上 下
79 / 174
S級試験 ▶34話

#24 王都観光、お土産を買いに

しおりを挟む
リリーの急襲に会った翌日、ルキは朝からギルド本部へと出かけて行った。昨夜のことを気にして、何度も「迷惑かけた」と謝るルキに、「ルキは悪くない」と返して、漸く、ルキを送り出すことに成功したのだけれど─

「…兄さん、いいかげん、機嫌直して。」

「…」

朝から謝るルキに、「何で?何で?どうしたの?」責めを繰り返した結果、昨夜の顛末を知った兄はかなりのショックを受けた後、完全にへそを曲げてしまった。

放置しようかと思って、「エルと買い物に行く」と言えば、黙ってついて来た兄、だけど、一言もしゃべらない。

「…だって、仕方ないじゃない。兄さん、寝てたし。」

「…」

「起こしても、起きないでしょ?」

「…」

「…駄々っ子。」

半歩前を歩く背中に向かってボソッと溢したら、兄がグルンとこちらを振り向いて、

「セリ、セリさん、聞いて?」

「…」

両腕を掴まれた。地味に痛い。

「あのね?俺は、昨日、旨い飯食って、旨い酒飲んで、仲間のS級昇級お祝いして、そりゃーもういい気分で眠りについたわけ。何なら?『もう俺だけ仲間外れにしない』って、仲間からの反省と確約も頂いた上で、安心して眠りについたわけ。」

「…」

「それが、それがだよ?朝起きてから、あれ?これ、デジャブじゃね?ってくらいの疎外感を感じてる今現在。仕方なくない?ちょっとくらい、俺、怒ってもよくない?」

「…それはもう、ごめんって言った。」

「それ!セリのその態度!明らかにメンドクサイってその態度は、ホント、どうかと思う!」

「えー…」

これ以上どうしろと言うのか。そもそも、面倒だと思ってるのは本当だし、と思ったところで、エルが「はいはい、そこまで」と仲裁に入ってくれた。

「もー、シオンも、いつまでもグダグダ言わない。折角の王都見物なんだから、ダルいことしてないで。」

「うっ…」

「セリちゃんも、お兄ちゃんのこと、もうちょっと大事にしてあげて?シオンだって、自分の知らないとこで何かあるのが心配で言ってるんだからね?」

「…はい。」

諭されて、兄にもう一度謝って、「次はなるべく起こす」と約束した。それで納得した兄が、今度は逆にテンション上がりまくり、立ち並ぶお店や商品に「あれ何?これ何?」し始めたのは、それはそれで、鬱陶しかったけれど─

それから暫くの間、観光がてら王都を歩いて、ギルドの皆へ配るお土産を探して回った。いくつか買い込んだところで、さて次はどこに?と考えて、エルに尋ねる。

「エル、…装飾品、出来れば、魔力媒介になるようなものが売っているお店はありませんか?」

「ん?セリちゃん、媒体買うの?」

「いえ、ザーラさんへのお土産に。…いいものがあれば、自分のものも買いたいですけど。」

「なるほどね?オッケー☆中央通りに、魔導師が好きそうなお店があるんだよね。そこ、連れてってあげる☆」

「ありがとうございます。」

お礼を言って、エルに連れて行ってもらったお店は、なるほど、「魔導師が好きそう」なお店だった。

「…魔女みが、凄い。」

「だな。てか、え?コレ、凄くない?どうやって建ってんの?」

魔女の帽子のようなトンガリ屋根のお店は、黒と紫を基調とした外装で、築百年は経っていそうな年季の入り具合、店自体も、ひしゃげたように大分傾いていて─

「…潰れそうで怖い。」

「ホーンテッド的なアレだな。恐怖さえも楽しもうみたいなコンセプトの?」

「何やってるの、二人とも?入んないの?」

躊躇なくお店へ入っていくエルについて、恐々と店内を覗く。そこかしこに置かれた怪しげな魔道具に、兄はあっという間に興味を引かれたようで、早速、店員の魔女さん?相手に「これ何?あれ何?」を始めた。

