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S級試験 ▶34話
#24 王都観光、お土産を買いに
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リリーの急襲に会った翌日、ルキは朝からギルド本部へと出かけて行った。昨夜のことを気にして、何度も「迷惑かけた」と謝るルキに、「ルキは悪くない」と返して、漸く、ルキを送り出すことに成功したのだけれど─
「…兄さん、いいかげん、機嫌直して。」
「…」
朝から謝るルキに、「何で?何で?どうしたの?」責めを繰り返した結果、昨夜の顛末を知った兄はかなりのショックを受けた後、完全にへそを曲げてしまった。
放置しようかと思って、「エルと買い物に行く」と言えば、黙ってついて来た兄、だけど、一言もしゃべらない。
「…だって、仕方ないじゃない。兄さん、寝てたし。」
「…」
「起こしても、起きないでしょ?」
「…」
「…駄々っ子。」
半歩前を歩く背中に向かってボソッと溢したら、兄がグルンとこちらを振り向いて、
「セリ、セリさん、聞いて?」
「…」
両腕を掴まれた。地味に痛い。
「あのね?俺は、昨日、旨い飯食って、旨い酒飲んで、仲間のS級昇級お祝いして、そりゃーもういい気分で眠りについたわけ。何なら?『もう俺だけ仲間外れにしない』って、仲間からの反省と確約も頂いた上で、安心して眠りについたわけ。」
「…」
「それが、それがだよ?朝起きてから、あれ?これ、デジャブじゃね?ってくらいの疎外感を感じてる今現在。仕方なくない?ちょっとくらい、俺、怒ってもよくない?」
「…それはもう、ごめんって言った。」
「それ!セリのその態度!明らかにメンドクサイってその態度は、ホント、どうかと思う!」
「えー…」
これ以上どうしろと言うのか。そもそも、面倒だと思ってるのは本当だし、と思ったところで、エルが「はいはい、そこまで」と仲裁に入ってくれた。
「もー、シオンも、いつまでもグダグダ言わない。折角の王都見物なんだから、ダルいことしてないで。」
「うっ…」
「セリちゃんも、お兄ちゃんのこと、もうちょっと大事にしてあげて?シオンだって、自分の知らないとこで何かあるのが心配で言ってるんだからね?」
「…はい。」
諭されて、兄にもう一度謝って、「次はなるべく起こす」と約束した。それで納得した兄が、今度は逆にテンション上がりまくり、立ち並ぶお店や商品に「あれ何?これ何?」し始めたのは、それはそれで、鬱陶しかったけれど─
それから暫くの間、観光がてら王都を歩いて、ギルドの皆へ配るお土産を探して回った。いくつか買い込んだところで、さて次はどこに?と考えて、エルに尋ねる。
「エル、…装飾品、出来れば、魔力媒介になるようなものが売っているお店はありませんか?」
「ん?セリちゃん、媒体買うの?」
「いえ、ザーラさんへのお土産に。…いいものがあれば、自分のものも買いたいですけど。」
「なるほどね?オッケー☆中央通りに、魔導師が好きそうなお店があるんだよね。そこ、連れてってあげる☆」
「ありがとうございます。」
お礼を言って、エルに連れて行ってもらったお店は、なるほど、「魔導師が好きそう」なお店だった。
「…魔女みが、凄い。」
「だな。てか、え?コレ、凄くない?どうやって建ってんの?」
魔女の帽子のようなトンガリ屋根のお店は、黒と紫を基調とした外装で、築百年は経っていそうな年季の入り具合、店自体も、ひしゃげたように大分傾いていて─
「…潰れそうで怖い。」
「ホーンテッド的なアレだな。恐怖さえも楽しもうみたいなコンセプトの?」
「何やってるの、二人とも?入んないの?」
躊躇なくお店へ入っていくエルについて、恐々と店内を覗く。そこかしこに置かれた怪しげな魔道具に、兄はあっという間に興味を引かれたようで、早速、店員の魔女さん?相手に「これ何?あれ何?」を始めた。
「セリちゃん、こっち。この辺が、装飾品。」
エルに呼ばれて、店の奥へと進む。エルの教えてくれた一角には、宝石やら鉱石やらの原石と、それで作られた装飾品の数々が。
「凄い、たくさん…」
「まぁね?媒体だけでこれだけの品ぞろえってのは、王都でもなかなか無いかな?」
「…選ぶの、大変かも。」
選択肢が多い分、悩む。いつものザーラさんの姿を思い浮かべて、ザーラさんが好きそうな石、配色で─
「…あ、すみません。」
「…」
同じ装飾品を物色中だったらしいお客さんと、伸ばした手がぶつかってしまった。慌てて手を引っ込めたけれど、
(…あれ?)
