うことを、
私は未だ、許されるだろうか―
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