「セリちゃん、こっち。この辺が、装飾品。」

エルに呼ばれて、店の奥へと進む。エルの教えてくれた一角には、宝石やら鉱石やらの原石と、それで作られた装飾品の数々が。

「凄い、たくさん…」

「まぁね?媒体だけでこれだけの品ぞろえってのは、王都でもなかなか無いかな?」

「…選ぶの、大変かも。」

選択肢が多い分、悩む。いつものザーラさんの姿を思い浮かべて、ザーラさんが好きそうな石、配色で─

「…あ、すみません。」

「…」

同じ装飾品を物色中だったらしいお客さんと、伸ばした手がぶつかってしまった。慌てて手を引っ込めたけれど、

(…あれ?)

どこか、見覚えのあるブレスレットに、つい最近、目にした気がする綺麗な指先。

「…」

「…」

顔を上げて、手の持ち主の顔を、そーっと伺えば─

「…ザーラ、さん?」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

孤独な腐女子が異世界転生したので家族と幸せに暮らしたいです。

水都(みなと)
ファンタジー
★完結しました! 死んだら私も異世界転生できるかな。 転生してもやっぱり腐女子でいたい。 それからできれば今度は、家族に囲まれて暮らしてみたい…… 天涯孤独で腐女子の桜野結理(20)は、元勇者の父親に溺愛されるアリシア(6)に異世界転生! 最期の願いが叶ったのか、転生してもやっぱり腐女子。 父の同僚サディアス×父アルバートで勝手に妄想していたら、実は本当に2人は両想いで…!? ※BL要素ありますが、全年齢対象です。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人
ファンタジー
敵の攻撃によって拾った戦車ごと異世界へと飛ばされた自衛隊員の二人。 そこでは、不老の肉体と特殊な能力を得て、魔獣と呼ばれる怪物退治をするハメに。 更には奴隷を買って、遠い宇宙で戦車を強化して、どうにか帰ろうと悪戦苦闘するのであった。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

捨てられ妻ですが、ひねくれ伯爵と愛され家族を作ります

リコピン
恋愛
旧題:三原色の世界で 魔力が色として現れる異世界に転生したイリーゼ。前世の知識はあるものの、転生チートはなく、そもそも魔力はあっても魔法が存在しない。ならばと、前世の鬱屈した思いを糧に努力を続け、望んだ人生を手にしたはずのイリーゼだった。しかし、その人生は一夜にしてひっくり返ってしまう。夫に離縁され復讐を誓ったイリーゼは、夫の従兄弟である伯爵を巻き込んで賭けにでた。 シリアス―★★★★☆ コメディ―★☆☆☆☆ ラブ♡♡―★★★☆☆ ざまぁ∀―★★★☆☆ ※離婚、妊娠、出産の表現があります。

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。 その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。 本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。 リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。 しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。 なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。 竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)

異世界で婚活を ~頑張った結果、狼獣人の旦那様を手に入れたけど、なかなか安寧には程遠い~

リコピン
恋愛
前世、会社勤務のかたわら婚活に情熱を燃やしていたクロエ。生まれ変わった異世界では幼馴染の婚約者がいたものの、婚約を破棄されてしまい、またもや婚活をすることに。一風変わった集団お見合いで出会ったのは、その場に似合わぬ一匹狼風の男性。(…って本当に狼獣人!?)うっかり惚れた相手が生きる世界の違う男性だったため、番(つがい)やら発情期やらに怯え、翻弄されながらも、クロエは幸せな結婚生活を目指す。 シリアス―★☆☆☆☆ コメディ―★★★★☆ ラブ♡♡―★★★★☆ ざまぁ∀―★★☆☆☆ ※匂わす程度ですが、性的表現があるのでR15にしています。TLやラブエッチ的な表現はありません。 ※このお話に出てくる集団お見合いの風習はフィクションです。 ※四章+後日談+番外編になります。

処理中です...