18 / 64
前編 学園編
3-4.
しおりを挟む
3-4.
闘技場を後にしながら、気になっていたことをブレンに訊ねる。
「ブレン、一回くらいは、攻撃受けた?」
「そんなわけがあるか」
返ってきた返事は、ある意味予想通りで。
「…それは、ちょっと、やり過ぎだったんじゃ」
「何だ?お前が言ったんだろうが、圧倒しろと」
「いや、まあ、そうなんだけど」
私とブレンの『圧倒』に差があり過ぎることを失念していた。終わったことだからと諦めながらも、何か問題になることはないだろうかと悩み始めたところで、真剣味を帯びたブレンの声、
「…ミア、あの女だが、少し妙な気がする。なるべく、あいつには近寄るなよ」
「妙?」
「ああ。試合前に、レベルについて妙なことを口走っていた」
「試合前か、何て?」
中でどんな会話がなされたか、ドームで覆われた後では、外からは全くわからない。
「俺に対してだと思うが、『レベル24は【バグ】。弱体化している』、みたいなことだな」
「!?」
ブレンはアイリーの言葉をそのまま口にしたのだろう、こちらの世界では耳馴染みの無い『バグ』という単語が、いやに耳に触る。しかもその言い方からすると、どうやら本来のブレンのレベルまでも知っていたらしい。ならやはり、ほぼ間違いなく、彼女も転生者―
「気を付けろ」と再び忠告してくるブレンに頷いて、その顔を見上げた。
アイリーのことについては、この際、放っておこうと思っている。彼女に対して何かするつもりはないから、下手に動く必要もないだろう。ただ、自己防衛として、こちらの情報は出来るだけ秘匿しておきたい。
だとしたら、やはり、次の試合は―
ブレンの顔を、もう一度見上げる。
今日の試合は、ブレンがそう言うのだから、きっとかなりの圧勝だったはずだ。それは、ゲームにおいても確かにそうだった。なら、
―どう、思っていたんだろう?
ブレンは、レベル上限の無いヒロインのことを―
一度は力で圧倒した相手が、やすやすと自分を越えていく。レベル上限で停滞することも、苦しむことも無いヒロインという存在。ブレンの目には一体、彼女がどう映っていたのだろう―?
闘技場を後にしながら、気になっていたことをブレンに訊ねる。
「ブレン、一回くらいは、攻撃受けた?」
「そんなわけがあるか」
返ってきた返事は、ある意味予想通りで。
「…それは、ちょっと、やり過ぎだったんじゃ」
「何だ?お前が言ったんだろうが、圧倒しろと」
「いや、まあ、そうなんだけど」
私とブレンの『圧倒』に差があり過ぎることを失念していた。終わったことだからと諦めながらも、何か問題になることはないだろうかと悩み始めたところで、真剣味を帯びたブレンの声、
「…ミア、あの女だが、少し妙な気がする。なるべく、あいつには近寄るなよ」
「妙?」
「ああ。試合前に、レベルについて妙なことを口走っていた」
「試合前か、何て?」
中でどんな会話がなされたか、ドームで覆われた後では、外からは全くわからない。
「俺に対してだと思うが、『レベル24は【バグ】。弱体化している』、みたいなことだな」
「!?」
ブレンはアイリーの言葉をそのまま口にしたのだろう、こちらの世界では耳馴染みの無い『バグ』という単語が、いやに耳に触る。しかもその言い方からすると、どうやら本来のブレンのレベルまでも知っていたらしい。ならやはり、ほぼ間違いなく、彼女も転生者―
「気を付けろ」と再び忠告してくるブレンに頷いて、その顔を見上げた。
アイリーのことについては、この際、放っておこうと思っている。彼女に対して何かするつもりはないから、下手に動く必要もないだろう。ただ、自己防衛として、こちらの情報は出来るだけ秘匿しておきたい。
だとしたら、やはり、次の試合は―
ブレンの顔を、もう一度見上げる。
今日の試合は、ブレンがそう言うのだから、きっとかなりの圧勝だったはずだ。それは、ゲームにおいても確かにそうだった。なら、
―どう、思っていたんだろう?
ブレンは、レベル上限の無いヒロインのことを―
一度は力で圧倒した相手が、やすやすと自分を越えていく。レベル上限で停滞することも、苦しむことも無いヒロインという存在。ブレンの目には一体、彼女がどう映っていたのだろう―?
34
お気に入りに追加
2,333
あなたにおすすめの小説
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる