15 / 65
第三章 大学生活と再会とオカルト
2.
しおりを挟む
2.
―入ってしまった
自慢ではないが、私は『幽霊』の類いが非常に苦手だ。その私が、『オカルト研究サークル』に―
「?魔王討伐の途中で、『ゴースト』系のモンスターをボコボコにしてた」
「あれも苦手だったけど、あれはまだ『ゴースト』って感じだったでしょ?私はジャパニーズ『幽霊』って感じのが駄目なの!」
髪を洗った後に目を開ける瞬間や、公衆トイレで上を見上げて、仕切りの隙間が視界に入るのが恐いのだ。
「?よくわからない」
「えー?」
当の『オカ研』の第三回新歓コンパ、居酒屋の片隅でオレンジジュース片手に、チサに管を巻く。
入学式当日、一週間後、そして本日と『新歓』という名目で三度の飲み会を開いているというこのサークルは、特にノリが良いというわけでも、仲良しサークルというわけでもないらしい。
活動内容は、心霊現象やSF的な何か、都市伝説的なものから、『友達の友達が本当に見たらしいんだけど』系の話までを、幅広く研究すること。基本的には、集まる人もタイミングもバラバラで、それぞれ自分達が興味のある題材を調べるというスタンスなのだそうだ。
なのに、何故か、三度も開かれる『新歓コンパ』
「おー、新入生、また二人入ったのかー!よろしくなー」
その理由は、今、チサと二人きりだった席にビール片手に乗り込んで来た目の前の男、オカ研部長の『冴木 悠司』にあるのではないかと思っている。
既に出来上がっているのか、ハイテンションで入部を歓迎してくれる男は、サークル内でも明らかに異質な存在。他の皆さんが落ち着いた、どちらかと言えば地味な部類に入るであろう雰囲気の中、アロハシャツにサングラス、初めて見る大きさの尻尾キーホルダーを腰にぶら下げているというド派手さ。
「…アカリ、この男も『普通』じゃない」
「わかってる。これは、わかりやす過ぎるくらいにわかる。気を付ける」
本人を目の前に警戒警報を発令するが、言われた本人は気にした様子もなく、笑っている。
「大丈夫、大丈夫。俺は無害。こんな格好してるのは、魔除け的な?邪を祓う的なアレだから」
「ヤバイ。ますます怪しい」
男から逃げようにも、場所が悪い。壁を背にした隅っこの席だったために、完全に退路を断たれている。
「そいで、君らは何でうちに入ろうと思ったの?霊に興味あるってことは、霊感持ちとか?」
「…」
明らかな警戒態勢を気にも止めず、グイグイ来るオカ研部長。
「霊感は無いです。けど、チサが『オカ研』に惹かれた理由は、私も知りたい」
「お!君の方が興味持ってくれたんだ。君は?幽霊見たことある?霊感持ち?」
しつこく『霊感』に拘るのは、やはり腐ってもオカ研部長ということだろうか。サングラス越しの彼の表情はよめないが、チサの方を興味深げに眺めているのがわかる。
「…何で出来ているのか、知りたい」
「『何で出来ているのか』??」
部長ガン無視で、こちらに向かって答えてくれたチサの言葉は、恐らく、「オカ研に惹かれた理由」なんだろうけれど、
「何が??」
「『霊』という存在が、何から出来ているのかを知りたい」
「え?幽霊って、人の魂的なものなんじゃないの?」
「だとしたら、その『魂』が何で出来ているのかを調べたい」
なんてこと無さそうにチサは言うが、しかし―
「…それって、調べられるものなの?」
「調べる。後は、その『霊』が何処から来るものなのかも」
「…」
まずい。チサさんの目が本気だ。大魔導師様のソレになっていらっしゃる。
「へー、なかなか楽しそうなアプローチ考えてんなー。いいねー、ウチらしくて!じゃあ、今度、行ってみるかー、心霊スポット!」
「…」
「…」
部長のことは置いておくとしても、『調べる』と言うことは、それはつまり、幽霊を見に、下手をすると、捕獲でもしに行くつもりなのだろうか?
