異世界から帰ってきたら、大好きだった幼馴染みのことがそんなに好きではなくなっていた

リコピン

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第三章 大学生活と再会とオカルト

7.

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7.

何故かやけにオカルト好きになってしまったチサ。興がのったという部長が披露し始めた『秘蔵心霊写真』について、何やら熱い論議を交わし始めた。花守さんと二人、そんな二人を眺めながら待つ。

「…夏休み、明莉あかりちゃん達は他の予定が決まってるの?合宿以外に」

「特には、何も。実家に帰ろうとは思ってるけど」

言いながら、大学生としてはなかなか寂しい夏休みかもしれないと思ってしまった。バイト一つしていない身なのだから、もう少し、バケーション的な何かがあっても―

「そうなんだ。いつ頃の予定?僕もついていっていい?」

「え!?ついてくる??うちに??」

とりあえず、近場の海でバケーションすることを想像していたところに、想定外、突然のお願い。軽く混乱する。思わず、花守さんを凝視すれば、少し驚いた顔の後、彼が笑いだした。

「はは、明莉ちゃんの家か。ご両親に紹介して貰えるの?」

「紹介!?」

それは、一体どういう紹介なんだろうか。お世話になってる先輩として?仲の良い友達?それとも―

何かを試されているのだろうか?

マジマジと見つめれば、堪えきれないとばかりに花守さんの笑いが大きくなる。

「ごめん、冗談。ごめんね?三嶋の緑地公園に、用があるんだ。それで、明莉ちゃん達が帰るなら、途中まで一緒にいいかな?と思って」

「…いや、はい。そういうことですね。全然問題無しです」

まあ、薄々、何か違うな、そんな雰囲気じゃないな、とは気づいていた。

「あまり時間がとれなくて日帰りになっちゃうから、ご両親へのご挨拶はまたこの次の機会でいいかな?ごめんね?」 

「いえいえいえ」

完全に、私の乙女の部分がもてあそばれていると思う。

「いつ頃帰る予定?」

「テスト期間が終わったら帰ろうかと。弟が、今年はその時期に帰ってくるらしくて」

「弟さんが居るんだ。家を出てるの?」

「うん。二つ下なんだけど、今は、高校の寮に入ってる」

結局、去年の夏休みに半分戻した体重も、冬休みにはこちらに還ってきた時の状態に戻ってしまった。その状態でお正月に再会した弟の幸助こうすけには、最高のサプライズを提供し、「誰だ、お前!?」の究極の評価を頂いた。

「そうかぁ。弟さんとも会ってみたかったな、残念。また今度の機会、だね」

「…」

言い方が、何か、何だろう。花守さんは、本気でいつか私の家族に会うつもりなのだろうか。

「明莉、お待たせ。帰ろう」

「…満足した?」

戻ってきたチサの声。心持ち、まだ少しテンションが上がったままのようだ。

「いくつか収穫はあった。後は、現地調査」

「…なるほど」

いつもより、饒舌なチサの話に耳を傾けながら、花守さんと部長に別れを告げる。「帰省する日が決まったら連絡する」、そう約束をして部室を後にした。



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