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S級試験 ▶34話
#11 譲れない、けど、決めるのは私じゃない
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じっと、逸らされることなく見据えられた眼差しを見つめ返す。ルキとよく似た、紅い瞳を─
「ミランダさんは…」
「なに?」
「ルキに、戻ってきて欲しいんですか?」
「えーっ!?いやいや、違う違う!アタシじゃない、アタシじゃ!」
「…」
「戻ってきて欲しいと思ってるのはカッシュ!カッシュが言ってんの!アタシは、カッシュのために言ってるだけ!」
「…ミランダさんは思っていないんですか?ルキに戻ってきて欲しいって。」
「っ!…それはまぁ、アタシも、ルキとならやりやすいし、パーティとしてはルキが居てくれる方が助かるけどさー。別に、個人的に戻ってきて欲しいってわけじゃ…」
言いながら逸らされた瞳に、何となく感じるものがあった。
(だからって、『分かりました』なんて、絶対言えない。)
再びの沈黙に、ミランダのため息が落ちる。
「あー、だから、えっと、私は本当は関係ないんだけどさ、アイツら二人がガキだから。お互い意地張っちゃって、それでどうにもならなくなってんだよね。お互い、元に戻りたいと思ってるのに言えなくなってて、しょうがないから、アタシが間に入ってるって言うか…」
「…」
「…セリ君さー、何でルキがうちのパーティ抜けたか、アイツから聞いてる?」
「…いいえ。」
少しだけ、恋愛関係でこじれたとは聞いたけれど、それ以上、詳しく尋ねることはしていない。
「あー、だよね。ルキも流石に言わないか。確かに、ちょっと人には言いづらいし、アイツ、カッコつけだから。」
「…」
「うちのパーティ、リリーっていう魔導師がいて、その子とカッシュが付き合ってるんだけどさ。その子がまた、結構、トロい子で。庇護欲?っていうの?何か、守ってあげなきゃーみたいな線のほっそい子で、アタシとは正反対。」
言って、ミランダが自嘲気味に笑った。
「で、ルキのやつがさー、アイツもほっときゃいいのに、その子のことアレコレ面倒見るもんだから、カッシュがそれに嫉妬してパーティがギスギスするようになって。」
「…」
「結局、最後には大喧嘩。売り言葉に買い言葉みたいになって、ルキが飛び出してっておしまい、みたいな。…くだんないでしょ?ほんと、だからガキなんだよね。あの二人は。」
思わぬところで知ってしまったルキの脱退の経緯に、だけど、「あれ?」と思う。
(…ルキがパーティを飛び出したとして、それでそのまま帰らないって、ある、かな…?)
らしくない、と思ってしまった。そんな短慮をルキがするだろうかと考えて、ルキにだって、当然、私の知らない側面があるんだという事実に、また胸が重くなる。
「…大体さー、暁星はアタシとルキとカッシュの三人で始めたパーティだったのに。それを、カッシュがリリーみたいな女入れたせいで、引っ掻き回されて台無しにされて、ほんっと、いい迷惑。」
「…」
「あ、でも、今度、リリーがパーティ抜けることになったんだよね。それで問題はなくなるから、ルキも今なら戻ってきやすいと思わない?」
「…それは、ルキが決めることだと思います。」
「はは!確かに!まあ、もちろん、ルキにもリリーのこと伝えて、それで戻ってくるように言うよ。アタシも、ルキが戻りやすいように手伝うしね!」
笑って告げられる言葉。誤魔化せない不安が、一気に押し寄せてくる。
「セリ君に先に伝えたのは、一応、現パーティであるセリ君にも話通しておいた方がいいかなって思ったからなんだけど。…許可、もらえる?」
「私は、許可しません。したくありません。けど、決めるのはルキなので。」
