53 / 174
S級試験 ▶34話
#2 謎のイケメンの襲来、正体を邪推してみる
しおりを挟む
振り向いた先、「偉丈夫」という感じのイケメンが、大きく手を振りながらこちらに走ってきている。全身鎧を、ガッチャガチャいわせながら、満面の笑みを浮かべて。
「エル!エルドウィン!」
「っ!」
「…」
エルを、愛称ではなく本当の名前で呼んだイケメン。エルに視線を向ければ、エルはまだ固まったまま、背後を振り返ることもせずに顔を強張らせている。
「…エル?」
大丈夫なのかと尋ねる間もなく、イケメンが、直ぐそばまで近づいて来て、
「エル!久しぶりだな!」
(っ!…眩しい…)
キラッキラの笑顔で、エルの背中に向かってそう呼びかけた。
(光、…ううん、聖属性?…とにかく、眩しい。)
振り返らないエルの背中を一心に見つめるイケメンの眼差し。
(犬?犬かな?…大型犬?)
お散歩に連れて行ってくれるご主人様を待つ、期待にあふれた瞳、耳と尻尾の幻影まで見えてきた。なのに、エルは振り返らない。
その代わりに―
「…ライナート、勝手に走りだすなよ。」
「置いてかないでよー。」
「あ、ああ、すまない!」
「まぁ、お二人とも。そんなにライナート様をお責めにならないで?」
「はー?いつ、あたしらが、ライナートのこと責めたっての!?」
「あら?違いましたの?私はてっきり…」
「てっきりなんなわけー?感じ悪ーい。そうやって、すーぐ、ライナートにイイコちゃんアピしようとするー。」
(…これは、一体。)
「ライナート」と呼ばれたイケメンの後から現れた女の子四人組。キャンキャン牽制し合ってる剣士に魔導師に回復師に、服装から多分、占者かなぁ?という感じの黙ったままの女の子。全員が美少女。この場に居るということは、彼女たちも冒険者、恐らくイケメンのパーティ仲間なんだろうけれど―
(…女子率の、高さ。)
圧倒的に男性率の多い冒険者業界において、このパーティ構成は、ちょっと異常なくらい。そのちょっとびっくりなパーティの多分、中心、互いに牽制し合う女の子達がしきりに名前を出している「ライナート」は、「すまない」と一言口にした後はまた、ルキの背中を期待に満ちた目で見つめている。
(…エル?)
それに、エルが気づかないわけがない。なのに、顔を合わせたくないのは、よっぽど忌避する相手なのか。それなら、連れ出して逃げ出してしまおうかと思ったとことで聞こえた、エルの小さなため息。それから漸く、エルがイケメンの方を振り返った。
「…久しぶり、ライナート。」
「エル!ああ、本当に!久しぶりだな!」
(っ!?)
キラキラー、ピカピカーな笑顔全開のイケメン。エルに会えた喜びがこちらにまで伝わってくるような破壊力抜群の眩しさに、思わず目を細める。
(…魂が、浄化される…)
ような気がした―
「こんなところで会えるとは思っていなかった!エルは、元気にしていたか?」
「まぁ、普通にね。…そっちは?」
「俺は見ての通りだ!大した怪我もせずに、何とかやっている!」
「そう…」
(…エル?)
イケメンへの返事に、いつものエルらしさが見当たらない。元気の無さに違和感を覚えた。
(もしかして…)
エルに親しげに接してくるイケメンの態度と、彼のパーティメンバーを見て、何となく、イケメンの正体が分かってきた。
「…じゃあ、僕らもう行くね。」
一言二言の言葉で、会話を切り上げようとしたエルに、イケメンが分かりやすく顔を曇らせる。
「もう行くのか?エル、どこかで少し話でも、」
「僕ら、試験受けに来てるから。」
言い訳にもならないようなエルの言葉に、イケメンの顔がまた輝いた。
「エルも試験を受けるのか!?そうか、エルの仲間は見る目があるな!俺も、エルならきっとS級になれると、」
「あー。ごめん、言い方が悪かった。試験を受けるのはそっちの二人。僕は付き添い。」
「…そうか、それは残念だ。」
「そもそも、僕まだB級だし。…そっちは?試験、受けるの?」
「あ、ああ。そうだ。俺ともう一人…」
「そ。…じゃあ、まあ、一応、頑張って。応援はしとくよ。」
「…ありがとう。」
エルの言葉に、イケメンが嬉しそうに目尻を下げて笑う。その笑顔から、エルがフイッて顔を逸らした。その頬がちょっと赤い、気がする―
(…やっぱり。)
エルの、その凄く可愛い横顔に、イケメンの正体に確信を持った。
「エル!エルドウィン!」
「っ!」
「…」
エルを、愛称ではなく本当の名前で呼んだイケメン。エルに視線を向ければ、エルはまだ固まったまま、背後を振り返ることもせずに顔を強張らせている。
「…エル?」
大丈夫なのかと尋ねる間もなく、イケメンが、直ぐそばまで近づいて来て、
「エル!久しぶりだな!」
(っ!…眩しい…)
キラッキラの笑顔で、エルの背中に向かってそう呼びかけた。
(光、…ううん、聖属性?…とにかく、眩しい。)
振り返らないエルの背中を一心に見つめるイケメンの眼差し。
(犬?犬かな?…大型犬?)
お散歩に連れて行ってくれるご主人様を待つ、期待にあふれた瞳、耳と尻尾の幻影まで見えてきた。なのに、エルは振り返らない。
