異世界から帰ってきたら、大好きだった幼馴染みのことがそんなに好きではなくなっていた

リコピン

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第三章 大学生活と再会とオカルト

2.

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2.

―入ってしまった

自慢ではないが、私は『幽霊』の類いが非常に苦手だ。その私が、『オカルト研究サークル』に―

「?魔王討伐の途中で、『ゴースト』系のモンスターをボコボコにしてた」

「あれも苦手だったけど、あれはまだ『ゴースト』って感じだったでしょ?私はジャパニーズ『幽霊』って感じのが駄目なの!」

髪を洗った後に目を開ける瞬間や、公衆トイレで上を見上げて、仕切りの隙間が視界に入るのが恐いのだ。

「?よくわからない」

「えー?」

当の『オカ研』の第三回新歓コンパ、居酒屋の片隅でオレンジジュース片手に、チサに管を巻く。

入学式当日、一週間後、そして本日と『新歓』という名目で三度の飲み会を開いているというこのサークルは、特にノリが良いというわけでも、仲良しサークルというわけでもないらしい。

活動内容は、心霊現象やSF的な何か、都市伝説的なものから、『友達の友達が本当に見たらしいんだけど』系の話までを、幅広く研究すること。基本的には、集まる人もタイミングもバラバラで、それぞれ自分達が興味のある題材を調べるというスタンスなのだそうだ。

なのに、何故か、三度も開かれる『新歓コンパ』

「おー、新入生、また二人入ったのかー!よろしくなー」

その理由は、今、チサと二人きりだった席にビール片手に乗り込んで来た目の前の男、オカ研部長の『冴木さえき 悠司ゆうじ』にあるのではないかと思っている。

既に出来上がっているのか、ハイテンションで入部を歓迎してくれる男は、サークル内でも明らかに異質な存在。他の皆さんが落ち着いた、どちらかと言えば地味な部類に入るであろう雰囲気の中、アロハシャツにサングラス、初めて見る大きさの尻尾キーホルダーを腰にぶら下げているというド派手さ。

「…アカリ、この男も『普通』じゃない」

「わかってる。これは、わかりやす過ぎるくらいにわかる。気を付ける」

本人を目の前に警戒警報を発令するが、言われた本人は気にした様子もなく、笑っている。

「大丈夫、大丈夫。俺は無害。こんな格好してるのは、魔除け的な?邪を祓う的なアレだから」

「ヤバイ。ますます怪しい」

男から逃げようにも、場所が悪い。壁を背にした隅っこの席だったために、完全に退路を断たれている。

「そいで、君らは何でうちに入ろうと思ったの?霊に興味あるってことは、霊感持ちとか?」

「…」

明らかな警戒態勢を気にも止めず、グイグイ来るオカ研部長。

「霊感は無いです。けど、チサが『オカ研』に惹かれた理由は、私も知りたい」

「お!君の方が興味持ってくれたんだ。君は?幽霊見たことある?霊感持ち?」

しつこく『霊感』に拘るのは、やはり腐ってもオカ研部長ということだろうか。サングラス越しの彼の表情はよめないが、チサの方を興味深げに眺めているのがわかる。

「…何で出来ているのか、知りたい」

「『何で出来ているのか』??」

部長ガン無視で、こちらに向かって答えてくれたチサの言葉は、恐らく、「オカ研に惹かれた理由」なんだろうけれど、

「何が??」

「『霊』という存在が、何から出来ているのかを知りたい」

「え?幽霊って、人の魂的なものなんじゃないの?」

「だとしたら、その『魂』が何で出来ているのかを調べたい」

なんてこと無さそうにチサは言うが、しかし―

「…それって、調べられるものなの?」

「調べる。後は、その『霊』が何処から来るものなのかも」

「…」

まずい。チサさんの目が本気だ。大魔導師様のソレになっていらっしゃる。

「へー、なかなか楽しそうなアプローチ考えてんなー。いいねー、ウチらしくて!じゃあ、今度、行ってみるかー、心霊スポット!」

「…」

「…」

部長のことは置いておくとしても、『調べる』と言うことは、それはつまり、幽霊を見に、下手をすると、捕獲でもしに行くつもりなのだろうか?

捕獲―

物理的に触れる存在ならまだ何とか―

いや、駄目だ。やっぱり恐い。




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