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【魔王333号】マハリ地方で停滞 ”事前の対策を” ▶️6話
#4 嘘は、ついてない…
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「…あ。」
「?…君は。」
野営中、流石に、ずっとルキにべったりというのは非現実的だったので、ルキが兄や勇者を連れて食料調達に向かった隙に、火の準備を始めていた。拾った枝の水分を火魔法で飛ばしているところに現れたのは、ライナート。
「…薪集めか?手伝おう。」
「…ありがとう、ございます。」
「…」
「…」
ライナートが集めて来る枝を黙々と乾燥させていき、ある程度、量が出来たところで立ち上がる。
「…すみません。ありがとうございました。後は、運ぶだけなので、」
「俺が持とう。」
「え、でも…」
「女性に持たせる量ではない。」
「っ!?」
あまりにもサラッと。隠している性別を言い当てられて固まった。
「?…どうした?」
「…えっと、何故、その、私が女だと?」
「…ああ、すまない。秘匿していたのか。ならば、無粋な真似をした。申し訳ない。」
「いえ、あの、はい、一応、秘密ではあるんですが。…女だってバレたことがなかったので、ビックリして。」
「?君は、どこからどう見ても女性だろう?」
「…」
恐るべし─
生粋のフェミニストには性別詐称なんてすぐにバレる。認識阻害なんて意味が無い。
「?」
「…」
真っ直ぐな瞳に見据えられて、完全なる敗北を知る。
(…これが、曇り無きまなこ。)
完膚なきまでに見定められてしまった─
「…ああ。もしや、だが、エルや君のパーティメンバーは、君の性別を知らないのか?」
「あ、いえ、パーティのみんなは知ってます。でも、あの、一応、その他の人には秘密でお願いできたら…」
「分かった。約束しよう。…だが、しかし、そうか、男の振りで今回の討伐に参加しているのか…」
「…そうですけど。別に、討伐に性別は関係ありません、よね。」
「…確かに、そうだな。…だが、俺は、エルでさえ今回の討伐は大変だろうと思っているんだ。だから、やはり、女性の身で長距離を移動し、魔王との戦闘を行うというのは…」
「…」
ライナートの言葉にかなりムッと来た。
(…大変なのは、分かってる。)
だから、そのために努力はしてきた。ダンジョン調査に拘ったのも、ダンジョンでの戦闘訓練を続けているのも、皆と一緒に戦うため。エルだってそう。兄やルキと一緒に、好きでもないダンジョンに潜って、スキルを磨き続けてきた。
「…それにしても、なぜ、君はわざわざ男の恰好を?…女性の姿であれば、まだ、配慮してもらえることも、」
「…エルが好きだからです。」
「っ!?えっ!?」
(…好きなのは、エルだけじゃないけど。)
腹が立ったので、ちょっとだけ煽る。「エル」の名前に、ライナートが分かりやすく反応するから。
「…男の格好の方が都合がいいんです。エルと一緒に居やすいから、エルの側にいたいから。」
「っ!ま、待ってくれ。もしや、君は、エルのことが…?」
「大好きです。」
「っ!そう、なのか。あ、いや、しかし、エルは、エルの恋愛対象は…」
「男性ですね。だから何ですか?好きになるのに男とか女とか関係ありますか?私はエルという存在が好きです。私を大切な友人だと言ってくれて、好きな男性のことを教えてくれる。そんなエルが好きです。」
「…」
驚いたみたいな顔で固まっているライナート。エルを庇って聖騎士を辞めるくらいエルのことが大切なくせに。エルを好きだと言う私を前にこんなに焦っているくせに。
(…なのに、エルの気持ちに気づいてもいない。)
なんだか、ちょっとムカつきが増してきた。なので、
「…私、この戦いが終わったらエルに告白するんだ、…です。」
「っ!?」
「今まで、言葉にしたことはありませんでしたが、自分の気持ちを素直に伝えてみようと思います。」
「…」
「…それで、もし、エルに気持ちが届いて、エルも同じ気持ちでいてくれたら、凄く嬉しいと思うので。…私は、エルの特別になりたいから。」
「…特別。」
「はい。ずっと一緒にいて、一緒に笑って、それで、困った時は助け合って。…それで、この『大好き』という気持ちと同じものを返して貰えたら、凄く幸せです。」
「…エルの、好き。…それは、だが、君とエルは既に友人同士だろう?…それをわざわざ、友情を壊しかねない真似をしてまで…」
「ただの友達では嫌、なので。」
私はエルの特別な友達になりたい─
「ただの友達では出来ないこと、いっぱいありますよね?」
「…」
それに、
「勝算はあるんです。」
「っ!?」
エルも私を「特別な友達」だと思ってくれているはず。
「…まぁ、でも、すみません、ライナートさんには関係ないことでしたよね?」
「…」
「…失礼します。」
ライナートを置いて、薪を抱えあげる。歩き出しながら、ちょっと言い過ぎたかな?と思ったけれど、「いやいや、これくらい」と首を振る。今ままでエルが続けた片想いの長さを考えれば、ライナートにも「エルに彼女が出来るかも!?」くらいの焦りは感じて欲しい。
