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【魔王333号】マハリ地方で停滞 ”事前の対策を” ▶️6話
#5 魔王戦、お約束のアレをやって、大団円
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「あはははは!無限湧き!これ、無限湧きじゃない!?終わんない!」
「シオン、いいから、もっと体力温存考えて動け。…あっちが魔王倒しきるまで持たせんだからな?」
「大丈夫!ここ強ポジだから!勝ち確!勝ち確なんで!」
「…」
「あ!?ちょ、セリ!射線入ってこないで!」
「…」
「あーっ!?スタックした!動けない!」
「…」
「セリ!セリさん!ちょっと助けて!」
「…」
「サンキュー!って嘘!?ジャムった!?あはははは!回転式のくせに生意気!」
「…兄さん、うるさい。」
言ってはいけないかもしれないけど、我慢できずに言ってしまった。魔法銃を連射する内に楽しくなってしまったらしい兄が、非常に鬱陶しい。
(…お手本のようなトリガーハッピー。)
黙って、…まではなくても、いちいち叫ぶのはやめて欲しい。
「…セリちゃん、あっち、終わったみたいだよ?」
「え…?」
観戦モードだったエルの声に振り向けば、確かに、魔王を急襲しに行った本隊がこちらへ向かってくるのが見える。
「…兄さん、魔王、もう倒したみたい。」
「オッケー!じゃあ、あと、こいつら殲滅して終わりね!」
非常に楽しそうな兄と、なんやかんやで兄に付き合っているルキを置いて、エルの隣で、本隊の合流を待つ。
勇者を筆頭に、こちらへ向かってくる「むくつけき」男達の集団。
(…まぁ、確かに。女の身で、この中で戦うのは中々に大変。)
それでも、何も出来ないってことはないはず。今みたいに、大量に襲ってくるモンスター相手に「ここは任せて先に行け」することだって出来るのだから。
(…それに、別の意味での例外もいるし。)
勇者の横でキャピキャピしている女の子が四人。全員、元気いっぱいピカピカで場違い感が凄い。それでも、勇者が嬉しそうにしているから、問題ないんだと思う。
(…それよりも。)
勇者に─というより、勇者パーティの女の子達に─ついていったライナートの様子がおかしい。視線が、女の子達ではなくこちらを向いている。かなり、焦りをのせた表情で─
(…なるほど?)
理解しました。
フラグは折るものだし、期待には応えたい。
「…エル。」
「ん?どうしたの、セリちゃん?」
こちらの呼びかけに小首を傾げてキュルンしてくれるエル。向かい合って、その両手を持ち上げる。
「…大切な話があるので、聞いて下さい。」
「え?うん、いいけど。今?」
「今、です…」
角度とか、距離とか。これ以上ないタイミング─
「…エル、私は、エルのことが好きです。」
「え…?」
「今までも、仲良くしてくれてありがとうございます。…だけど、これからはもっと、」
「っ!!ちょっと待ったーーーーー!!!!」
「っ!?え?なに?ライナート??」
「…」
(ビックリした…)
凄い叫び声。目に見えない速さで、エルの手が奪われていった。エルの両手を必死に握り締め、こちらに警戒の目を向けてくるライナート。流石はS級冒険者、と感心したいところだけれど、
「…何ですか、ライナートさん?邪魔しないで欲しいんですけど。私の告は、」
「待て!待ってくれ!頼む!」
「…何を待てと?」
「分かっている!これが、非常に卑怯な真似だということは。だが!俺は、このまま君達のことを黙って見ていることが出来ない!しかし、かと言って、俺は、俺の気持ちは…、自分自身、何をしたいのかが…!」
「…」
「頼む!少しでいいんだ!俺に時間をくれないだろうか!考える時間が欲しいんだ、俺のこの、」
「ストップ…」
前のめり気味のライナートさんを制止する。
「…すまない、だが…」
「いいですよ。待ちます。」
「っ!?本当か!?」
「待ちますけど、今のその『俺の気持ち』とやらを私に言われても困ります。なので、ちゃんと、エルと話して下さい。」
「…エルと…」
珍しく、完全に話についていけていない様子のエルが、本気で戸惑っている。そんな顔も可愛いなと思いながら、
「…あっちで、二人で、ちゃんと話をして下さい。」
「それは…」
「ライナートさん、私、エルが大好きなんです。だから、エルに笑ってて欲しいんです。だから、ちゃんと。」
「…分かった。」
頷いたライナートに手を引かれるようにして、エルが戸惑いながらも後をついて行く。一度、こちらを振り向いたエルに、親指を立てておいた。
(グッドラック…)
ライナートの気持ちとやらが、どんなもので、どんな種類のものか、それはもう推し量るしかないんだけど。
(大丈夫、だよね…?)