精一杯の虚勢で応じれば、ミランダの顔に「困った」というような苦笑が浮かぶ。
「セリ君って、ルキのこと、好きでしょ?」
「っ!?」
言われた言葉に息をのんだ。
「ミランダさんは…」
「なに?」
「ルキに、戻ってきて欲しいんですか?」
「えーっ!?いやいや、違う違う!アタシじゃない、アタシじゃ!」
「…」
「戻ってきて欲しいと思ってるのはカッシュ!カッシュが言ってんの!アタシは、カッシュのために言ってるだけ!」
「…ミランダさんは思っていないんですか?ルキに戻ってきて欲しいって。」
「っ!…それはまぁ、アタシも、ルキとならやりやすいし、パーティとしてはルキが居てくれる方が助かるけどさー。別に、個人的に戻ってきて欲しいってわけじゃ…」
言いながら逸らされた瞳に、何となく感じるものがあった。
(だからって、『分かりました』なんて、絶対言えない。)
再びの沈黙に、ミランダのため息が落ちる。
「あー、だから、えっと、私は本当は関係ないんだけどさ、アイツら二人がガキだから。お互い意地張っちゃって、それでどうにもならなくなってんだよね。お互い、元に戻りたいと思ってるのに言えなくなってて、しょうがないから、アタシが間に入ってるって言うか…」
「…」
「…セリ君さー、何でルキがうちのパーティ抜けたか、アイツから聞いてる?」
「…いいえ。」
少しだけ、恋愛関係でこじれたとは聞いたけれど、それ以上、詳しく尋ねることはしていない。
「あー、だよね。ルキも流石に言わないか。確かに、ちょっと人には言いづらいし、アイツ、カッコつけだから。」
「…」
「うちのパーティ、リリーっていう魔導師がいて、その子とカッシュが付き合ってるんだけどさ。その子がまた、結構、トロい子で。庇護欲?っていうの?何か、守ってあげなきゃーみたいな線のほっそい子で、アタシとは正反対。」
言って、ミランダが自嘲気味に笑った。
「で、ルキのやつがさー、アイツもほっときゃいいのに、その子のことアレコレ面倒見るもんだから、カッシュがそれに嫉妬してパーティがギスギスするようになって。」
「…」
「結局、最後には大喧嘩。売り言葉に買い言葉みたいになって、ルキが飛び出してっておしまい、みたいな。…くだんないでしょ?ほんと、だからガキなんだよね。あの二人は。」
思わぬところで知ってしまったルキの脱退の経緯に、だけど、「あれ?」と思う。
(…ルキがパーティを飛び出したとして、それでそのまま帰らないって、ある、かな…?)
らしくない、と思ってしまった。そんな短慮をルキがするだろうかと考えて、ルキにだって、当然、私の知らない側面があるんだという事実に、また胸が重くなる。
「…大体さー、暁星はアタシとルキとカッシュの三人で始めたパーティだったのに。それを、カッシュがリリーみたいな女入れたせいで、引っ掻き回されて台無しにされて、ほんっと、いい迷惑。」
「…」
「あ、でも、今度、リリーがパーティ抜けることになったんだよね。それで問題はなくなるから、ルキも今なら戻ってきやすいと思わない?」
「…それは、ルキが決めることだと思います。」
「はは!確かに!まあ、もちろん、ルキにもリリーのこと伝えて、それで戻ってくるように言うよ。アタシも、ルキが戻りやすいように手伝うしね!」
笑って告げられる言葉。誤魔化せない不安が、一気に押し寄せてくる。
「セリ君に先に伝えたのは、一応、現パーティであるセリ君にも話通しておいた方がいいかなって思ったからなんだけど。…許可、もらえる?」
「私は、許可しません。したくありません。けど、決めるのはルキなので。」
精一杯の虚勢で応じれば、ミランダの顔に「困った」というような苦笑が浮かぶ。
「セリ君って、ルキのこと、好きでしょ?」
「っ!?」
言われた言葉に息をのんだ。
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