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後編 タワー編
2-2.
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2-2.
視線が、合った―
相手の瞳に浮かんだのは、驚き、それから優越。口角の上がったその顔に、嫌悪が走る。
「久しぶりね、ミア」
近づいてきたのは、魔法学園を去って以来、三ヶ月ぶりに顔を会わせたアイリー。
「…」
「ふーん、やっぱり、あなたもここに来たんだ」
値踏みする視線。
「ひょっとして、着いたばっかり?なに?歩いて来たの?」
見返せば、彼女の様子も学園に居た頃とは違っていて。予想は出来たけれど、ディーツとアルドの姿がそこにはない。ただ一人、彼女の後ろで影のように控えているカイにアナライズをかけた。
―レベル68
やはり。
どこかで、そうではないかと思っていたけれど―
カイが上限を開放している―アイリーに隷属している―という事実に動揺した。しかも、学園で彼らと最後に会ってから三ヶ月しか経っていないにも関わらず、既にこの数値。
恐らくは、大量発生。気づいていなかったけれど、あの時にはもう、カイは。それに対して何かを言う立場には無いから、浮かびそうになった感傷は首を振って振り払う。
「…相変わらず、すかした女」
吐き捨てるように言うアイリーの背後から、先ほど集団の先頭に居た大柄な男が近づいてきた。
「アイリー、知り合いか」
「レオン。うん、学園時代のね」
「ほお、あんたらも学園出身なのか」
感心したように尋ねる男の言葉には、敵対心は感じられない。
「…退学したから、出身ではない」
「あー、なるほど」
答えれば、男の視線がブレンを値踏みし、面白そうに輝く。
「まあ、うちのギルドは強ければ誰だって歓迎だ。あんたらがまだ所属を決めてないんだったら、うちを受けてみてくれ」
「!?ちょっと!レオン!」
「ん?何だ、アイリー」
「この人達をうちに入れるつもり!?」
アイリーの剣幕にも、男に動じた様子はない。
「ああ、まあ、実力次第だがな」
「絶対、嫌!」
「おいおい、」
「ブレンはともかく、この女はダメよ!王都襲撃の時だって、一人だけ隠れてて、戦いもしなかったんだから!」
「…」
男の視線が、今度はこちらを値踏みする。隣のブレンが不穏な気配を発し始めたところで、男の視線が離れた。
「…まあ、アイリーはこう言ってるが、気が向いたら、遊びに来いよ」
「レオン!」
背を向けた男の後を、アイリーが追う。その後に従うカイが遠ざかったところで、ブレンが口を開いた。
「…なぜ、あいつらがここに?」
ブレンの疑問に肩をすくめる。
「多分、学園を首席卒業したんじゃないかな」
「どういう意味だ?」
「学園を首席卒業すると、学園側が進路を斡旋してくれるの。彼女はそれで、『ガイラス』を、ひょっとしたら『ガイラスの夜明け』に入ることを希望したんだと思う」
加えて言うなら、
「多分、この街までも転移で送って貰えたんだと思うよ」
ゲームでどういう扱いだったのかは不明だけど、学園入学時にそう説明された。自分達が三ヶ月かけた道を一瞬で、と思うとさすがに思うところも無いではない。移動にかかった費用も考えると、アイリーの背中を見つめる視線にも熱がこもる。
「…あいつが、気になるのか?」
あいつ?アイリーを?