その代わりに―
「…ライナート、勝手に走りだすなよ。」
「置いてかないでよー。」
「あ、ああ、すまない!」
「まぁ、お二人とも。そんなにライナート様をお責めにならないで?」
「はー?いつ、あたしらが、ライナートのこと責めたっての!?」
「あら?違いましたの?私はてっきり…」
「てっきりなんなわけー?感じ悪ーい。そうやって、すーぐ、ライナートにイイコちゃんアピしようとするー。」
(…これは、一体。)
「ライナート」と呼ばれたイケメンの後から現れた女の子四人組。キャンキャン牽制し合ってる剣士に魔導師に回復師に、服装から多分、占者かなぁ?という感じの黙ったままの女の子。全員が美少女。この場に居るということは、彼女たちも冒険者、恐らくイケメンのパーティ仲間なんだろうけれど―
(…女子率の、高さ。)
圧倒的に男性率の多い冒険者業界において、このパーティ構成は、ちょっと異常なくらい。そのちょっとびっくりなパーティの多分、中心、互いに牽制し合う女の子達がしきりに名前を出している「ライナート」は、「すまない」と一言口にした後はまた、ルキの背中を期待に満ちた目で見つめている。
(…エル?)
それに、エルが気づかないわけがない。なのに、顔を合わせたくないのは、よっぽど忌避する相手なのか。それなら、連れ出して逃げ出してしまおうかと思ったとことで聞こえた、エルの小さなため息。それから漸く、エルがイケメンの方を振り返った。
「…久しぶり、ライナート。」
「エル!ああ、本当に!久しぶりだな!」
(っ!?)
キラキラー、ピカピカーな笑顔全開のイケメン。エルに会えた喜びがこちらにまで伝わってくるような破壊力抜群の眩しさに、思わず目を細める。
(…魂が、浄化される…)
ような気がした―
「こんなところで会えるとは思っていなかった!エルは、元気にしていたか?」
「まぁ、普通にね。…そっちは?」
「俺は見ての通りだ!大した怪我もせずに、何とかやっている!」
「そう…」
(…エル?)
イケメンへの返事に、いつものエルらしさが見当たらない。元気の無さに違和感を覚えた。
(もしかして…)
エルに親しげに接してくるイケメンの態度と、彼のパーティメンバーを見て、何となく、イケメンの正体が分かってきた。
「…じゃあ、僕らもう行くね。」
一言二言の言葉で、会話を切り上げようとしたエルに、イケメンが分かりやすく顔を曇らせる。
「もう行くのか?エル、どこかで少し話でも、」
「僕ら、試験受けに来てるから。」
言い訳にもならないようなエルの言葉に、イケメンの顔がまた輝いた。
「エルも試験を受けるのか!?そうか、エルの仲間は見る目があるな!俺も、エルならきっとS級になれると、」
「あー。ごめん、言い方が悪かった。試験を受けるのはそっちの二人。僕は付き添い。」
「…そうか、それは残念だ。」
「そもそも、僕まだB級だし。…そっちは?試験、受けるの?」
「あ、ああ。そうだ。俺ともう一人…」
「そ。…じゃあ、まあ、一応、頑張って。応援はしとくよ。」
「…ありがとう。」
エルの言葉に、イケメンが嬉しそうに目尻を下げて笑う。その笑顔から、エルがフイッて顔を逸らした。その頬がちょっと赤い、気がする―
(…やっぱり。)
エルの、その凄く可愛い横顔に、イケメンの正体に確信を持った。
8
お気に入りに追加
1,494
あなたにおすすめの小説

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。

ひめさまはおうちにかえりたい
あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

RD令嬢のまかないごはん
雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。
都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。
そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。
相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。
彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。
礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。
「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」
元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。
大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!

転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる