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【緊張】好きな人の帰省についていったら…/実家ご挨拶/地元の友人/豊漁祭/ ▶17話

#4 地元での彼の姿を知る

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ハーフェン滞在二日目、「波乗りしたい」というルキに、兄と二人でくっついて、浜辺へと出掛けた。

出かける前に、「ローブを着て」と要求するルキと「涼しい恰好がしたい」と主張した私の間で、少々、揉めはしたものの、「熱中症になるよ」という兄の一言で、ルキが折れた。

浜辺につき、私に「海での諸注意」をした後、海の家のようなお店から勝手知ったるという感じでボードを持ち出したルキ。そのまま、海の中へと入って行く姿を見送って、兄と二人、座り込んだ砂浜で、ボーっとルキを眺める。

(サーフィン、よくわからないけど…)

ボードに立って、波の上を滑って、浜に戻って来る。その一連の動きが、格好よくて、洗練されていて、ルキの動きが周囲の人達とは全然違うことだけは分かった。

(…オーラが、出てる。)

その圧倒的なオーラのせいか、浜に戻る度、ルキは周りから声をかけられまくり。知り合いらしき彼らに、ルキが笑って応えている。男も女も関係なく─

それを遠目に見守る私達。

「…ルキって、友達多いよなー。」

「うん…」

本当は、もっと近くで見たい。けど、ルキに「この季節の太陽なめんな」「日陰から出んな」と言われて、木陰の下から出ることを禁じられている。

(…でも、それで良かったのかも。)

遠目でも分かる、ルキの裸の上半身、腹筋のカッコよさ。

(あれは、ダメ。お日様の下で直視とか、無理…)

そう、思っていたのに─

ルキがこちらに向かって歩いてくる。全身濡れて、肌に、水を滴らせたまま。

(マズい…)

視線を逸らしていたんだけど、

「セリ…」

「…」

名前を呼ばれてしまった。視線を向ければ、見事なシックスパックが目の前に。陽光を浴びてキラキラなルキ。海と太陽が凄く似合うー

「…アポロン、的な?」

「…アポロンって何?誰?男?」

(あ…)

しまった。ルキの容赦ない輝きに脳がショートしていた。率直な感想が口からポロっと。

「ルキって、心狭いよなー。」

「あ?」

「いや、そこで男?って出て来るところが、何て言うか、恐ろしいほどの嗅覚。」

「…」

兄をひと睨みしたルキがこちらを向いた。

「…セリ、退屈してねぇ?」

「いえ。…ルキ見てるの、楽しいです。」

「…ホントに?」

「はい。恰好いいなぁって…」

もう、芸術鑑賞の域で堪能している。

「…ちょっと、俺、も一回、行ってくるわ。」

「はい、行ってらっしゃい…」

笑顔で背を向けたルキを見送った。横から、兄の視線を感じる。

「…ルキって、たまにビックリするくらい、単じゅ、」

「兄さん…」

「ごめんごめん。…で、セリは泳がないの?」

「うーん。水着が…」

いま着ているものは、一応、水着。ただ、露出は少ないし、身体にフィットもしていない。ルキの妥協点だったミニワンピーススタイル。本気で泳ぐつもりではないから、これで充分。なんだけど、布面積の大きさに、海に入った後の不快さを考えて躊躇している。

「…まあ、んじゃ、俺、ちょっとあっち行ってくる。あっちで本気出してくるから。」

「本気…?」

「そう。大人が本気で砂の城作ってくる。」

「…」

「土魔法覚えた時から、一回やってみたかったんだよなー。」

「…いってらっしゃい。」

無邪気?な兄を見送った。

遠目に、広い砂地で砂を固め始めた兄の姿が見える。何故か、兄の周りに地元の子らしき子ども達がワラワラと集まり始めた。固まるはずのない砂が固まっていく様子に、歓声が上がっている。

(…大人気。)

それからまた、視線を戻して、木陰でボーッとルキを眺める。

人の近づいてくる気配に顔を上げれば、陽光を背に、予想外の人が立っていた。

「…よぉ。」

「…どうも。」

暁星ぎょうせいのリーダー、カッシュ。この人に直接こえを掛けられたのは初めてかもしれない。

(でも、私は今、この恰好だから…)

「…セリ、だっけか?…あんた、女だったんだな。」

「…はい。」

(び、っくりした…)

今の私を見て、「セリ」だと認識されるとは思わなかった。

(流石、S級冒険者…)

カッシュもS級に合格していたことを、自慢げに話していたルキの姿を思い出す。

「…ルキが帰ってるとは聞いてたが、あんた連れて帰ってたのか。」

「はい。…あと、兄も居ます。」

「ふーん…」

そう言ったっきり、黙り込んでしまったカッシュ。立ち去る様子もなく、海を、ルキの方を眺めている。

(…私に、何か用…?)

だけど、それが何か、思い当たるものがない。何となく落ち着かなくてソワソワしていると、

「…あー、あのさ、あんた、ルキと、付き合ってんの?」

「…はい。」

「そっか。…まあ、だよな。」

「?」

一人、納得した様子のカッシュ。それきり何も言われないので、視線をルキの方へと逸らした。ルキが、こちらへ走ってきている。

「…アイツのこと、よろしくな。すげぇ、いい奴だから。」

「…はい。」

カッシュの独り言のような言葉に、小さく返したところで、ルキがカッシュの前へとたどり着く。

「カッシュ、お前、何やってんだよ、こんなとこで。」

「何やってるはねぇだろ。…普通にお前と一緒。祭りに帰って来ただけ。」

「…」

ルキが、カッシュと私を見比べてから、

「…一人で帰って来たのか?」

「いや、ミランダと。」

「リリーは?」

「ああ、…アイツとは別れた。」

「はぁっ!?」

「!」

爆弾発言。横で聞いていただけの私も驚いた。

もっと驚いたはずのルキ、その視線が私とカッシュの間を行き来している。カッシュに聞きたい、けど、私がいるから聞けない─?

「…ルキ、私、兄さんの手伝いに行ってきます。」

「っ!?…や、でも、な…」

躊躇するルキに、大丈夫だという意味を込めて頷いて見せた。そのまま、立ち上がって兄の元へと歩き出す。

「セリ!夕方には帰っから!」

声に振り向けば、ルキがこちらを見ていて、

「飯、一緒おう!」

その言葉に頷いて、手を振った。

それ以上り返らずに、兄の元へ向かえば、何だか、「大人の本気」の規模がとんでもないことになっていた。いつの間にか、兄以外の大人の数も増えていて、ちょっとした砂像大会に。

「あれ?セリ?ルキは?」

「…カッシュさんと会って、二人で話してくるんだと思う。…夕方戻ってくるって。」

「ふーん、まぁ、折角、地元戻ってきてんなら、旧交温めんのも大事だよな。」

「うん…」

「じゃあ、セリは暇なんだな?これ参戦する?」

「…これは、何を作ってるの?」

「え?シンデレラ城。」

「…」

私の知っているシンデレラ城とは違う造形の何かだけれど。構ってくれようとする兄の優しさに甘えて、築城に参加することにした。




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