読心令嬢が地の底で吐露する真実

リコピン

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最終章

9-4 Side C (終)

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「兎にも角にも……ルノ殿が戻らない事は話は勧められないのう」
「そうですね。またルノさん頼りになるのは心苦しいですが、現状で帝国が即座に力を貸せる戦力があるとすればルノさんだけですからね」
「しかし……エルフ王国ですら対応できない数の昆虫種をルノさん一人でどうにか出来るのでしょうか?」
「それを言ったら帝国の軍隊だって敵わねえだろ。あいつにどうしようも出来ない敵に帝国軍が敵うはずがねえ……」
「情けない限りじゃのう……一人の少年に頼り切る事しか出来んとは」


会議は難航し、現状で帝国が動かせる戦力は限られ、やはり軍隊を派遣するぐらいならばルノに支援して彼がエルフ王国に向かう方が良いという判断に至る。結局、今回もルノに頼ってしまう事に会議室の面々は溜息を吐き出し、帝国の中でルノと言う存在はあまりにも大きくなり過ぎた。


「それにしてもルノ殿は無事なのか?リーリスの報告によれば魔王軍の幹部の元へ向かったと聞いているが……」
「あの手紙の内容を確認する限りではもう帝都には居ないでしょうね。迎えに行くとしても行き違いになる可能性もありますし、時間が掛かり過ぎます。ここは大人しく待つ方が良いでしょう」
「それにしても魔王軍の奴等は何人幹部が居るんだよ。しかも全員化物揃いじゃねえか」
「本当に化物も含まれていましたよね。ダマラン大臣はともかく、蛇竜を魔人族に変異させるなんて有り得ませんよ」
「うむ……まあ、会議の続きはルノ殿が戻ってからにしよう」


結局はルノが戻るまで会議を中断し、別室に待機させている直央を呼び出して彼からもう少し詳しい事情を問い質す事にした。彼等の誰もがルノがいつも通りに問題を解決して戻ってくる事を疑っておらず、今回も彼が何とかしてくれると思い込んでいた――




――しかし、リーリス達の思惑とは裏腹にルノは翌日になっても戻って来ず、急遽彼等は会議室に集まり、戻らぬルノの事について話し合う。


「……既にルノ殿が消息を絶ってから1日が経過した。白原に向けて迎えの部隊を送り込んだが、状況的に考えてルノ殿の身に何かあったのだろう」
「今朝、念のために屋敷の様子を見てきましたがルノさんや魔獣達が戻っている様子はありませんでした。そしてルノさんの性格から考えても私達に連絡を寄越さずに消えるはずがありません」
「という事は……魔王軍に捕まったか、あるいは殺されたか、生きてはいるが我等と連絡が取れない状況に陥っているという事か」
「くそっ!!あのガキ……無事なのか?」


全員の顔色が暗く、ルノが戻って来ない事に彼等は不安を隠せない。誰よりも強く、幾度も魔王軍を撃退してくれたルノが戻って来ない事にリーリス達は動揺を隠せず、先帝でさえも顔色を悪くする。


「考えたくはないが、ルノ殿が捕まった場合、我々はどうすればいい?」
「勿論ルノ様を助け出すべきです!!すぐに白原に軍隊を派遣しましょう!!」
「正直、私もその意見には賛成したい所ですが、その場合はエルフ王国の対応はどうするんですか?」
「それは……」
「落ち着いて……調査は私達の部隊に任せればいい」


先帝の言葉にドリアが真っ先にルノの捜索を願い出るが、リーリスが頭を抑えながら首を振る。すぐに情報収集に優れた人員で構成されている部隊を持つヒカゲが進言すると、皇帝は頷く。


「うむ。ルノ殿の捜索はヒカゲに一任しよう。すぐに冒険者ギルドにも連絡を行い、彼等にも調査を申し込む」
「分かりました……御免」


ヒカゲも焦っているのか皇帝の言葉を聞くと即座に行動を開始し、急ぎ足で会議室を退室する。しかし、ルノが白原に向かった事を考えると帝都近辺に存在する可能性は薄く、幾らヒカゲの部隊を以てしてもすぐにルノの消息が掴めるとは思えない。


「弟よ、ルノ殿の事はヒカゲに任せるとしてもエルフ王国の件はどうする。ナオ殿の話によれば一刻も争うぞ」
「分かっています。同盟を結んでいる以上、帝国も援軍を派遣しないわけにはいかない……このまま王国が滅びれば帝国も無事では済まない以上、何としても助けなければ……」


帝国と王国が同盟を長らく結んでいるのは両国が隣国同士であり、周辺諸国から領地を守るためである。二つの国を中心に他の国が取り囲んでいる状態のため、これまで両国のどちらかに他国が侵攻した場合は必ず両国は力を合わせて対応していた。もしもエルフ王国が滅びてしまえば帝国も無事では済まず、巨人国や獣人国のような大国が動き出してしまう。


「しかし、援軍を送ると言っても我等も余裕はないぞ。今動かせる兵力はせいぜい5000が限界……それに魔王軍がルノ殿を捕えたと考えた場合、帝都の警備も高めなければならん」
「うむ……各領地から兵士を呼び集めるにしても時間が掛かり過ぎてしまう。一体どうすればいいのか……」


皇帝と先帝の会話に他の人間は黙り込み、良案が思いつかない。ここにルノが居ればと誰もが考えてしまうが、今更そのような泣き言は言っていられない。
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