バグ発見~モブキャラの私にレベルキャップが存在しなかった~

リコピン

文字の大きさ
上 下
45 / 64
後編 タワー編

2-2.

しおりを挟む
2-2.

視線が、合った―

相手の瞳に浮かんだのは、驚き、それから優越。口角の上がったその顔に、嫌悪が走る。

「久しぶりね、ミア」

近づいてきたのは、魔法学園を去って以来、三ヶ月ぶりに顔を会わせたアイリー。

「…」

「ふーん、やっぱり、あなたもここに来たんだ」

値踏みする視線。

「ひょっとして、着いたばっかり?なに?歩いて来たの?」

見返せば、彼女の様子も学園に居た頃とは違っていて。予想は出来たけれど、ディーツとアルドの姿がそこにはない。ただ一人、彼女の後ろで影のように控えているカイにアナライズをかけた。

―レベル68

やはり。

どこかで、そうではないかと思っていたけれど―

カイが上限を開放している―アイリーに隷属している―という事実に動揺した。しかも、学園で彼らと最後に会ってから三ヶ月しか経っていないにも関わらず、既にこの数値。

恐らくは、大量発生アウトブレイク。気づいていなかったけれど、あの時にはもう、カイは。それに対して何かを言う立場には無いから、浮かびそうになった感傷は首を振って振り払う。

「…相変わらず、すかした女」

吐き捨てるように言うアイリーの背後から、先ほど集団の先頭に居た大柄な男が近づいてきた。

「アイリー、知り合いか」

「レオン。うん、学園時代のね」

「ほお、あんたらも学園出身なのか」

感心したように尋ねる男の言葉には、敵対心は感じられない。

「…退学したから、出身ではない」

「あー、なるほど」

答えれば、男の視線がブレンを値踏みし、面白そうに輝く。

「まあ、うちのギルドは強ければ誰だって歓迎だ。あんたらがまだ所属を決めてないんだったら、うちを受けてみてくれ」

「!?ちょっと!レオン!」

「ん?何だ、アイリー」

「この人達をうちに入れるつもり!?」

アイリーの剣幕にも、男に動じた様子はない。

「ああ、まあ、実力次第だがな」

「絶対、嫌!」

「おいおい、」

「ブレンはともかく、この女はダメよ!王都襲撃の時だって、一人だけ隠れてて、戦いもしなかったんだから!」

「…」

男の視線が、今度はこちらを値踏みする。隣のブレンが不穏な気配を発し始めたところで、男の視線が離れた。

「…まあ、アイリーはこう言ってるが、気が向いたら、遊びに来いよ」

「レオン!」

背を向けた男の後を、アイリーが追う。その後に従うカイが遠ざかったところで、ブレンが口を開いた。

「…なぜ、あいつらがここに?」

ブレンの疑問に肩をすくめる。

「多分、学園を首席卒業したんじゃないかな」

「どういう意味だ?」

「学園を首席卒業すると、学園側が進路を斡旋してくれるの。彼女はそれで、『ガイラス』を、ひょっとしたら『ガイラスの夜明け』に入ることを希望したんだと思う」

加えて言うなら、

「多分、この街までも転移で送って貰えたんだと思うよ」

ゲームでどういう扱いだったのかは不明だけど、学園入学時にそう説明された。自分達が三ヶ月かけた道を一瞬で、と思うとさすがに思うところも無いではない。移動にかかった費用も考えると、アイリーの背中を見つめる視線にも熱がこもる。

「…あいつが、気になるのか?」

あいつ?アイリーを?

「気にしてるわけじゃ…」

「…ギルドに入るつもりは無いんだな?」

「もちろんないよ!どうして?」

「…いや」

歯切れの悪いブレンの様子に、それ以上を尋ねるのに躊躇う。代わりに、

「…ねぇ、ブレン」

「?」

「『星影』ってどうかな?」

「何がだ?」

色々、考えてみたのだ。私なりに―

「パーティー名。なかなか浮かばなかったんだけど。あそこが、私とブレンの出発点だから、どう思う?」

「…好きにしろ」

返ってきたのは、予想通りの答え。

「もう、一応真剣に考えたのに。張り合いないなぁ」

でも、だけど。

いつも通りのブレン。それだけで、どんなに落ちそうな時でも、私は笑っていられる。




しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

お姉様に恋した、私の婚約者。5日間部屋に篭っていたら500年が経過していました。

ごろごろみかん。
恋愛
「……すまない。彼女が、私の【運命】なんだ」 ──フェリシアの婚約者の【運命】は、彼女ではなかった。 「あなたも知っている通り、彼女は病弱だ。彼女に王妃は務まらない。だから、フェリシア。あなたが、彼女を支えてあげて欲しいんだ。あなたは王妃として、あなたの姉……第二妃となる彼女を、助けてあげて欲しい」 婚約者にそう言われたフェリシアは── (え、絶対嫌なんですけど……?) その瞬間、前世の記憶を思い出した。 彼女は五日間、部屋に籠った。 そして、出した答えは、【婚約解消】。 やってられるか!と勘当覚悟で父に相談しに部屋を出た彼女は、愕然とする。 なぜなら、前世の記憶を取り戻した影響で魔力が暴走し、部屋の外では【五日間】ではなく【五百年】の時が経過していたからである。 フェリシアの第二の人生が始まる。 ☆新連載始めました!今作はできる限り感想返信頑張りますので、良ければください(私のモチベが上がります)よろしくお願いします!

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

処理中です...