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第一章 帰って来た三年前
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3.
「…帰って、来れた…?」
光がおさまり、恐る恐る開いた目に飛び込んで来たのは、三年前、毎日のように目にしていた光景だった。
無事に帰ってこれた安堵と、見慣れた公園の懐かしさに熱いものが込み上げてきて、ふと、違和感に気づいてしまった。
自慢ではないが、あちらの世界で鍛えられまくるまでは、私は結構なワガママボディの持ち主で、もちろん今着ている高校の制服だって、それに合わせたサイズ。三年前に戻った私の肉体にジャストフィットするはずの、それが、
―ぶかぶかの、まま?
「あれ?チサ、私、本当に元に戻ってる?」
「間違いなく、三年前のあの日に戻ってきている」
「いや!あれ?そうじゃなくて、え?元の時間に戻るって、『三年前の自分に戻る』んじゃないの!?」
「?それは、若返りということ?」
若返りになるのかは、わからないけれど、三年前、異世界に喚ばれる直前の自分自身に戻るのだと思っていたのだが―
「それは出来ない。向こうで三年を過ごしたアカリを、三年前の時間、場所に連れてきただけ」
「なんと!?」
チサの説明に、ようやく自分が勘違いしていたことに気づかされた。でも、それじゃあ―
「…大体、若返りなんてしてしまったら、あちらで過ごした三年間の記憶も全て失うことになる。私と過ごした時間も」
黒目がちなチサの瞳が、真っ直ぐにこちらを見つめる。
「…アカリは、それでいいの?」
「それは嫌だけど!」
見上げてくるつぶらな瞳に、全力で否定する。
―でも!だけど!
珍しく、人気が全くない公園に崩れ落ちる。
―だって、だって!
「てことは、私、もう21なわけじゃない!?私、今、セーラー服着てるんだよ!?召喚された時となるべく同じ格好がいいって言うから!」
召喚直後から、ニャンコ長老が後生大事に取っておいてくれたセーラー服。帰るために必要だからと三年ぶりに袖を通したそれも、少しの間の我慢だと思っていた。
なのに―
「高校卒業まで、あと半年はセーラー服を着続けることになるなんて!」
「…大丈夫、アカリは三年前から、全く成長していない」
「それはそれで嫌だけど!21でセーラー服を着続けるのは、精神的ダメージがでかすぎる!」
「大丈夫、そういう人はたくさんいる」
「そういう趣味の人はね!」
堪えきれずに地面にうずくまって悶えていれば、頭上からチサの呆れたようなため息が降ってきた。
しばらくの間、これからのエブリデイコスプレの未来を思って立ち直れずにいれば、不意に、こちらに近づく足音が聞こえてきた。
誰も居ないと思って油断していた体勢から、慌てて立ち上がる。
「…大丈夫ですか?」
「あ、すみません、大丈夫です。問題無いです」
地面にうずくまっていたところを見られていたらしく、通りすがりの優しそうな眼鏡のお兄さんが、わざわざ声をかけてくれた。
お兄さんの親切に申し訳なくなって、必死に元気アピールをしたところで気づいてしまった。
今の自分の格好を見られていることに―
「!?」
「?顔が赤いですよ?本当に大丈夫?」
誰も何も突っ込まないけれど、私自身が意識している、一人コスプレ。どんどん顔に熱が集まっていく。
「っ!大丈夫です!本当に!失礼します!」
「え?あ、」
お兄さんの戸惑いには申し訳ないけれど、完全に不審者の自覚もあるけれど、チサの手を引いて歩き出した。一刻も早く、この場を去らなければ。
「…」
「…アカリ、大丈夫。『サイズの合わない他校の友達のセーラー服を着て喜んでいる女子高生』に、ギリギリ見える」
「…」
足早に公園を後にしながら、チサのよくわからない励ましの言葉に、余計に不安を煽られた。
「…帰って、来れた…?」
光がおさまり、恐る恐る開いた目に飛び込んで来たのは、三年前、毎日のように目にしていた光景だった。
無事に帰ってこれた安堵と、見慣れた公園の懐かしさに熱いものが込み上げてきて、ふと、違和感に気づいてしまった。
自慢ではないが、あちらの世界で鍛えられまくるまでは、私は結構なワガママボディの持ち主で、もちろん今着ている高校の制服だって、それに合わせたサイズ。三年前に戻った私の肉体にジャストフィットするはずの、それが、
―ぶかぶかの、まま?
「あれ?チサ、私、本当に元に戻ってる?」
「間違いなく、三年前のあの日に戻ってきている」
「いや!あれ?そうじゃなくて、え?元の時間に戻るって、『三年前の自分に戻る』んじゃないの!?」
「?それは、若返りということ?」
若返りになるのかは、わからないけれど、三年前、異世界に喚ばれる直前の自分自身に戻るのだと思っていたのだが―
「それは出来ない。向こうで三年を過ごしたアカリを、三年前の時間、場所に連れてきただけ」
「なんと!?」
チサの説明に、ようやく自分が勘違いしていたことに気づかされた。でも、それじゃあ―
「…大体、若返りなんてしてしまったら、あちらで過ごした三年間の記憶も全て失うことになる。私と過ごした時間も」
黒目がちなチサの瞳が、真っ直ぐにこちらを見つめる。
「…アカリは、それでいいの?」
「それは嫌だけど!」
見上げてくるつぶらな瞳に、全力で否定する。
―でも!だけど!
珍しく、人気が全くない公園に崩れ落ちる。
―だって、だって!
「てことは、私、もう21なわけじゃない!?私、今、セーラー服着てるんだよ!?召喚された時となるべく同じ格好がいいって言うから!」
召喚直後から、ニャンコ長老が後生大事に取っておいてくれたセーラー服。帰るために必要だからと三年ぶりに袖を通したそれも、少しの間の我慢だと思っていた。
なのに―
「高校卒業まで、あと半年はセーラー服を着続けることになるなんて!」
「…大丈夫、アカリは三年前から、全く成長していない」
「それはそれで嫌だけど!21でセーラー服を着続けるのは、精神的ダメージがでかすぎる!」
「大丈夫、そういう人はたくさんいる」
「そういう趣味の人はね!」
堪えきれずに地面にうずくまって悶えていれば、頭上からチサの呆れたようなため息が降ってきた。
しばらくの間、これからのエブリデイコスプレの未来を思って立ち直れずにいれば、不意に、こちらに近づく足音が聞こえてきた。
誰も居ないと思って油断していた体勢から、慌てて立ち上がる。
「…大丈夫ですか?」
「あ、すみません、大丈夫です。問題無いです」
地面にうずくまっていたところを見られていたらしく、通りすがりの優しそうな眼鏡のお兄さんが、わざわざ声をかけてくれた。
お兄さんの親切に申し訳なくなって、必死に元気アピールをしたところで気づいてしまった。
今の自分の格好を見られていることに―
「!?」
「?顔が赤いですよ?本当に大丈夫?」
誰も何も突っ込まないけれど、私自身が意識している、一人コスプレ。どんどん顔に熱が集まっていく。
「っ!大丈夫です!本当に!失礼します!」
「え?あ、」
お兄さんの戸惑いには申し訳ないけれど、完全に不審者の自覚もあるけれど、チサの手を引いて歩き出した。一刻も早く、この場を去らなければ。
「…」
「…アカリ、大丈夫。『サイズの合わない他校の友達のセーラー服を着て喜んでいる女子高生』に、ギリギリ見える」
「…」
足早に公園を後にしながら、チサのよくわからない励ましの言葉に、余計に不安を煽られた。
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