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【重大発表】二人に大切なお知らせがあります ▶6話

#1 恋人と一緒のノンビリまったりスローライフ…?

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「よ、セリ。」

「…おはようございます。」

「はよ。」

(…朝から、ルキの笑顔が眩しい。)

家を一歩出たところで、赤髪をワイルドに立たせた長身のイケメンがお出迎えをしてくれる。今日日、高校生でもこんな爽やかに「家までお迎え」してくれないんじゃないだろうか。尊い。

「…セリ、どっか行きたいとこあるか?」

「特には、ないです…」

ダンジョン調査が終わった翌日から、兄の発案で、パーティでの活動はお休みになった。「一ヶ月も働きっぱなしだったんだから」という兄の主張により、現在長期休暇中の深淵をのぞく四翼しよくの風。

「じゃあ、昨日みたいにギルドのぞいてから決めるか…?」

「はい。」

ただ、お休みを頂いていても特にすることも無い私は、ここ何日か、ルキと二人でのんびり依頼をこなすという、スローライフ?を楽しんでいる。

(…しかも、毎朝、彼氏のお迎えつきで。)

「なに?どした?」

「いえ…」

見上げれば、直ぐに視線に気づいてこちらを向くルキ。横顔をこっそり楽しむことは出来なくなったけれど、毎回、優しさ全開の笑顔を向けてもらえるから、やっぱり嬉しい。

(眼光鋭いルキも好きだけれど、これはこれで…)

すっかりヤンキー色の薄くなってしまったルキ、でも、それは、私達が「付き合ってる」からなんだと思うと、自然に口元が緩む。気づかれないよう、下を向いてニヤニヤしていたら、

「そういや、シオンは?今日もダンジョン潜ってんの?」

ルキの質問に、口元を引き締め直して顔を上げる。

「はい。早朝から。」

「はまってんなー。」

「はい。…午後からはエルも一緒だそうです。」

「何だそれ。結局、誰も休んでねぇじゃねぇか、っていう…」

ルキの言う通りだと思って、頷いた。

師から、兄曰くの「魔法銃」を受け取ってから、兄は毎日張り切ってダンジョンに潜っている。魔法銃の「調整」を頑張っているようだけれど、それがなかなか一筋縄ではいかないらしい。一度ハマると凝り性の兄は、それはそれで楽しんでいるようだけれど。

(長期休暇は、調整期間でもある、のかな…?)

みんなを調整に付き合わせるのが申し訳なくてお休みにした。兄ならありそうな考えだなと思う。

「…あの、ルキも。」

「ん?」

「お休みしたかったら言ってください。私に付き合う必要は、」

「なんでだよ。付き合わせてんの俺だろ?」

「え?」

「俺が会いたいから誘ってんだし、一緒てぇから迎えに来てんだけど?帰りとか、ホントは帰したくねぇからな?」

「…」

「…やべぇ。俺、今、ちょっとウザいな?てか、アレか?束縛系?」

「いえ…、束縛はされてない、と…」

「…セリ、言えよ?ウザかったら、マジで言え?凹むけど、それで嫌われんのだけはマジで無理だから。絶対、言え?」

「はい…」

(嬉しいです…)

とは言えなかった。朝の、日の光の下で、そんな台詞。

のんびり歩いてたどり着いたギルド、ルキは自分指名の依頼が無いかを、一応、確認しに行った。お休み中ではあるけれど、ルキはS級冒険者だから。

(指名依頼が入ったら、国中どこにでも行かないといけないのか…)

そうなった時は絶対についていきたい。でも、その前に、ついていけるだけの実力を。師にもらったモンスター情報で予習はしているから、後はダンジョンでの実地。お休みが終わったら頑張ろうと思いながら、ギルドの依頼ボードの前に立つ。

(無い…)

ルキが好きそうな討伐のお仕事が。主に、スピード特化型のモンスターで、大きい方がいいけど、小型でも群れ単位なら─

「…これ、いいんじゃねぇの?」

「っ!」

真後ろに現れたルキ。本人にそのつもりは無いらしいのだけれど、足音も気配もしないから、突然、背後に立たれるとビックリする。肩越しに伸びたルキの腕、指差す先にある依頼を確かめれば、

「…これ、薬草採取、ですよ?」

「んー?ガモルなら、リーベ湖ら辺で取れるよな?」

「はい…」

「近いし、天気いいし、いいんじゃねぇ?」

「…」

いいんじゃねぇ?と聞いてくる、ルキの声が近い。

(近いというか、もう、頭の上…)

背中に張り付いたルキに、いつの間にか囲われていた。しかも、頭の上でしゃべってる。髪に、息がかかるくらいの近さで─

(…無理!)

逃げ出して、勢いで、掲示板の依頼書をはぎ取った。

「…セリ?」

「これ、ですよね?いいと思います。受付してきます…」

「いやいや、待て待て。俺も行くから。」

「っ!」

ルキが笑っている。逃げ出したというのがバレている。

(…だって、無理!)

どうしても、前世日本人の感覚が、人前でのスキンシップに強烈なテレくささを生んでしまうから。

「…ほら、行くんだろ?」

「…」

なのに、ルキは何でもない顔で笑って、手を差し出してくる。その「余裕」みたいなのが─

(っ!カッコいい…!)

元からスキンシップの多いルキだけれど、女性に対してはあまりしないものだと思っていた。それが、私が女だと判明しても変わらないことに、当初は「女慣れしている」とちょっと妬いたりもしたけれど、

(でも、カッコいい…!)

だから、チョロい私は、フラフラっとルキの方に手を伸ばそうとして─

「セリ君?」

「!…あ、ザーラさん。こんにちは…」

「こんにちは。お仕事?」

「はい。」

現れた女性の美しさに、現実を取り戻す。

(…危なかった。仕事場で彼氏と手を繋ぐところ、だった。)

「…今日は、ルキ君と二人なのかしら?」

「あ、はい。そうで、す…」

言っている途中で恥ずかしくなる。別に、恥ずかしがるようなことではないはずなのに、今日ここまでの自分の浮かれっぷりを見透かされたようで。

(…今、絶対、顔が赤い。)

気づかれませんようにという願いは虚しく、私とルキを交互に見比べたザーラさんが─

「…あら?もしかして、セリ君、ルキ君と?…そういうこと?」

「っ!」

ザーラさんが鋭すぎる。それとも、まだまだ私の魔力が露骨過ぎるのか。

「…あの、はい。そう、です。」

「まぁ、そうなの?」

誤魔化すことも出来ずに正直に答えれば、ザーラさんがパッと笑って、

「良かった。…セリ君の想いが叶って。」

「…はい、ありがとうございます。」

居たたまれなさが極限に達したところで、ザーラさんは「仕事があるから」と去って行ってしまった。後に、未受領の依頼書を握り締めたままの私と、何故か黙り込んでしまったルキを残して。




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