【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

文字の大きさ
上 下
65 / 174
S級試験 ▶34話

#13 言えないのは、傷ついたからではなく…

しおりを挟む
お騒がせしてしまった周囲に頭を下げ、ルキと二人で昼食を取った。若干の居たたまれなさは感じたものの、騒ぐだけ騒いでご飯も食べずに出ていくのはちょっと…と思ってしまったから。

食事中、ずっと口数が少なかったルキが、食事を終えて店を出た途端、「セリ」と私の名を呼ぶ─

「…ごめん、悪かった。」

「?」

「ミランダに、色々、言われたろ?」

「…」

「ちゃんと見張っとくつもりだったのに、結局、全然、話聞いてなくて。アイツ、止めらんなかった。…ほんと、最悪だな、俺。」

「…ルキは、ちゃんと止めに来てくれました。」

「あー、うん。最後だけな?その前にも何か言われたんじゃねぇの?俺が気づいたの、アイツが大声出した後だからさ、止めんの遅くなった。」

「大丈夫です。気にしてません。」

「…ホントに?」

こちらの表情をうかがうルキに、頷いて返す。

確かに、言われた時はキツかったけれど、今、冷静になって考えてみれば、どれもこれも、彼女の一方的な思いから出た発言でしかない。ルキに言われたわけではないのだから、もう、気にしないと決めた。

それよりも─

「…ルキに、謝られる方が嫌です。」

「え?」

「ルキが、ミランダさんのことで私に謝るのが嫌、です。」

彼女の代わりにルキが頭を下げているみたいで、それじゃあ、ルキがミランダを「身内」として扱っていることになるから。

(…嫉妬する。)

だから、止めて欲しい。勝手な思いに、ルキがすごく困った顔をしている。

「っても、ミランダの誘いに乗ったの俺だしな。」

「誘いに乗ったのは私もです。同意しました。だから、ルキに謝られるようなことは何もありません。」

「…」

ルキが苦笑して、

「…サンキュ。」

大きな掌が、こちらの頭を撫でていった。

「…まぁ、言い訳に聞こえるだろうだけど、実際、アイツがセリにあーいう態度とるとは、俺も思ってなくてさ。」

「…」

「俺の過去話くらいは晒すんじゃねぇかとは思ってたけど、アイツ、外面は良いってか、俺ら以外には普通の態度だから、正直、ちょっと油断してた。」

ルキの懺悔みたいな言葉に頷く。きっと、本当にそうなんだと思う。私がルキのパーティメンバーじゃなくて、彼女がルキに戻ってきて欲しいと思っていなければ。

結局、ミランダはルキに「戻ってきて欲しい」と伝えられていない─

(そんな雰囲気じゃなかったし、ね…)

ルキのあの怒りに触れて、彼女も冷静ではなかったから。

「…セリ、言いたくなかったら、別にいいんだけど…」

「?」

「アイツに、なに言われた?」

「…」

心配してくれているルキ、返す言葉に迷う。

「…やっぱ、思い出すのも嫌になるようなこと、言われたか?」

「いいえ。」

首を振って、だけど、問いへの答えは返せない。答えてしまえば、ミランダのルキへの想いや、戻ってきて欲しいという彼女の願いまで伝わってしまうから。

(…敵に、塩は送りたくない。)

だから、

「…秘密です。」

利己的な思いで、口をつぐむ。

(ルキに知ってほしいなら、ミランダさんが自分で言えばいい…)

ルキに知られたくない私は、案じてくれるルキの視線に首を振るだけ。

「あー、マジかー、秘密かぁ…」

「はい。」

「そっか。…あー、やっぱ、失敗した。どう考えても、話聞いとくべきだったわ。調子乗り過ぎた。やらかした。」

苦悶?しているらしいルキに、思わず、笑ってしまう。

「調子、乗り過ぎたんですか?」

「あー、うん、まぁなー。久しぶりにテンションぶち上がってたから。」

「確かに。ルキ、はしゃいでましたね。」

「はしゃぐ…。…セリ、俺のこと見てた?」

「はい。」

「っ!だー、もう!」

「?」

叫んで、何かを振り切ったルキ。

「あー、もう、しゃーねーな。やっちったもんは。」

「はい…」

「セリは俺に甘いからな。直ぐに許すし。」

「…」

「だから、まぁ、反省して自戒ってことで。マジで、こんなこと二度と無いようにするから。」

「…はい。」

「おし。んじゃあ、宿帰って、シオン達と合流すっか。居なかったら、二人で王都見物、行くか?」

「はい!」

もう、いつものルキ。いつもの笑顔。釣られて笑って、ルキの隣を並んで歩く。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

きっと幸せな異世界生活

スノウ
ファンタジー
   神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。  そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。  時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。  女神の導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?  毎日12時頃に投稿します。   ─────────────────  いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。

RD令嬢のまかないごはん

雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。 都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。 そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。 相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。 彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。 礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。 「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」 元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。 大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

処理中です...