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【緊張】好きな人の帰省についていったら…/実家ご挨拶/地元の友人/豊漁祭/ ▶17話

#11 一生もの(ルキ視点)

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軽く叩いた扉の向こう、セリが反応するのが分かった。

衣擦れの音、扉に近づき立ち止まる。それから─

「…セリ?」

「…」

「開けて?」

開く扉、中から顔を覗かせたセリの髪が濡れている。

「…本当に、来たんですか?」

「ん?来るって言ったろ?セリに断られなかったし?」

「…」

「…入れてくんねぇの?」

「…どうぞ。」

身を引いたセリのおかげで出来た隙間から、部屋の中へと滑り込む。

「…あの、兄は?本当に、潰して…?」

「いや…」

この状況で、そこを気にするセリに、少し笑う。

「実行委員ってのに酔い潰されて帰って来た。…相当、楽しかったみてぇ。」

「…青春。ひと夏、…秋の思い出ですね。」

「だな?…セリ、髪、途中だった?…俺がやっていい?」

「え…、あの、…はい。」

「サンキュ。」

一つしかないベッドの上、腰掛させて、大人しく頭を差し出すセリの髪に触れる。肩に掛けられていたタオルで、丸い、小さな頭を覆って。

「…なんか、前にもこんなんあったな。」

「…はい。」

「言っとくが、あん時は下心無しの親切心だからな?」

「…あの時、…」

「だな。…あん時。」

セリの身体がガチガチに緊張している。意識されて嬉しいのと同時、少し可哀想にもなってくる。

(…けど、まぁ、止めれそうにねぇんだよ。)

自分の意志では─

「…セリ、俺さ、セリが欲しい。」

「…」

「もう、なんか、抑えらんねぇの。単純に、セリ可愛いなって、全部触れて、確かめて、二人で気持ちよくなりてぇってのと、今すぐ自分のもんにしとかねぇとこえぇってのがあって…」

「…」

「だから、本気でセリが嫌だってんなら、言って。待てっつーなら、待つし。セリが決めていいから。…だから、離れてくのだけは無しな?」

「…離れたり、しないです。」

タオルの下、こちらを見上げて来る視線に射すくめられる。

「私も、ルキが、…欲しいです。…ルキが、好きだから。」

「…」

「だから、あの、…ください。ルキを…」

「…サンキュ。…俺も、」

躊躇いがちに背中に回される手、胸元に寄せられる頬、密着する身体の柔らかさ。何もかも─

「俺にも全部くれ。セリの全部…」




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