ライナートなら、きっと、エルを傷つけない。釘も刺した。後は、もう、エルが、笑って帰ってくることだけを願っている。
「シオン、いいから、もっと体力温存考えて動け。…あっちが魔王倒しきるまで持たせんだからな?」
「大丈夫!ここ強ポジだから!勝ち確!勝ち確なんで!」
「…」
「あ!?ちょ、セリ!射線入ってこないで!」
「…」
「あーっ!?スタックした!動けない!」
「…」
「セリ!セリさん!ちょっと助けて!」
「…」
「サンキュー!って嘘!?ジャムった!?あはははは!回転式のくせに生意気!」
「…兄さん、うるさい。」
言ってはいけないかもしれないけど、我慢できずに言ってしまった。魔法銃を連射する内に楽しくなってしまったらしい兄が、非常に鬱陶しい。
(…お手本のようなトリガーハッピー。)
黙って、…まではなくても、いちいち叫ぶのはやめて欲しい。
「…セリちゃん、あっち、終わったみたいだよ?」
「え…?」
観戦モードだったエルの声に振り向けば、確かに、魔王を急襲しに行った本隊がこちらへ向かってくるのが見える。
「…兄さん、魔王、もう倒したみたい。」
「オッケー!じゃあ、あと、こいつら殲滅して終わりね!」
非常に楽しそうな兄と、なんやかんやで兄に付き合っているルキを置いて、エルの隣で、本隊の合流を待つ。
勇者を筆頭に、こちらへ向かってくる「むくつけき」男達の集団。
(…まぁ、確かに。女の身で、この中で戦うのは中々に大変。)
それでも、何も出来ないってことはないはず。今みたいに、大量に襲ってくるモンスター相手に「ここは任せて先に行け」することだって出来るのだから。
(…それに、別の意味での例外もいるし。)
勇者の横でキャピキャピしている女の子が四人。全員、元気いっぱいピカピカで場違い感が凄い。それでも、勇者が嬉しそうにしているから、問題ないんだと思う。
(…それよりも。)
勇者に─というより、勇者パーティの女の子達に─ついていったライナートの様子がおかしい。視線が、女の子達ではなくこちらを向いている。かなり、焦りをのせた表情で─
(…なるほど?)
理解しました。
フラグは折るものだし、期待には応えたい。
「…エル。」
「ん?どうしたの、セリちゃん?」
こちらの呼びかけに小首を傾げてキュルンしてくれるエル。向かい合って、その両手を持ち上げる。
「…大切な話があるので、聞いて下さい。」
「え?うん、いいけど。今?」
「今、です…」
角度とか、距離とか。これ以上ないタイミング─
「…エル、私は、エルのことが好きです。」
「え…?」
「今までも、仲良くしてくれてありがとうございます。…だけど、これからはもっと、」
「っ!!ちょっと待ったーーーーー!!!!」
「っ!?え?なに?ライナート??」
「…」
(ビックリした…)
凄い叫び声。目に見えない速さで、エルの手が奪われていった。エルの両手を必死に握り締め、こちらに警戒の目を向けてくるライナート。流石はS級冒険者、と感心したいところだけれど、
「…何ですか、ライナートさん?邪魔しないで欲しいんですけど。私の告は、」
「待て!待ってくれ!頼む!」
「…何を待てと?」
「分かっている!これが、非常に卑怯な真似だということは。だが!俺は、このまま君達のことを黙って見ていることが出来ない!しかし、かと言って、俺は、俺の気持ちは…、自分自身、何をしたいのかが…!」
「…」
「頼む!少しでいいんだ!俺に時間をくれないだろうか!考える時間が欲しいんだ、俺のこの、」
「ストップ…」
前のめり気味のライナートさんを制止する。
「…すまない、だが…」
「いいですよ。待ちます。」
「っ!?本当か!?」
「待ちますけど、今のその『俺の気持ち』とやらを私に言われても困ります。なので、ちゃんと、エルと話して下さい。」
「…エルと…」
珍しく、完全に話についていけていない様子のエルが、本気で戸惑っている。そんな顔も可愛いなと思いながら、
「…あっちで、二人で、ちゃんと話をして下さい。」
「それは…」
「ライナートさん、私、エルが大好きなんです。だから、エルに笑ってて欲しいんです。だから、ちゃんと。」
「…分かった。」
頷いたライナートに手を引かれるようにして、エルが戸惑いながらも後をついて行く。一度、こちらを振り向いたエルに、親指を立てておいた。
(グッドラック…)
ライナートの気持ちとやらが、どんなもので、どんな種類のものか、それはもう推し量るしかないんだけど。
(大丈夫、だよね…?)
ライナートなら、きっと、エルを傷つけない。釘も刺した。後は、もう、エルが、笑って帰ってくることだけを願っている。
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