61 / 64
後編 タワー編
5-3.
しおりを挟む
5-3.
「ここが―」
「…」
たどり着いた100階層、今までと違い、階段を上りきった先には、円形のフロアが広がっていた。ボス部屋の扉はなし。ということは、既に、私たちの立っているここが、ボス出現の間なのだろう。
探れば、円の中央に生じる気配、徐々に膨らむそれに、
「…強い」
「…ミア、結界を張れ。全力で」
「うん」
結界を張ると同時に、出現したのは、ドラゴン、三つの首を持つ―
すかさずかけたアナライズ、表示された数値に、息を飲んだ。
―レベル200!?
ここまで来て、いきなり100近くあがったボスレベル。
―ウォーターカッター
試しに放った水属性魔法では、全然ダメージを与えられない。
―ファイヤーボール
「…ダメ、か」
手応えを全く感じられない、恐らく、全属性の魔法攻撃に耐性がある、やっかいなタイプ―
「…ミア、下がっていろ」
「…」
ブレンの指示に一歩引いた。魔法攻撃が効かない以上、サポートに回った方がまだ役に立てる。
「ブレン、気を付けてね」
言いながら、最大出力の『強化魔法』を重ねがけする。これで、よほどのことがない限り、ブレンが傷つくことはない。
ドラゴンに向かって駆け出したブレンが、そのまま巨体を一気に駆け上がる。その背中、振り上げたブレンの剣が、ドラゴンの翼の付け根に突き刺さった。
『グギャァァァアア!!』
「っ!ブレン!?」
咆哮を上げたドラゴンが、巨体をのたうち回らせて暴れる。即座に飛び退いたブレンに怪我はなさそうだけれど、ブレンの手元、ドラゴンに突き刺したはずの剣が、
―折れてる
予想はついたが、物理耐性もかなり高めらしい。辛うじてダメージは入っているが、致命的というほどではない。これは、手数を増やしていくしかないだろうけど、問題は、ブレンの武器。
「…」
予備のナイフを取り出したブレンが、ドラゴンに刃先を突き立てる、が、思うように決まらない。やはり、武器がいる。強くて、壊れない、最終兵器みたいな―
―万物創造
唱えると同時、うねり出した魔力を寄せ集める。硬く、強く、圧縮させて、決して折れない、そう、ブレンみたいな、ブレンに相応しい一振りを―
「!!ミアッ!?」
―大丈夫、まだ、やれる
手の内に現れる硬い感触。宙から引き抜いた抜き身の刀身。光を吸い込む漆黒をした―
「何をしている!結界を維持しろ!!」
魔力を失う感覚に持ちこたえきれずに膝をついてしまった。こちらに駆け寄ってきたブレンに剣を押し付ける。
「…大丈夫、全部は使ってない、約束したから。結界は張れる」
「…」
手にした剣と、こちらを見比べるブレン。
「…行って、ブレン。いつもと同じ、私は私を守る。ブレンは、」
「っ!」
ブレンの背後から振り下ろされた、ドラゴンの尾。手にした剣で弾いたブレンが、立ち上がる。
「待っていろ、直ぐにかたをつける」
「うん」
走りだし、ドラゴンの首の一つに向かって跳躍したブレン、それを見守る。振り下ろした刀身が、ドラゴンの首に深々と沈んでいく。同時に、剣から漏れ出す漆黒の炎がドラゴンの頭部を燃やし尽くした。
それをボーッと眺めながら、少しだけ不安になる。
―おかしいな
ゲームや物語の最終兵器、『勇者』や『英雄』が手にするような剣を創造したつもりだったんだけど―
「…」
ドラゴンを焼く黒い炎、禍々しい雰囲気はまるで、魔族、良く言って黒騎士のような―
―ブレンに『相応しい剣』ってイメージしたのに
「…」
視界には、鬼気迫る勢いで、三つ目の首も切り落としてしまったブレンが映っている。
剣を一振り、払う血糊の代わりに炎を上げた剣を握って、ブレンが帰ってくる。背後では発光するドラゴンの亡骸。
突如、轟音が響き渡った―
「!?」
「ミア!」
音の正体を確かめるために、周囲を見渡せば、
―壁?崩れてる?
柱だけを残して崩れ落ちていく壁、開けた視界にタワーの外、青空が映った。
「ここが―」
「…」
たどり着いた100階層、今までと違い、階段を上りきった先には、円形のフロアが広がっていた。ボス部屋の扉はなし。ということは、既に、私たちの立っているここが、ボス出現の間なのだろう。
探れば、円の中央に生じる気配、徐々に膨らむそれに、
「…強い」
「…ミア、結界を張れ。全力で」
「うん」
結界を張ると同時に、出現したのは、ドラゴン、三つの首を持つ―
すかさずかけたアナライズ、表示された数値に、息を飲んだ。
―レベル200!?
ここまで来て、いきなり100近くあがったボスレベル。
―ウォーターカッター
試しに放った水属性魔法では、全然ダメージを与えられない。
―ファイヤーボール
「…ダメ、か」
手応えを全く感じられない、恐らく、全属性の魔法攻撃に耐性がある、やっかいなタイプ―
「…ミア、下がっていろ」
「…」
ブレンの指示に一歩引いた。魔法攻撃が効かない以上、サポートに回った方がまだ役に立てる。
