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後編 タワー編

3-3.

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3-3.

「!?」

背後から、音も無く飛んできた小さなナイフ。結界に弾かれたそれが、地面に軽い音を立てて転がった。

背後を振り返り、確かめようとして、視界を広い背中で塞がれる。

―ブレン

先行していたはずのブレンの背中、殺気だったがそれが、次の瞬間には消えた。開けた視界、飛び込んで来たのは、驚愕に目を見開いたまま立ち尽くすアイリーの姿。

「!?」

ブレンが、何をするつもりなのかわかって、

「だめ!ブレン!」

「…」

「キャーッ!?」

咄嗟に張った結界。ブレンの刃が彼女に届くことはなかったけれど、彼の勢いに飲まれたアイリーが地面に倒れて手をついた。

「ミア!結界を解け!この女は、殺す!」

「ヒッ!」

「…殺しちゃダメだよ、ブレン」

追い付いた背中に手を添えて制止しようとしたが、背中越しでも感じる身震いしそうなほどの殺気に、こちらまで恐くなる。

「アイリー様!?」

出遅れたのか、駆け寄ってきたカイがアイリーの前に立ち塞がり、ブレンに向かって構えた。

そのカイの姿に、ブレンが更に殺気立つ。

「…カイ、剣をひいて。あなたじゃ、ブレンに勝てない」

「…」

一瞬即発な状況、カイに忠告するが、返ってきたのは射殺さんばかりの鋭い視線。

「…例えこの身に代えても。ここをどくつもりはない」

その揺るぎない視線に、ブレンの背中、服を握る手に力が入る。思わず、すがってしまった―

「…ブレン」

「チッ」

不承不承ながらも、剣を引いてくれたブレン。彼が剣を収めたことで、ようやくカイも剣をひいた。それでも、アイリーを背後に庇い、こちらを最大限警戒したまま。一心に彼女を守ろうとする姿に、出そうになる言葉を飲み込んだ。

カイ、あなたは今―?

聞けない言葉の代わりに口にしたのは、アイリーの愚かな行為への警告、

「…アイリー、何でこんなことしたのか聞くつもりはないけど、二度としないで。次は、」

結界が間に合うか、わからないから―

「っ!?」

小さく悲鳴をあげたアイリーが、何度も首を振って頷く。ブレンの威嚇するような殺気に当てられたのだろう。

カイに支えられて何とか立ち上がったアイリー。そのまま立ち去ろうとするが―よほどブレンが恐かったらしく―何度も確かめるように背後を振り返っているせいて、足元が覚束ない。

「…」

フラフラと去っていくアイリーを見送って、ブレンを見上げた。未だ去っていく二人に向けられたままの視線。鬼のような形相。どうすれば、彼のこの怒りを静めることが出来るのか。本当に、彼らは困ったことをしてくれる。




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