(…手放しに歓迎、って感じでもなかったし。)
ライナートは、眠れぬ夜を過ごせばいいと思う。
「?…君は。」
野営中、流石に、ずっとルキにべったりというのは非現実的だったので、ルキが兄や勇者を連れて食料調達に向かった隙に、火の準備を始めていた。拾った枝の水分を火魔法で飛ばしているところに現れたのは、ライナート。
「…薪集めか?手伝おう。」
「…ありがとう、ございます。」
「…」
「…」
ライナートが集めて来る枝を黙々と乾燥させていき、ある程度、量が出来たところで立ち上がる。
「…すみません。ありがとうございました。後は、運ぶだけなので、」
「俺が持とう。」
「え、でも…」
「女性に持たせる量ではない。」
「っ!?」
あまりにもサラッと。隠している性別を言い当てられて固まった。
「?…どうした?」
「…えっと、何故、その、私が女だと?」
「…ああ、すまない。秘匿していたのか。ならば、無粋な真似をした。申し訳ない。」
「いえ、あの、はい、一応、秘密ではあるんですが。…女だってバレたことがなかったので、ビックリして。」
「?君は、どこからどう見ても女性だろう?」
「…」
恐るべし─
生粋のフェミニストには性別詐称なんてすぐにバレる。認識阻害なんて意味が無い。
「?」
「…」
真っ直ぐな瞳に見据えられて、完全なる敗北を知る。
(…これが、曇り無きまなこ。)
完膚なきまでに見定められてしまった─
「…ああ。もしや、だが、エルや君のパーティメンバーは、君の性別を知らないのか?」
「あ、いえ、パーティのみんなは知ってます。でも、あの、一応、その他の人には秘密でお願いできたら…」
「分かった。約束しよう。…だが、しかし、そうか、男の振りで今回の討伐に参加しているのか…」
「…そうですけど。別に、討伐に性別は関係ありません、よね。」
「…確かに、そうだな。…だが、俺は、エルでさえ今回の討伐は大変だろうと思っているんだ。だから、やはり、女性の身で長距離を移動し、魔王との戦闘を行うというのは…」
「…」
ライナートの言葉にかなりムッと来た。
(…大変なのは、分かってる。)
だから、そのために努力はしてきた。ダンジョン調査に拘ったのも、ダンジョンでの戦闘訓練を続けているのも、皆と一緒に戦うため。エルだってそう。兄やルキと一緒に、好きでもないダンジョンに潜って、スキルを磨き続けてきた。
「…それにしても、なぜ、君はわざわざ男の恰好を?…女性の姿であれば、まだ、配慮してもらえることも、」
「…エルが好きだからです。」
「っ!?えっ!?」
(…好きなのは、エルだけじゃないけど。)
腹が立ったので、ちょっとだけ煽る。「エル」の名前に、ライナートが分かりやすく反応するから。
「…男の格好の方が都合がいいんです。エルと一緒に居やすいから、エルの側にいたいから。」
「っ!ま、待ってくれ。もしや、君は、エルのことが…?」
「大好きです。」
「っ!そう、なのか。あ、いや、しかし、エルは、エルの恋愛対象は…」
「男性ですね。だから何ですか?好きになるのに男とか女とか関係ありますか?私はエルという存在が好きです。私を大切な友人だと言ってくれて、好きな男性のことを教えてくれる。そんなエルが好きです。」
「…」
驚いたみたいな顔で固まっているライナート。エルを庇って聖騎士を辞めるくらいエルのことが大切なくせに。エルを好きだと言う私を前にこんなに焦っているくせに。
(…なのに、エルの気持ちに気づいてもいない。)
なんだか、ちょっとムカつきが増してきた。なので、
「…私、この戦いが終わったらエルに告白するんだ、…です。」
「っ!?」
「今まで、言葉にしたことはありませんでしたが、自分の気持ちを素直に伝えてみようと思います。」
「…」
「…それで、もし、エルに気持ちが届いて、エルも同じ気持ちでいてくれたら、凄く嬉しいと思うので。…私は、エルの特別になりたいから。」
「…特別。」
「はい。ずっと一緒にいて、一緒に笑って、それで、困った時は助け合って。…それで、この『大好き』という気持ちと同じものを返して貰えたら、凄く幸せです。」
「…エルの、好き。…それは、だが、君とエルは既に友人同士だろう?…それをわざわざ、友情を壊しかねない真似をしてまで…」
「ただの友達では嫌、なので。」
私はエルの特別な友達になりたい─
「ただの友達では出来ないこと、いっぱいありますよね?」
「…」
それに、
「勝算はあるんです。」
「っ!?」
エルも私を「特別な友達」だと思ってくれているはず。
「…まぁ、でも、すみません、ライナートさんには関係ないことでしたよね?」
「…」
「…失礼します。」
ライナートを置いて、薪を抱えあげる。歩き出しながら、ちょっと言い過ぎたかな?と思ったけれど、「いやいや、これくらい」と首を振る。今ままでエルが続けた片想いの長さを考えれば、ライナートにも「エルに彼女が出来るかも!?」くらいの焦りは感じて欲しい。
(…手放しに歓迎、って感じでもなかったし。)
ライナートは、眠れぬ夜を過ごせばいいと思う。
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