バグ発見～モブキャラの私にレベルキャップが存在しなかった～

後編 タワー編

4-2. Side A

4-2.

―鬱陶しい

60階層にたどり着くまで、ずっと小言を言い続けるレオンが、いい加減、本当にめざわりになってきた。60階層への階段を登りながらも、背後からゴチャゴチャとうるさい。「無茶をするな」とか、「周りを見ろ」とか、くだらない。私のおかげで60階ここまでたどり着けたのだ。文句を言われる筋合いはない。

開けた空間に足を踏み入れたところで、また、

「アイリー！待てと言っているだろう！」

「…」

そろそろ、こちらも我慢の限界だ。一言、言い返してやろうとして、気がついた存在。

―あいつら

ボケッとした女を庇うように、男がこちらを睨んでいる。その視線に震えそうになって、腹が立つ。だいたい、庇われてばかり、守られてばかりで何もしないあの女が、ブレンのようなキャラを仲間にして、私のところには使えないやつらばかり集まるなんて―

「っ！うるさい！レオン達が嫌なら、ついて来なければいい！」

「アイリー！そういうことではない！落ち着け！」

あの女よりも私が上だ。それを、必ずわからせる―

進んだ先、開いた扉の中へと入る。階層ボスは『ミノタウロス』、レベルは80前後。カイと二人なら狩れる。問題はやつの特殊攻撃くらい。あれだけは絶対にくらいたくないから―

「…カイ」

ボス出現の気配を感じながら、後ろを振り返った。

「私のこと、守ってね？」

「御意」

頷くカイに満足する。

「ありがとう」

これで、好きに動ける。

これ以上、あの女の好きにはさせない―