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後編 タワー編

3-4.

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3-4.

本当に、追いかけていってアイリーに止めを刺してしまいそうなブレンを何とかなだめすかし、彼らと距離をとるために、更に5階層をのぼりきった。その間、モンスターを相手にブレンが荒れまくったのは言うまでもない。

60階層にたどり着いてもまだ怒り冷めやらぬ様子のブレンに、本当は少し嬉しかったりもするのだけれど、それを言葉にするのは流石に躊躇われて、口をつぐむ。

夜営の準備を済ませ、万物創造で造り出した携帯食を渡したところで、不機嫌なまま、ようやくブレンが口を開いた。

「…なぜ、あの女を許した?」

「許したというか、彼女じゃ私を傷つけられないから」

「だとしてもだ」

「…」

そうは言われても。本当に、彼女に対して何の脅威も感じなかったから放っておいたというだけで、あまり「許した」という意識はない。

「…あの女、ナイフに致死性の毒を塗っていやがった」

「それはまた…」

嫌われたものだ―

あの一瞬でナイフの毒に気づいたブレンもすごいとは思うけれど。

だけど、まあ、警告したとおり。次はない。許したつもりもないから、今回のことだって無かったことにはしない。次があれば、今回の分も含めて、それなりの報復は覚悟してもらわなくては。

「…ありがとう、ブレン」

「何に対する礼だ?」

ブレンの問いに、思わず口から笑いがもれた。

「…秘密」

私のために、「あの女を殺す」と、そこまで怒ってくれたことが本当はとても嬉しかった。言葉にするつもりはないけれど、例え他者の命を奪うことになっても私を護ろうとする彼の姿に、ほの暗い喜びを感じてしまう―

私が答えを返さなかったせいで生まれた沈黙。静まり返った、だけど、心地よい二人の空間に身を委ねる。

食事を終え、就寝の準備を整えて眠りにつこうとする中、ブレンが思い出したように問いを口にした。

「お前が持っている『赤竜の瞳』にはどういう意味がある?」

「え?」

「レイヒャーが言っていた。お前が、敢えてそれを残したと。どういう意味だ?」

「!?」

私のポーチ、そこにある『赤竜の瞳』を指して、ブレンが言う。

―レイヒャー、余計なことを

レイヒャーに、特に何かを言ったわけではない。仄めかすようなことさえ、何も。なのに、妙に勘の鋭いあの男は、どこかこちらを見透かしているようなところがあって、

顔に、熱が集まっていく―

「…秘密」

その答えに、今度はブレンが笑う。

「…何で笑うの?」

「意味はわからんが、悪い気分ではない」

「…」

上がった口角、細められた目に見つめられて、ブレンが直視出来なくなる。

―ダメだ

顔の熱が、また上がった。




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