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第三章 大学生活と再会とオカルト
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駅までの帰り道、ポツポツと互いのことを話しながら、人気の少ない川沿いを歩く。
花守さんと部長は子どもの頃、それこそ親同士の代からの付き合いがあるそうで、所謂、幼馴染みということしい。私と来叶達との関係と同じ。
その付き合いが大学まで続いているのだから、よほど仲が良いのかと思い、そう尋ねれば、片方からは満面の笑みと共に肯定が、片方からは苦笑と共にノーコメントが返ってきた。
「お二人ともこっちが地元って言うことは、花守さんと三嶋の緑地公園で会ったのは、本当にすごい偶然、なんですね」
「うん、そうだね。それは本当にラッキーだった。あと、明莉ちゃん、敬語はいらないから、普通に話して?」
「うっ」
求められたとはいえ、いきなりのタメ語は中々にハードルが高い。だけど、よく考えれば、恐らく花守さんとは実年齢的には同い年。ついでに部長も。クラスメートと同じ感覚で、何とか。
「わかった。敬語は無し。頑張ってみる」
「うん。そうしてくれた方が嬉しい」
そう言った花守さんの笑顔が優しくて、つられて笑った。
「…あの場所に、何があるの?」
反対隣から聞こえた声。最初からタメ語全開のチサの質問にも、花守さんは、嫌な顔一つせずに答える。
「何かがあるって断定出来るわけじゃないんだけど、気配というか、嫌な雰囲気を感じるんだ。だから、暫くは、あの場所には近づかないで欲しい」
「…それが『霊感』ということ?見えるわけではなく、感じる?」
「うん、今のところは、そうだね」
―今のところは?
何となく歯切れの悪い答えに、横から別の声が答えた。
「秀はすげえぞ。現れる前に霊を感知して、実際に現れたら見ることも出来る」
「…悠司」
「いいだろ?これくらい」
何故か本人よりも自慢げな部長を、花守さんが嗜める。それでも、部長の「秀は子どもの頃から凄かった」話は止まらず、結局、駅に着くまで続いた。
「駅から家までは近いんだよね?」
「うん」
改札近くまで送ってもらい、そこで花守さん達に別れを告げる。
「二人一緒だから大丈夫だとは思うけど、気を付けて。ついたらメールしてくれる?心配だから」
「…わかりました」
思わず敬語に戻ってしまったのは、両親以外でこんな真剣な顔で心配してくれる人は初めてだったから。
「じゃあ、またね?今度から、サークルの方にも顔出すから」
「うん…」
手を振って、改札の中へ。エスカレーターでもう一度振り返った時にも、二人はまだそこに居た。
「あの二人は乗らないのかな?花守さん、電車で来たって行ってたよね?あ、部長が車なのかな?」
「…多分、さっきの場所に戻るつもり」
「え?幽霊のとこ?」
「…」
うなずいたチサに、もう改札は見えなくなってしまったけれど、後ろを振り返った。
「…大丈夫なのかな?」
「多分、あの二人は慣れてる。私達は足手まといだと判断されたから帰された」
「本当に?花守さんはともかく、部長は自分で『霊感無い』って言ってたよ?大丈夫なのかなあ?」
こちらの世界の『幽霊』がどういうものなのか―幸いまだ一度も目にしたことがないため―わからない。二人を案じる気持ちが広がり始めたところで、
「大丈夫、だと思う。あの花守っていう男の気配は、やっぱり『普通じゃない』」
「そうなの?部長も?」
「あの男は…」
チサが言いよどむ。
「…しっぽ」
「え?シッポ??」
「部長自体は普通。だけど、あの男が持ってる『しっぽ』は『普通じゃない』」
チサの言葉に、部長の言葉が甦る。
「あ!何か魔除けとか何とか言ってたのは、本当ってこと?あのド派手なしっぽが?」
「今日、近づいてわかった。封じてあったけど、魔力、とも違う、だけど何か力を感じた」
「おー、まさかの本物だったとは」
では、あのファッションにも本当に何か意味があるのかもしれない。
チサの言葉に、いくらか安堵する気持ちが生まれた。少なくとも、私達は居ない方がいいと判断されたのだ。ここは大人しく家に帰るしかなさそうだ。