どこか、見覚えのあるブレスレットに、つい最近、目にした気がする綺麗な指先。
「…」
「…」
顔を上げて、手の持ち主の顔を、そーっと伺えば─
「…ザーラ、さん?」
「…兄さん、いいかげん、機嫌直して。」
「…」
朝から謝るルキに、「何で?何で?どうしたの?」責めを繰り返した結果、昨夜の顛末を知った兄はかなりのショックを受けた後、完全にへそを曲げてしまった。
放置しようかと思って、「エルと買い物に行く」と言えば、黙ってついて来た兄、だけど、一言もしゃべらない。
「…だって、仕方ないじゃない。兄さん、寝てたし。」
「…」
「起こしても、起きないでしょ?」
「…」
「…駄々っ子。」
半歩前を歩く背中に向かってボソッと溢したら、兄がグルンとこちらを振り向いて、
「セリ、セリさん、聞いて?」
「…」
両腕を掴まれた。地味に痛い。
「あのね?俺は、昨日、旨い飯食って、旨い酒飲んで、仲間のS級昇級お祝いして、そりゃーもういい気分で眠りについたわけ。何なら?『もう俺だけ仲間外れにしない』って、仲間からの反省と確約も頂いた上で、安心して眠りについたわけ。」
「…」
「それが、それがだよ?朝起きてから、あれ?これ、デジャブじゃね?ってくらいの疎外感を感じてる今現在。仕方なくない?ちょっとくらい、俺、怒ってもよくない?」
「…それはもう、ごめんって言った。」
「それ!セリのその態度!明らかにメンドクサイってその態度は、ホント、どうかと思う!」
「えー…」
これ以上どうしろと言うのか。そもそも、面倒だと思ってるのは本当だし、と思ったところで、エルが「はいはい、そこまで」と仲裁に入ってくれた。
「もー、シオンも、いつまでもグダグダ言わない。折角の王都見物なんだから、ダルいことしてないで。」
「うっ…」
「セリちゃんも、お兄ちゃんのこと、もうちょっと大事にしてあげて?シオンだって、自分の知らないとこで何かあるのが心配で言ってるんだからね?」
「…はい。」
諭されて、兄にもう一度謝って、「次はなるべく起こす」と約束した。それで納得した兄が、今度は逆にテンション上がりまくり、立ち並ぶお店や商品に「あれ何?これ何?」し始めたのは、それはそれで、鬱陶しかったけれど─
それから暫くの間、観光がてら王都を歩いて、ギルドの皆へ配るお土産を探して回った。いくつか買い込んだところで、さて次はどこに?と考えて、エルに尋ねる。
「エル、…装飾品、出来れば、魔力媒介になるようなものが売っているお店はありませんか?」
「ん?セリちゃん、媒体買うの?」
「いえ、ザーラさんへのお土産に。…いいものがあれば、自分のものも買いたいですけど。」
「なるほどね?オッケー☆中央通りに、魔導師が好きそうなお店があるんだよね。そこ、連れてってあげる☆」
「ありがとうございます。」
お礼を言って、エルに連れて行ってもらったお店は、なるほど、「魔導師が好きそう」なお店だった。
「…魔女みが、凄い。」
「だな。てか、え?コレ、凄くない?どうやって建ってんの?」
魔女の帽子のようなトンガリ屋根のお店は、黒と紫を基調とした外装で、築百年は経っていそうな年季の入り具合、店自体も、ひしゃげたように大分傾いていて─
「…潰れそうで怖い。」
「ホーンテッド的なアレだな。恐怖さえも楽しもうみたいなコンセプトの?」
「何やってるの、二人とも?入んないの?」
躊躇なくお店へ入っていくエルについて、恐々と店内を覗く。そこかしこに置かれた怪しげな魔道具に、兄はあっという間に興味を引かれたようで、早速、店員の魔女さん?相手に「これ何?あれ何?」を始めた。
「セリちゃん、こっち。この辺が、装飾品。」
エルに呼ばれて、店の奥へと進む。エルの教えてくれた一角には、宝石やら鉱石やらの原石と、それで作られた装飾品の数々が。
「凄い、たくさん…」
「まぁね?媒体だけでこれだけの品ぞろえってのは、王都でもなかなか無いかな?」
「…選ぶの、大変かも。」
選択肢が多い分、悩む。いつものザーラさんの姿を思い浮かべて、ザーラさんが好きそうな石、配色で─
「…あ、すみません。」
「…」
同じ装飾品を物色中だったらしいお客さんと、伸ばした手がぶつかってしまった。慌てて手を引っ込めたけれど、
(…あれ?)
どこか、見覚えのあるブレスレットに、つい最近、目にした気がする綺麗な指先。
「…」
「…」
顔を上げて、手の持ち主の顔を、そーっと伺えば─
「…ザーラ、さん?」
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