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【完結】私達の冒険はまだまだ…▶️6話
#3 夢物語ってのは、安易に口にするもんじゃない(ルキ視点)
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朝の近づく気配に覚醒し始めた意識、自分の部屋とは異なる場所の空気に、今の状況を思い出す。昨夜は、シオンとヴァイズ・ミレンの研究とやらに熱が入り、結局、夕飯までセリが作り出したあたりで、家の主に「泊まっていけ」と勧められた。かつてはどこぞの貴族の別宅だったという家、セリとシオンがそれぞれ自室として使っていた使用人部屋には予備のベッドもあるからと、シオンと同じ部屋に放り込まれたのだったということまで思いだしたところで─
(…誰だ?)
扉の外、近づく気配に意識が完全に覚醒した。セリともザーラとも異なる気配に、息を殺す。
「…」
開いた扉、臆することなく部屋へと入って来た気配が小さい。軽い足音、衣擦れの音も─
「…」
「…」
寝台の横に立ち、こちらをのぞき込む気配に薄目を開く。
「…」
「…」
「…は?」
綺麗な碧と目が合った。ベッドの横に立ち、こちらをのぞき込んでくる五、六歳の子ども。セリそっくりの顔立ちで、セリそっくりの目をした、セリの子どもだと言われても─
「っ!?お前!?」
嫌な想像に跳び起きた。思わず叫んでから、乱暴すぎた言葉に目の前の子どもを怯えさせてしまったかと思ったが、
「…師のお客さん、ですか?」
「…あ?」
怯える様子の無い子ども。声や話し方までセリに似ている気がする。混乱する頭に、人形のような子どもが無表情のまま深々と頭を下げた、
「初めまして、師の弟子のセリと言います。」
「はぁっ!?」
「お客様、お名前は?」
「は?え?…ルキ。」
「ルキさん、ですね。よろしくお願いします。…それから、すみません、今から少々、うるさくなります。」
「…」
混乱したままのこちらを残して、セリだと名乗ったセリそっくりのちまいのが、部屋にあるもう一つのベッド、シオンが寝ているはずのベッドへ近寄っていく。
「兄さん、朝!朝です!起きて!」
「んー…」
「起きて!起きるの!今日は、師匠とサルダの丘に行く日!」
「んー…?」
「もうもう!起きて!お兄ちゃん!」
(…嘘、だろ…)
セリと名乗る子どもが「兄」と呼び、必死に揺り起こそうとしている相手。昨夜、床につく時は、間違いなくシオンが寝ていたその場所で眠るのは、シオンそっくりの「少年」だった。
(何だ、…何が?)
混乱し続ける頭が、背後から呼ばれた自分の名に反応する。
「ルキ君、ルキ君、大丈夫?」
「ああ、ザーラ。あんた、この状況、分けるか?」
「分からない。私も、朝起きたら、セリちゃんがああなってて。…でも、説明出来そうな人、連れてきたから。」
「…」
言って、手招くザーラ、ベッドから飛び出し、部屋の一歩外へ出れば、そこに立つ男と目が合った。
「…あんたの仕業か?」
「ふむ。その『仕業』というのが、セリとシオンの退行を指すなら、確かに、私の魔術によるものだ。」
「何、考えてんだよ。てか、これ、元に戻んだよな?セリ、何か俺のこと分かんねぇみたいな反応してんだけどよ。」
飄々としたままの男に詰め寄る。特に重要なのは最後、セリが自分を認識していないということ。最悪、元に戻らなくても、それはセリの成長を待てばいいだけのこと。かなり辛いが、多分、待てる。だが、俺の存在を綺麗さっぱり忘れたセリが、一気に年齢差の開いてしまった自分を見向きもしなくなったら─
「っ!」
思わず、男の襟首掴んで奥歯ガタガタ言わせてやろうかと思ったが、
「何を考えているかという質問に対しては、昨夜、お前達が願った望みを叶えたまで。」
「は?」
「望んでいただろう?子どもの頃のセリを見てみたかったと。」
「…」
「…」
「シオンはついでだが。」
思わず、ザーラと顔を見合わせた。
「元に戻るかという質問に対する答え、こちらは是だ。今夜一晩寝れば、元の姿に戻る。セリとシオンにかけた退行の魔術は不完全ゆえ、持って一日。昨夜一晩掛けて退行したものが、今夜一晩かけて元に戻る。」
男の言葉に、漸く安堵する。ただ、元に戻ると分かっていても残る不安。
「…セリが、俺のこと認識してねぇのは…?」
「私も、セリちゃんに初対面の挨拶をされました。」
「セリとシオンの時を、二人がここに住み始めた辺りまで戻した。お前達二人と出会う前だ、認識しないのは当然だろう。」
「…」
「…その、時を戻すというのは、肉体面だけではなく、精神面も、ということでしょうか?」
「?精神は肉体に宿る。切り離せぬが道理だと思うが?」
「…」
「…」
当然だろうと言わんばかりの男の態度に、ザーラと二人、言葉を失った。
(…誰だ?)
