【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

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S級試験 ▶34話

#2 謎のイケメンの襲来、正体を邪推してみる

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振り向いた先、「偉丈夫」という感じのイケメンが、大きく手を振りながらこちらに走ってきている。全身鎧を、ガッチャガチャいわせながら、満面の笑みを浮かべて。

「エル!エルドウィン!」

「っ!」

「…」

エルを、愛称ではなく本当の名前で呼んだイケメン。エルに視線を向ければ、エルはまだ固まったまま、背後を振り返ることもせずに顔を強張らせている。

「…エル?」

大丈夫なのかと尋ねる間もなく、イケメンが、直ぐそばまで近づいて来て、

「エル!久しぶりだな!」

(っ!…眩しい…)

キラッキラの笑顔で、エルの背中に向かってそう呼びかけた。

(光、…ううん、聖属性?…とにかく、眩しい。)

振り返らないエルの背中を一心に見つめるイケメンの眼差し。

(犬?犬かな?…大型犬?)

お散歩に連れて行ってくれるご主人様を待つ、期待にあふれた瞳、耳と尻尾の幻影まで見えてきた。なのに、エルは振り返らない。

その代わりに―

「…ライナート、勝手に走りだすなよ。」

「置いてかないでよー。」

「あ、ああ、すまない!」

「まぁ、お二人とも。そんなにライナート様をお責めにならないで?」

「はー?いつ、あたしらが、ライナートのこと責めたっての!?」

「あら?違いましたの?私はてっきり…」

「てっきりなんなわけー?感じ悪ーい。そうやって、すーぐ、ライナートにイイコちゃんアピしようとするー。」

(…これは、一体。)

「ライナート」と呼ばれたイケメンの後から現れた女の子四人組。キャンキャン牽制し合ってる剣士に魔導師に回復師に、服装から多分、占者かなぁ?という感じの黙ったままの女の子。全員が美少女。この場に居るということは、彼女たちも冒険者、恐らくイケメンのパーティ仲間なんだろうけれど―

(…女子率の、高さ。)

圧倒的に男性率の多い冒険者業界において、このパーティ構成は、ちょっと異常なくらい。そのちょっとびっくりなパーティの多分、中心、互いに牽制し合う女の子達がしきりに名前を出している「ライナート」は、「すまない」と一言口にした後はまた、ルキの背中を期待に満ちた目で見つめている。

(…エル?)

それに、エルが気づかないわけがない。なのに、顔を合わせたくないのは、よっぽど忌避する相手なのか。それなら、連れ出して逃げ出してしまおうかと思ったとことで聞こえた、エルの小さなため息。それから漸く、エルがイケメンの方を振り返った。

「…久しぶり、ライナート。」

「エル!ああ、本当に!久しぶりだな!」

(っ!?)

キラキラー、ピカピカーな笑顔全開のイケメン。エルに会えた喜びがこちらにまで伝わってくるような破壊力抜群の眩しさに、思わず目を細める。

(…魂が、浄化される…)

ような気がした―

「こんなところで会えるとは思っていなかった!エルは、元気にしていたか?」

「まぁ、普通にね。…そっちは?」

「俺は見ての通りだ!大した怪我もせずに、何とかやっている!」

「そう…」

(…エル?)

イケメンへの返事に、いつものエルらしさが見当たらない。元気の無さに違和感を覚えた。

(もしかして…)

エルに親しげに接してくるイケメンの態度と、彼のパーティメンバーを見て、何となく、イケメンの正体が分かってきた。

「…じゃあ、僕らもう行くね。」

一言二言の言葉で、会話を切り上げようとしたエルに、イケメンが分かりやすく顔を曇らせる。

「もう行くのか?エル、どこかで少し話でも、」

「僕ら、試験受けに来てるから。」

言い訳にもならないようなエルの言葉に、イケメンの顔がまた輝いた。

「エルも試験を受けるのか!?そうか、エルの仲間は見る目があるな!俺も、エルならきっとS級になれると、」

「あー。ごめん、言い方が悪かった。試験を受けるのはそっちの二人。僕は付き添い。」

「…そうか、それは残念だ。」

「そもそも、僕まだB級だし。…そっちは?試験、受けるの?」

「あ、ああ。そうだ。俺ともう一人…」

「そ。…じゃあ、まあ、一応、頑張って。応援はしとくよ。」

「…ありがとう。」

エルの言葉に、イケメンが嬉しそうに目尻を下げて笑う。その笑顔から、エルがフイッて顔を逸らした。その頬がちょっと赤い、気がする―

(…やっぱり。)

エルの、その凄く可愛い横顔に、イケメンの正体に確信を持った。




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