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第三章 大学生活と再会とオカルト
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「…誰だよ、あんた」
夏休み三日目。実家最寄り駅のロータリーで再会した、実の弟の第一声がこれである。
「ひどいよ、幸助!明莉だよ!幸助の大事なお姉ちゃんだよ!」
「…姉ちゃんには言ってねぇ。そっちの男、そいつ誰?」
目付きの悪い弟が、目線だけで指し示す「そっち」に居るのは、仲良く電車に揺られてやってきた花守さん。
「ちょっと、幸助。それはそれで言い方に問題あるでしょ!失礼だよ、年上に対して!」
「…」
姉ちゃん、そこのところは厳しくいくよ!と鼻息荒く怒ってみるが、当の花守さんにドウドウと宥められた。
「明莉ちゃん、気にしてないから、大丈夫。ありがとう。弟さん?なんだよね?彼には、僕のこと言ってなかったの?」
「…」
その言葉にちょっと考える。幸助の不機嫌そうな顔。思い出した。
「そう言えば、言ってなかったね」
言い訳をさせてもらえるなら、幸助が先に帰省しているとも、駅まで迎えに来てくれるとも思っていなかったのだ。まあ確かに、「いつ頃帰るの?」のメールに、何でそんなこと聞くのかと疑問に思いながら電車の到着時間は返信したけれど。
「なるほど。それじゃあ、余計に不審に思うよね」
花守さんが幸助の方へと向き直り、軽く頭を下げた。
「はじめまして、明莉さんと同じサークルの花守と言います」
「…」
丁寧なご挨拶に対して、返事もしない我が弟をにらんた。流石にまずいと思ったのか、しぶしぶといった表情で返事を返す幸助―
「…ども」
何という感じの悪さ。
「警戒させてごめんね。僕もたまたまこっちに用があったから一緒に移動しただけで、明莉さん達とは元からここで別れる予定だったんだ」
「…」
納得していませんという顔の弟に代わって花守さんに頭を下げれば、困ったような苦笑が返ってきた。
「それじゃあ、長居してもなんだから、僕はここで。明莉ちゃん、チサさん、また、三日にね」
来月の三日、夏合宿の初日―
「はい、花守さんも、夏バテとか気を付けて」
そう言って、笑って手を振り去っていく花守さんを見送った。その後ろ姿が完全に消えたところで、動き出す。
「さて、それじゃあ、私達も帰りますか」
「…それ、貸して。持つから」
「え?いいよいいよ。自分で持つよ。あ、じゃあチサの荷物持ってあげて」
まさか、まだまだ子どもだと思っていた弟の口からそんな紳士な言葉が出てくるとは。嬉しいけれど、つい反射的に断ってしまった。
「両方持つ。いいから、さっさと貸せ」
不機嫌なままの幸助に、結局、チサのバッグだけではなく、自分のバッグも奪い取られてしまう。
「幸助、重いでしょ?大丈夫?」
「平気」
「本当?知らないうちに頼もしくなっちゃって。弟の成長に感動するわー」
「…」
言葉通り、両手に荷物を抱えていても、前を行く幸助の足取りは軽々としている。その背に、チサの小さな声が届く。
「…ありがとう」
「別に。本当に平気だから」
一瞬、振り返り、チサにそう返した幸助。その表情が―
あれ?幸助くん、何か、チサに対しては言い方優しくないですか?あと、何か、顔赤くない?あれ?今日、迎えに来てくれたのって、あれ?荷物持ってくれるのって、あれ?
「…誰だよ、あんた」
夏休み三日目。実家最寄り駅のロータリーで再会した、実の弟の第一声がこれである。
「ひどいよ、幸助!明莉だよ!幸助の大事なお姉ちゃんだよ!」
「…姉ちゃんには言ってねぇ。そっちの男、そいつ誰?」
目付きの悪い弟が、目線だけで指し示す「そっち」に居るのは、仲良く電車に揺られてやってきた花守さん。
「ちょっと、幸助。それはそれで言い方に問題あるでしょ!失礼だよ、年上に対して!」
「…」
姉ちゃん、そこのところは厳しくいくよ!と鼻息荒く怒ってみるが、当の花守さんにドウドウと宥められた。
「明莉ちゃん、気にしてないから、大丈夫。ありがとう。弟さん?なんだよね?彼には、僕のこと言ってなかったの?」
「…」
その言葉にちょっと考える。幸助の不機嫌そうな顔。思い出した。
「そう言えば、言ってなかったね」
言い訳をさせてもらえるなら、幸助が先に帰省しているとも、駅まで迎えに来てくれるとも思っていなかったのだ。まあ確かに、「いつ頃帰るの?」のメールに、何でそんなこと聞くのかと疑問に思いながら電車の到着時間は返信したけれど。
「なるほど。それじゃあ、余計に不審に思うよね」
花守さんが幸助の方へと向き直り、軽く頭を下げた。
「はじめまして、明莉さんと同じサークルの花守と言います」
「…」
丁寧なご挨拶に対して、返事もしない我が弟をにらんた。流石にまずいと思ったのか、しぶしぶといった表情で返事を返す幸助―
「…ども」
何という感じの悪さ。
「警戒させてごめんね。僕もたまたまこっちに用があったから一緒に移動しただけで、明莉さん達とは元からここで別れる予定だったんだ」
「…」
納得していませんという顔の弟に代わって花守さんに頭を下げれば、困ったような苦笑が返ってきた。
「それじゃあ、長居してもなんだから、僕はここで。明莉ちゃん、チサさん、また、三日にね」
来月の三日、夏合宿の初日―
「はい、花守さんも、夏バテとか気を付けて」
そう言って、笑って手を振り去っていく花守さんを見送った。その後ろ姿が完全に消えたところで、動き出す。
「さて、それじゃあ、私達も帰りますか」
「…それ、貸して。持つから」
「え?いいよいいよ。自分で持つよ。あ、じゃあチサの荷物持ってあげて」
まさか、まだまだ子どもだと思っていた弟の口からそんな紳士な言葉が出てくるとは。嬉しいけれど、つい反射的に断ってしまった。
「両方持つ。いいから、さっさと貸せ」
不機嫌なままの幸助に、結局、チサのバッグだけではなく、自分のバッグも奪い取られてしまう。
「幸助、重いでしょ?大丈夫?」
「平気」
「本当?知らないうちに頼もしくなっちゃって。弟の成長に感動するわー」
「…」
言葉通り、両手に荷物を抱えていても、前を行く幸助の足取りは軽々としている。その背に、チサの小さな声が届く。
「…ありがとう」
「別に。本当に平気だから」
一瞬、振り返り、チサにそう返した幸助。その表情が―
あれ?幸助くん、何か、チサに対しては言い方優しくないですか?あと、何か、顔赤くない?あれ?今日、迎えに来てくれたのって、あれ?荷物持ってくれるのって、あれ?
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