捕獲―
物理的に触れる存在ならまだ何とか―
いや、駄目だ。やっぱり恐い。
―入ってしまった
自慢ではないが、私は『幽霊』の類いが非常に苦手だ。その私が、『オカルト研究サークル』に―
「?魔王討伐の途中で、『ゴースト』系のモンスターをボコボコにしてた」
「あれも苦手だったけど、あれはまだ『ゴースト』って感じだったでしょ?私はジャパニーズ『幽霊』って感じのが駄目なの!」
髪を洗った後に目を開ける瞬間や、公衆トイレで上を見上げて、仕切りの隙間が視界に入るのが恐いのだ。
「?よくわからない」
「えー?」
当の『オカ研』の第三回新歓コンパ、居酒屋の片隅でオレンジジュース片手に、チサに管を巻く。
入学式当日、一週間後、そして本日と『新歓』という名目で三度の飲み会を開いているというこのサークルは、特にノリが良いというわけでも、仲良しサークルというわけでもないらしい。
活動内容は、心霊現象やSF的な何か、都市伝説的なものから、『友達の友達が本当に見たらしいんだけど』系の話までを、幅広く研究すること。基本的には、集まる人もタイミングもバラバラで、それぞれ自分達が興味のある題材を調べるというスタンスなのだそうだ。
なのに、何故か、三度も開かれる『新歓コンパ』
「おー、新入生、また二人入ったのかー!よろしくなー」
その理由は、今、チサと二人きりだった席にビール片手に乗り込んで来た目の前の男、オカ研部長の『冴木 悠司』にあるのではないかと思っている。
既に出来上がっているのか、ハイテンションで入部を歓迎してくれる男は、サークル内でも明らかに異質な存在。他の皆さんが落ち着いた、どちらかと言えば地味な部類に入るであろう雰囲気の中、アロハシャツにサングラス、初めて見る大きさの尻尾キーホルダーを腰にぶら下げているというド派手さ。
「…アカリ、この男も『普通』じゃない」
「わかってる。これは、わかりやす過ぎるくらいにわかる。気を付ける」
本人を目の前に警戒警報を発令するが、言われた本人は気にした様子もなく、笑っている。
「大丈夫、大丈夫。俺は無害。こんな格好してるのは、魔除け的な?邪を祓う的なアレだから」
「ヤバイ。ますます怪しい」
男から逃げようにも、場所が悪い。壁を背にした隅っこの席だったために、完全に退路を断たれている。
「そいで、君らは何でうちに入ろうと思ったの?霊に興味あるってことは、霊感持ちとか?」
「…」
明らかな警戒態勢を気にも止めず、グイグイ来るオカ研部長。
「霊感は無いです。けど、チサが『オカ研』に惹かれた理由は、私も知りたい」
「お!君の方が興味持ってくれたんだ。君は?幽霊見たことある?霊感持ち?」
しつこく『霊感』に拘るのは、やはり腐ってもオカ研部長ということだろうか。サングラス越しの彼の表情はよめないが、チサの方を興味深げに眺めているのがわかる。
「…何で出来ているのか、知りたい」
「『何で出来ているのか』??」
部長ガン無視で、こちらに向かって答えてくれたチサの言葉は、恐らく、「オカ研に惹かれた理由」なんだろうけれど、
「何が??」
「『霊』という存在が、何から出来ているのかを知りたい」
「え?幽霊って、人の魂的なものなんじゃないの?」
「だとしたら、その『魂』が何で出来ているのかを調べたい」
なんてこと無さそうにチサは言うが、しかし―
「…それって、調べられるものなの?」
「調べる。後は、その『霊』が何処から来るものなのかも」
「…」
まずい。チサさんの目が本気だ。大魔導師様のソレになっていらっしゃる。
「へー、なかなか楽しそうなアプローチ考えてんなー。いいねー、ウチらしくて!じゃあ、今度、行ってみるかー、心霊スポット!」
「…」
「…」
部長のことは置いておくとしても、『調べる』と言うことは、それはつまり、幽霊を見に、下手をすると、捕獲でもしに行くつもりなのだろうか?
捕獲―
物理的に触れる存在ならまだ何とか―
いや、駄目だ。やっぱり恐い。
12
お気に入りに追加
968
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる