異世界から帰ってきたら、大好きだった幼馴染みのことがそんなに好きではなくなっていた

リコピン

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第六章 元勇者とお姫様

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倒れた男が慌ただしく運び出され、大人しくなった幽鬼が鎖を引かれて連れていかれるのを三人で見送った。誰も近づいてくる人は居ない。いつの間にかお姫様の姿も見えなくなっていた。

「…帰ります?」

これ以上、ここに居てもどうしようもない気がしての提案。

「帰るか」

「明莉ちゃん、送っていくよ?」

未だ遠巻きにしている人達からの視線を感じながら、中庭を後にする。並んで歩きながら、話すのは先ほど二人が『憑依型』と呼んでいた幽鬼のこと。

「憑依型っていうのは、名前の通り、対象に憑依して操ることが出来る幽鬼なんだけど。出現数が少くて、まだ能力の全容について詳しいことがわかっていないんだ」

「おまけに、憑依型は感知が難しい。気配が微弱で、宿主に潜伏している状態で関知するのはほぼ無理だな。宿主が暴走しはじめて初めて感知される」

「え、じゃあ、」

秀の顔を見上げる。

「だな。秀は、低級鬼に憑いてた憑依型を違和感として感知した。おまけに、あの男が暴れ出す前に憑依型に気づいたんだから、本当に、大した感知能力だよ」

部長の言葉に、確かにスゴいと大きく頷けば、秀が照れたように笑う。

磨針まはりの家も、今回の失態で立場をなくしたからな。良かったじゃねぇか、橋架」

「?」

「磨針家が、花守を引きずり下ろそうとしてるやつらの急先鋒だ。あいつら、暫くは大人しいぞ」

「…なるほど」

部長と目が合ったまま、二人でニヤリと笑った。

「…明莉ちゃん、心配してくれてたの?」

「うん。秀は何にも説明してくれないし、会ってもくれないから」

「…ごめんね」

連絡できなかった自分のヘタレは棚上げして責めてみたら、本当に申し訳なさそうに謝られた。

「…私こそ、ごめんなさい」

怪我しちゃって、心配かけちゃって。

「…どこかで、お茶してく?」

「そだね。私、甘いもの食べ損ねたし」

秀ともまだ、話したいこと、色々あるし。

「甘いもんー?俺は、飲みがいい」

「え?部長も来るつもり?」

「悠司も来るの?」

「はー!?何だよ!お前らのその態度!」

知らず、笑いがこぼれる。くだらない言葉の応酬が心地よい。

今日は、スキルをいくつも使った。使うことに抵抗がなくなってきている。使えば、過去あちらに引きずられそうになる時もあるけれど、うん、大丈夫。まだ、自然に笑える。二人の存在が、過去を大きく遠ざけた。




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