扉の外、近づく気配に意識が完全に覚醒した。セリともザーラとも異なる気配に、息を殺す。
「…」
開いた扉、臆することなく部屋へと入って来た気配が小さい。軽い足音、衣擦れの音も─
「…」
「…」
寝台の横に立ち、こちらをのぞき込む気配に薄目を開く。
「…」
「…」
「…は?」
綺麗な碧と目が合った。ベッドの横に立ち、こちらをのぞき込んでくる五、六歳の子ども。セリそっくりの顔立ちで、セリそっくりの目をした、セリの子どもだと言われても─
「っ!?お前!?」
嫌な想像に跳び起きた。思わず叫んでから、乱暴すぎた言葉に目の前の子どもを怯えさせてしまったかと思ったが、
「…師のお客さん、ですか?」
「…あ?」
怯える様子の無い子ども。声や話し方までセリに似ている気がする。混乱する頭に、人形のような子どもが無表情のまま深々と頭を下げた、
「初めまして、師の弟子のセリと言います。」
「はぁっ!?」
「お客様、お名前は?」
「は?え?…ルキ。」
「ルキさん、ですね。よろしくお願いします。…それから、すみません、今から少々、うるさくなります。」
「…」
混乱したままのこちらを残して、セリだと名乗ったセリそっくりのちまいのが、部屋にあるもう一つのベッド、シオンが寝ているはずのベッドへ近寄っていく。
「兄さん、朝!朝です!起きて!」
「んー…」
「起きて!起きるの!今日は、師匠とサルダの丘に行く日!」
「んー…?」
「もうもう!起きて!お兄ちゃん!」
(…嘘、だろ…)
セリと名乗る子どもが「兄」と呼び、必死に揺り起こそうとしている相手。昨夜、床につく時は、間違いなくシオンが寝ていたその場所で眠るのは、シオンそっくりの「少年」だった。
(何だ、…何が?)
混乱し続ける頭が、背後から呼ばれた自分の名に反応する。
「ルキ君、ルキ君、大丈夫?」
「ああ、ザーラ。あんた、この状況、分けるか?」
「分からない。私も、朝起きたら、セリちゃんがああなってて。…でも、説明出来そうな人、連れてきたから。」
「…」
言って、手招くザーラ、ベッドから飛び出し、部屋の一歩外へ出れば、そこに立つ男と目が合った。
「…あんたの仕業か?」
「ふむ。その『仕業』というのが、セリとシオンの退行を指すなら、確かに、私の魔術によるものだ。」
「何、考えてんだよ。てか、これ、元に戻んだよな?セリ、何か俺のこと分かんねぇみたいな反応してんだけどよ。」
飄々としたままの男に詰め寄る。特に重要なのは最後、セリが自分を認識していないということ。最悪、元に戻らなくても、それはセリの成長を待てばいいだけのこと。かなり辛いが、多分、待てる。だが、俺の存在を綺麗さっぱり忘れたセリが、一気に年齢差の開いてしまった自分を見向きもしなくなったら─
「っ!」
思わず、男の襟首掴んで奥歯ガタガタ言わせてやろうかと思ったが、
「何を考えているかという質問に対しては、昨夜、お前達が願った望みを叶えたまで。」
「は?」
「望んでいただろう?子どもの頃のセリを見てみたかったと。」
「…」
「…」
「シオンはついでだが。」
思わず、ザーラと顔を見合わせた。
「元に戻るかという質問に対する答え、こちらは是だ。今夜一晩寝れば、元の姿に戻る。セリとシオンにかけた退行の魔術は不完全ゆえ、持って一日。昨夜一晩掛けて退行したものが、今夜一晩かけて元に戻る。」
男の言葉に、漸く安堵する。ただ、元に戻ると分かっていても残る不安。
「…セリが、俺のこと認識してねぇのは…?」
「私も、セリちゃんに初対面の挨拶をされました。」
「セリとシオンの時を、二人がここに住み始めた辺りまで戻した。お前達二人と出会う前だ、認識しないのは当然だろう。」
「…」
「…その、時を戻すというのは、肉体面だけではなく、精神面も、ということでしょうか?」
「?精神は肉体に宿る。切り離せぬが道理だと思うが?」
「…」
「…」
当然だろうと言わんばかりの男の態度に、ザーラと二人、言葉を失った。
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