「ブレン、気を付けてね」
言いながら、最大出力の『強化魔法』を重ねがけする。これで、よほどのことがない限り、ブレンが傷つくことはない。
ドラゴンに向かって駆け出したブレンが、そのまま巨体を一気に駆け上がる。その背中、振り上げたブレンの剣が、ドラゴンの翼の付け根に突き刺さった。
『グギャァァァアア!!』
「っ!ブレン!?」
咆哮を上げたドラゴンが、巨体をのたうち回らせて暴れる。即座に飛び退いたブレンに怪我はなさそうだけれど、ブレンの手元、ドラゴンに突き刺したはずの剣が、
―折れてる
予想はついたが、物理耐性もかなり高めらしい。辛うじてダメージは入っているが、致命的というほどではない。これは、手数を増やしていくしかないだろうけど、問題は、ブレンの武器。
「…」
予備のナイフを取り出したブレンが、ドラゴンに刃先を突き立てる、が、思うように決まらない。やはり、武器がいる。強くて、壊れない、最終兵器みたいな―
―万物創造
唱えると同時、うねり出した魔力を寄せ集める。硬く、強く、圧縮させて、決して折れない、そう、ブレンみたいな、ブレンに相応しい一振りを―
「!!ミアッ!?」
―大丈夫、まだ、やれる
手の内に現れる硬い感触。宙から引き抜いた抜き身の刀身。光を吸い込む漆黒をした―
「何をしている!結界を維持しろ!!」
魔力を失う感覚に持ちこたえきれずに膝をついてしまった。こちらに駆け寄ってきたブレンに剣を押し付ける。
「…大丈夫、全部は使ってない、約束したから。結界は張れる」
「…」
手にした剣と、こちらを見比べるブレン。
「…行って、ブレン。いつもと同じ、私は私を守る。ブレンは、」
「っ!」
ブレンの背後から振り下ろされた、ドラゴンの尾。手にした剣で弾いたブレンが、立ち上がる。
「待っていろ、直ぐにかたをつける」
「うん」
走りだし、ドラゴンの首の一つに向かって跳躍したブレン、それを見守る。振り下ろした刀身が、ドラゴンの首に深々と沈んでいく。同時に、剣から漏れ出す漆黒の炎がドラゴンの頭部を燃やし尽くした。
それをボーッと眺めながら、少しだけ不安になる。
―おかしいな
ゲームや物語の最終兵器、『勇者』や『英雄』が手にするような剣を創造したつもりだったんだけど―
「…」
ドラゴンを焼く黒い炎、禍々しい雰囲気はまるで、魔族、良く言って黒騎士のような―
―ブレンに『相応しい剣』ってイメージしたのに
「…」
視界には、鬼気迫る勢いで、三つ目の首も切り落としてしまったブレンが映っている。
剣を一振り、払う血糊の代わりに炎を上げた剣を握って、ブレンが帰ってくる。背後では発光するドラゴンの亡骸。
突如、轟音が響き渡った―
「!?」
「ミア!」
音の正体を確かめるために、周囲を見渡せば、
―壁?崩れてる?
柱だけを残して崩れ落ちていく壁、開けた視界にタワーの外、青空が映った。
40
お気に入りに追加
2,333
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

お姉様に恋した、私の婚約者。5日間部屋に篭っていたら500年が経過していました。
ごろごろみかん。
恋愛
「……すまない。彼女が、私の【運命】なんだ」
──フェリシアの婚約者の【運命】は、彼女ではなかった。
「あなたも知っている通り、彼女は病弱だ。彼女に王妃は務まらない。だから、フェリシア。あなたが、彼女を支えてあげて欲しいんだ。あなたは王妃として、あなたの姉……第二妃となる彼女を、助けてあげて欲しい」
婚約者にそう言われたフェリシアは──
(え、絶対嫌なんですけど……?)
その瞬間、前世の記憶を思い出した。
彼女は五日間、部屋に籠った。
そして、出した答えは、【婚約解消】。
やってられるか!と勘当覚悟で父に相談しに部屋を出た彼女は、愕然とする。
なぜなら、前世の記憶を取り戻した影響で魔力が暴走し、部屋の外では【五日間】ではなく【五百年】の時が経過していたからである。
フェリシアの第二の人生が始まる。
☆新連載始めました!今作はできる限り感想返信頑張りますので、良ければください(私のモチベが上がります)よろしくお願いします!

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。

転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。
父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。
彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。
子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる