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S級試験 ▶34話
#13 言えないのは、傷ついたからではなく…
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お騒がせしてしまった周囲に頭を下げ、ルキと二人で昼食を取った。若干の居たたまれなさは感じたものの、騒ぐだけ騒いでご飯も食べずに出ていくのはちょっと…と思ってしまったから。
食事中、ずっと口数が少なかったルキが、食事を終えて店を出た途端、「セリ」と私の名を呼ぶ─
「…ごめん、悪かった。」
「?」
「ミランダに、色々、言われたろ?」
「…」
「ちゃんと見張っとくつもりだったのに、結局、全然、話聞いてなくて。アイツ、止めらんなかった。…ほんと、最悪だな、俺。」
「…ルキは、ちゃんと止めに来てくれました。」
「あー、うん。最後だけな?その前にも何か言われたんじゃねぇの?俺が気づいたの、アイツが大声出した後だからさ、止めんの遅くなった。」
「大丈夫です。気にしてません。」
「…ホントに?」
こちらの表情をうかがうルキに、頷いて返す。
確かに、言われた時はキツかったけれど、今、冷静になって考えてみれば、どれもこれも、彼女の一方的な思いから出た発言でしかない。ルキに言われたわけではないのだから、もう、気にしないと決めた。
それよりも─
「…ルキに、謝られる方が嫌です。」
「え?」
「ルキが、ミランダさんのことで私に謝るのが嫌、です。」
彼女の代わりにルキが頭を下げているみたいで、それじゃあ、ルキがミランダを「身内」として扱っていることになるから。
(…嫉妬する。)
だから、止めて欲しい。勝手な思いに、ルキがすごく困った顔をしている。
「っても、ミランダの誘いに乗ったの俺だしな。」
「誘いに乗ったのは私もです。同意しました。だから、ルキに謝られるようなことは何もありません。」
「…」
ルキが苦笑して、
「…サンキュ。」
大きな掌が、こちらの頭を撫でていった。
「…まぁ、言い訳に聞こえるだろうだけど、実際、アイツがセリにあーいう態度とるとは、俺も思ってなくてさ。」
「…」
「俺の過去話くらいは晒すんじゃねぇかとは思ってたけど、アイツ、外面は良いってか、俺ら以外には普通の態度だから、正直、ちょっと油断してた。」
ルキの懺悔みたいな言葉に頷く。きっと、本当にそうなんだと思う。私がルキのパーティメンバーじゃなくて、彼女がルキに戻ってきて欲しいと思っていなければ。
結局、ミランダはルキに「戻ってきて欲しい」と伝えられていない─
(そんな雰囲気じゃなかったし、ね…)
ルキのあの怒りに触れて、彼女も冷静ではなかったから。
「…セリ、言いたくなかったら、別にいいんだけど…」
「?」
「アイツに、なに言われた?」
「…」
心配してくれているルキ、返す言葉に迷う。
「…やっぱ、思い出すのも嫌になるようなこと、言われたか?」
「いいえ。」
首を振って、だけど、問いへの答えは返せない。答えてしまえば、ミランダのルキへの想いや、戻ってきて欲しいという彼女の願いまで伝わってしまうから。
(…敵に、塩は送りたくない。)
だから、
「…秘密です。」
利己的な思いで、口をつぐむ。
(ルキに知ってほしいなら、ミランダさんが自分で言えばいい…)
ルキに知られたくない私は、案じてくれるルキの視線に首を振るだけ。
「あー、マジかー、秘密かぁ…」
「はい。」
「そっか。…あー、やっぱ、失敗した。どう考えても、話聞いとくべきだったわ。調子乗り過ぎた。やらかした。」
苦悶?しているらしいルキに、思わず、笑ってしまう。
「調子、乗り過ぎたんですか?」
「あー、うん、まぁなー。久しぶりにテンションぶち上がってたから。」
「確かに。ルキ、はしゃいでましたね。」
「はしゃぐ…。…セリ、俺のこと見てた?」
「はい。」
「っ!だー、もう!」
「?」
叫んで、何かを振り切ったルキ。
「あー、もう、しゃーねーな。やっちったもんは。」
「はい…」
「セリは俺に甘いからな。直ぐに許すし。」
「…」
「だから、まぁ、反省して自戒ってことで。マジで、こんなこと二度と無いようにするから。」
「…はい。」