帰って、メールをしよう。『無事に着いた』と。それで、彼の『気がかり』が減るのなら。
駅までの帰り道、ポツポツと互いのことを話しながら、人気の少ない川沿いを歩く。
花守さんと部長は子どもの頃、それこそ親同士の代からの付き合いがあるそうで、所謂、幼馴染みということしい。私と来叶達との関係と同じ。
その付き合いが大学まで続いているのだから、よほど仲が良いのかと思い、そう尋ねれば、片方からは満面の笑みと共に肯定が、片方からは苦笑と共にノーコメントが返ってきた。
「お二人ともこっちが地元って言うことは、花守さんと三嶋の緑地公園で会ったのは、本当にすごい偶然、なんですね」
「うん、そうだね。それは本当にラッキーだった。あと、明莉ちゃん、敬語はいらないから、普通に話して?」
「うっ」
求められたとはいえ、いきなりのタメ語は中々にハードルが高い。だけど、よく考えれば、恐らく花守さんとは実年齢的には同い年。ついでに部長も。クラスメートと同じ感覚で、何とか。
「わかった。敬語は無し。頑張ってみる」
「うん。そうしてくれた方が嬉しい」
そう言った花守さんの笑顔が優しくて、つられて笑った。
「…あの場所に、何があるの?」
反対隣から聞こえた声。最初からタメ語全開のチサの質問にも、花守さんは、嫌な顔一つせずに答える。
「何かがあるって断定出来るわけじゃないんだけど、気配というか、嫌な雰囲気を感じるんだ。だから、暫くは、あの場所には近づかないで欲しい」
「…それが『霊感』ということ?見えるわけではなく、感じる?」
「うん、今のところは、そうだね」
―今のところは?
何となく歯切れの悪い答えに、横から別の声が答えた。
「秀はすげえぞ。現れる前に霊を感知して、実際に現れたら見ることも出来る」
「…悠司」
「いいだろ?これくらい」
何故か本人よりも自慢げな部長を、花守さんが嗜める。それでも、部長の「秀は子どもの頃から凄かった」話は止まらず、結局、駅に着くまで続いた。
「駅から家までは近いんだよね?」
「うん」
改札近くまで送ってもらい、そこで花守さん達に別れを告げる。
「二人一緒だから大丈夫だとは思うけど、気を付けて。ついたらメールしてくれる?心配だから」
「…わかりました」
思わず敬語に戻ってしまったのは、両親以外でこんな真剣な顔で心配してくれる人は初めてだったから。
「じゃあ、またね?今度から、サークルの方にも顔出すから」
「うん…」
手を振って、改札の中へ。エスカレーターでもう一度振り返った時にも、二人はまだそこに居た。
「あの二人は乗らないのかな?花守さん、電車で来たって行ってたよね?あ、部長が車なのかな?」
「…多分、さっきの場所に戻るつもり」
「え?幽霊のとこ?」
「…」
うなずいたチサに、もう改札は見えなくなってしまったけれど、後ろを振り返った。
「…大丈夫なのかな?」
「多分、あの二人は慣れてる。私達は足手まといだと判断されたから帰された」
「本当に?花守さんはともかく、部長は自分で『霊感無い』って言ってたよ?大丈夫なのかなあ?」
こちらの世界の『幽霊』がどういうものなのか―幸いまだ一度も目にしたことがないため―わからない。二人を案じる気持ちが広がり始めたところで、
「大丈夫、だと思う。あの花守っていう男の気配は、やっぱり『普通じゃない』」
「そうなの?部長も?」
「あの男は…」
チサが言いよどむ。
「…しっぽ」
「え?シッポ??」
「部長自体は普通。だけど、あの男が持ってる『しっぽ』は『普通じゃない』」
チサの言葉に、部長の言葉が甦る。
「あ!何か魔除けとか何とか言ってたのは、本当ってこと?あのド派手なしっぽが?」
「今日、近づいてわかった。封じてあったけど、魔力、とも違う、だけど何か力を感じた」
「おー、まさかの本物だったとは」
では、あのファッションにも本当に何か意味があるのかもしれない。
チサの言葉に、いくらか安堵する気持ちが生まれた。少なくとも、私達は居ない方がいいと判断されたのだ。ここは大人しく家に帰るしかなさそうだ。
帰って、メールをしよう。『無事に着いた』と。それで、彼の『気がかり』が減るのなら。
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