「気にしてるわけじゃ…」
「…ギルドに入るつもりは無いんだな?」
「もちろんないよ!どうして?」
「…いや」
歯切れの悪いブレンの様子に、それ以上を尋ねるのに躊躇う。代わりに、
「…ねぇ、ブレン」
「?」
「『星影』ってどうかな?」
「何がだ?」
色々、考えてみたのだ。私なりに―
「パーティー名。なかなか浮かばなかったんだけど。あそこが、私とブレンの出発点だから、どう思う?」
「…好きにしろ」
返ってきたのは、予想通りの答え。
「もう、一応真剣に考えたのに。張り合いないなぁ」
でも、だけど。
いつも通りのブレン。それだけで、どんなに落ちそうな時でも、私は笑っていられる。
視線が、合った―
相手の瞳に浮かんだのは、驚き、それから優越。口角の上がったその顔に、嫌悪が走る。
「久しぶりね、ミア」
近づいてきたのは、魔法学園を去って以来、三ヶ月ぶりに顔を会わせたアイリー。
「…」
「ふーん、やっぱり、あなたもここに来たんだ」
値踏みする視線。
「ひょっとして、着いたばっかり?なに?歩いて来たの?」
見返せば、彼女の様子も学園に居た頃とは違っていて。予想は出来たけれど、ディーツとアルドの姿がそこにはない。ただ一人、彼女の後ろで影のように控えているカイにアナライズをかけた。
―レベル68
やはり。
どこかで、そうではないかと思っていたけれど―
カイが上限を開放している―アイリーに隷属している―という事実に動揺した。しかも、学園で彼らと最後に会ってから三ヶ月しか経っていないにも関わらず、既にこの数値。
恐らくは、大量発生。気づいていなかったけれど、あの時にはもう、カイは。それに対して何かを言う立場には無いから、浮かびそうになった感傷は首を振って振り払う。
「…相変わらず、すかした女」
吐き捨てるように言うアイリーの背後から、先ほど集団の先頭に居た大柄な男が近づいてきた。
「アイリー、知り合いか」
「レオン。うん、学園時代のね」
「ほお、あんたらも学園出身なのか」
感心したように尋ねる男の言葉には、敵対心は感じられない。
「…退学したから、出身ではない」
「あー、なるほど」
答えれば、男の視線がブレンを値踏みし、面白そうに輝く。
「まあ、うちのギルドは強ければ誰だって歓迎だ。あんたらがまだ所属を決めてないんだったら、うちを受けてみてくれ」
「!?ちょっと!レオン!」
「ん?何だ、アイリー」
「この人達をうちに入れるつもり!?」
アイリーの剣幕にも、男に動じた様子はない。
「ああ、まあ、実力次第だがな」
「絶対、嫌!」
「おいおい、」
「ブレンはともかく、この女はダメよ!王都襲撃の時だって、一人だけ隠れてて、戦いもしなかったんだから!」
「…」
男の視線が、今度はこちらを値踏みする。隣のブレンが不穏な気配を発し始めたところで、男の視線が離れた。
「…まあ、アイリーはこう言ってるが、気が向いたら、遊びに来いよ」
「レオン!」
背を向けた男の後を、アイリーが追う。その後に従うカイが遠ざかったところで、ブレンが口を開いた。
「…なぜ、あいつらがここに?」
ブレンの疑問に肩をすくめる。
「多分、学園を首席卒業したんじゃないかな」
「どういう意味だ?」
「学園を首席卒業すると、学園側が進路を斡旋してくれるの。彼女はそれで、『ガイラス』を、ひょっとしたら『ガイラスの夜明け』に入ることを希望したんだと思う」
加えて言うなら、
「多分、この街までも転移で送って貰えたんだと思うよ」
ゲームでどういう扱いだったのかは不明だけど、学園入学時にそう説明された。自分達が三ヶ月かけた道を一瞬で、と思うとさすがに思うところも無いではない。移動にかかった費用も考えると、アイリーの背中を見つめる視線にも熱がこもる。
「…あいつが、気になるのか?」
あいつ?アイリーを?
「気にしてるわけじゃ…」
「…ギルドに入るつもりは無いんだな?」
「もちろんないよ!どうして?」
「…いや」
歯切れの悪いブレンの様子に、それ以上を尋ねるのに躊躇う。代わりに、
「…ねぇ、ブレン」
「?」
「『星影』ってどうかな?」
「何がだ?」
色々、考えてみたのだ。私なりに―
「パーティー名。なかなか浮かばなかったんだけど。あそこが、私とブレンの出発点だから、どう思う?」
「…好きにしろ」
返ってきたのは、予想通りの答え。
「もう、一応真剣に考えたのに。張り合いないなぁ」
でも、だけど。
いつも通りのブレン。それだけで、どんなに落ちそうな時でも、私は笑っていられる。
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