「おし。んじゃあ、宿帰って、シオン達と合流すっか。居なかったら、二人で王都見物、行くか?」
「はい!」
もう、いつものルキ。いつもの笑顔。釣られて笑って、ルキの隣を並んで歩く。
食事中、ずっと口数が少なかったルキが、食事を終えて店を出た途端、「セリ」と私の名を呼ぶ─
「…ごめん、悪かった。」
「?」
「ミランダに、色々、言われたろ?」
「…」
「ちゃんと見張っとくつもりだったのに、結局、全然、話聞いてなくて。アイツ、止めらんなかった。…ほんと、最悪だな、俺。」
「…ルキは、ちゃんと止めに来てくれました。」
「あー、うん。最後だけな?その前にも何か言われたんじゃねぇの?俺が気づいたの、アイツが大声出した後だからさ、止めんの遅くなった。」
「大丈夫です。気にしてません。」
「…ホントに?」
こちらの表情をうかがうルキに、頷いて返す。
確かに、言われた時はキツかったけれど、今、冷静になって考えてみれば、どれもこれも、彼女の一方的な思いから出た発言でしかない。ルキに言われたわけではないのだから、もう、気にしないと決めた。
それよりも─
「…ルキに、謝られる方が嫌です。」
「え?」
「ルキが、ミランダさんのことで私に謝るのが嫌、です。」
彼女の代わりにルキが頭を下げているみたいで、それじゃあ、ルキがミランダを「身内」として扱っていることになるから。
(…嫉妬する。)
だから、止めて欲しい。勝手な思いに、ルキがすごく困った顔をしている。
「っても、ミランダの誘いに乗ったの俺だしな。」
「誘いに乗ったのは私もです。同意しました。だから、ルキに謝られるようなことは何もありません。」
「…」
ルキが苦笑して、
「…サンキュ。」
大きな掌が、こちらの頭を撫でていった。
「…まぁ、言い訳に聞こえるだろうだけど、実際、アイツがセリにあーいう態度とるとは、俺も思ってなくてさ。」
「…」
「俺の過去話くらいは晒すんじゃねぇかとは思ってたけど、アイツ、外面は良いってか、俺ら以外には普通の態度だから、正直、ちょっと油断してた。」
ルキの懺悔みたいな言葉に頷く。きっと、本当にそうなんだと思う。私がルキのパーティメンバーじゃなくて、彼女がルキに戻ってきて欲しいと思っていなければ。
結局、ミランダはルキに「戻ってきて欲しい」と伝えられていない─
(そんな雰囲気じゃなかったし、ね…)
ルキのあの怒りに触れて、彼女も冷静ではなかったから。
「…セリ、言いたくなかったら、別にいいんだけど…」
「?」
「アイツに、なに言われた?」
「…」
心配してくれているルキ、返す言葉に迷う。
「…やっぱ、思い出すのも嫌になるようなこと、言われたか?」
「いいえ。」
首を振って、だけど、問いへの答えは返せない。答えてしまえば、ミランダのルキへの想いや、戻ってきて欲しいという彼女の願いまで伝わってしまうから。
(…敵に、塩は送りたくない。)
だから、
「…秘密です。」
利己的な思いで、口をつぐむ。
(ルキに知ってほしいなら、ミランダさんが自分で言えばいい…)
ルキに知られたくない私は、案じてくれるルキの視線に首を振るだけ。
「あー、マジかー、秘密かぁ…」
「はい。」
「そっか。…あー、やっぱ、失敗した。どう考えても、話聞いとくべきだったわ。調子乗り過ぎた。やらかした。」
苦悶?しているらしいルキに、思わず、笑ってしまう。
「調子、乗り過ぎたんですか?」
「あー、うん、まぁなー。久しぶりにテンションぶち上がってたから。」
「確かに。ルキ、はしゃいでましたね。」
「はしゃぐ…。…セリ、俺のこと見てた?」
「はい。」
「っ!だー、もう!」
「?」
叫んで、何かを振り切ったルキ。
「あー、もう、しゃーねーな。やっちったもんは。」
「はい…」
「セリは俺に甘いからな。直ぐに許すし。」
「…」
「だから、まぁ、反省して自戒ってことで。マジで、こんなこと二度と無いようにするから。」
「…はい。」
「おし。んじゃあ、宿帰って、シオン達と合流すっか。居なかったら、二人で王都見物、行くか?」
「はい!」
もう、いつものルキ。いつもの笑顔。釣られて笑って、ルキの隣を並んで歩く。
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