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前編 学園編

6-2.

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6-2.

―何?

何だったの、今のは―

ブレンの不意討ち、意味がわからない、いや、意味がわかったからこれだけ顔が熱いのだけれど。ブレンが、あんなことを言うなんて、するなんて、思わなかったから。

一人、部屋の中をグルグルと回りながら、発しそうになる奇声を必死に抑え込む。

ようやく、熱が収まり始めたところで、

「!?」

突如、鳴り響き出した警報。一瞬、ブレンの女子寮侵入がばれたのかと思ったけれど。

―違う

これは、警戒警報と招集の合図。

どうやら、学園側も、モンスターの大量発生アウトブレイクに気づいたらしい。

およそ十年に一度の頻度で起きるモンスターの大量発生。通常ならダンジョンから出てくるはずのない彼らが、強力な一個体を中心に種を越えた群れを形成し、町や村を襲う。そして、襲われたほとんどが、跡形もなく消滅してしまうという大惨事、まさに天災。

それが、王都へと進行してきている―

これを迎え撃つ側の王都の防衛設備は、正直なところ、脆弱の一言。王都の中心、王宮や貴族の邸宅の建ち並ぶエリアには防衛用の結界が張られているが、市街地となるとまるで無防備。

一応、王都をぐるりと一周する城壁は存在するものの、果たしてモンスターの襲撃にどれだけ耐えうるものなのか。非常に心もとない上に、空からの攻撃に関しては完全に無力だ。

だからこそ、

「…やるしかない」

さすがに、王都全体をカバーするほどの結界を紡ぐのは初めて。一度で構築するのは難しいかもしれない。複数に分けて徐々に覆うべきか。

目をつぶり、モンスターの反応を探る。

―あった

大量のモンスター反応。王都の南東から近づいてきている。しかも、

―思っていたより、かなり速い

これは、間に合うだろうか?

全く、無駄にグルグルしている場合ではなかった。だけど、乱れた精神状態では結界を構築することもままならない。そして、これだけ心を掻き乱していったのはブレンだから、つまり、

「…間に合わなかったら、ブレンのせい」

口に出して、八つ当たりして。ようやく気持ちが落ち着いた。

南東、モンスターの襲撃が予想される方角から、結界を構築する。その前に、

―ブレンと約束したから

最善を尽くすために、自分の周囲に簡易結界を張った。これで一応、不意討ちされても一度くらいはなんとかなるはずだ。

本番はここから―

強度も大きさも、どちらも相当なものを要求される今回の結界構築。どちらか一つでもしんどいのに、両方となると完全に未知の領域。

―だけど、やる

でないと、ブレンが直ぐに心配するから。

心置きなくブレンが戦えるように。私が安全だということが、ブレンにも伝わるように。王都くらい、覆ってみせる。

結界構築のため、両手を合わせて魔力を練り上げていく。それが思ったよりも楽なのは、『賢者の石』を身に付けているおかげだろう。これならなんとか間に合いそう。

小さく息を吐いて、少しだけ、肩の力も抜く。まだまだ長丁場、ここで潰れるわけにはいかない。細く、強く、間断なく、結界を紡ぎ上げる―




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