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ロカール日常シリーズ ▶️50話

【ゴブリンの討伐】#2 指名依頼が増えました

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「…君達は、…えーっと?『黎明の星』って言うのかな?うーん、パーティランクはC、かぁ。」

「あ?なんだ?千の炎の奴らだって、Cランクだろ?だったら、同じランクの俺らが受けれねぇのは、おかしいだろうが?あ?」

「うーん。いや、だけどねぇ。申し訳ないが、僕は君達のことを全く知らないんだよねぇ?千の炎の子達のことは、それなりに知っているけれど、…君達が彼らに優っているとは到底思えないし。」

「なっ!?テメェッ!?」

(…イグナーツさんも、煽り上手。)

かつては、ロカール随一のタンクだったと伺っている。穏やかにエグいというのが、イグナーツさんの他者評価だ。

「ヴィム、落ち着け。…うちのメンバーが失礼した。ただ、我々にも我々の主張がある。それを頭ごなしに否定されては、こちらも納得できない。」

「…では、その主張とやらを聞きましょうか?」

頭に血が上ってるリーダーの剣士を抑えるようにして前に出てきたのは、眼鏡僧侶。以前、仕事をした時にはあまり話もせず、影が薄かったからよく覚えていない。眼鏡僧侶が眼鏡をクイッとした。

「今回の依頼は当初、通常の公開依頼だったはずだ。掲示板に張り出されていたのを我々も確認している。だが、それが急に非公開になったと言われ、我々には受注の権利がないと一方的に告げられた。これは、ギルド側にも落ち度、…説明責任が不足していると思われるのだが、どうだろうか?」

「まぁ、そうだねぇ…」

鬱陶しそうなイグナーツさんの顔、「面倒くさい」という副音声が─

「はー、もう、面倒だから、ことの経緯は全てすっ飛ばして結論から言うと、」

(言っちゃった。副音声じゃなかった…)

「今回のゴブリンの群れのボスは強化個体。群れの中にメイジが複数いると思われる。デバフが使える呪術師が居ないと殲滅は厳しい。以上。」

「…強化個体。なるほど、それで千の炎がゴブリンの群れごときにやられてしまったのか。」

「いいじゃねーか。強化個体くらいよー。ゴブリンだろ?いくら強化されてよーが、たかが知れてんだろ?別に呪術師なんぞいなくても、俺らの実力がありゃ、簡単に狩れる。」

「まぁ、確かに、我々ならば…」

折角のイグナーツさんのアドバイスを丸無視。「余裕余裕」とか言ってナメプかましてる何とかの星の連中。イグナーツさんの眉間に青筋が─

「…いいでしょう。そこまで自信があると言うのなら、ゴブリンの討伐はあなた方にお任せします。」

「お!んだよ、だったら最初っからそう言えよ!クッソ、無駄な時間使っちまったじゃねぇか。」

「…はい、では、こちらが依頼書になります。」

「おー。まぁ、任せとけよ。即行、終わらせてやっから。」

「…」

最後、ニッコリ笑って三人組を送り出したイグナーツさんは、三人が背を向けた途端に能面になった。

(…怖い。)

「…ああ、ごめんね、シオン君達、待たせちゃって。」

能面をすぐさま営業スマイルに切り替えたイグナーツさんがこちらの受付に戻ってきたけど、余波というか、余韻というか、まだ怖い。

「全く、ああいう連中が一番面倒なんだよね。自身を過大評価しちゃってるから、なかなかこっちの話を聞こうとしない。…一度、死んでみればいいのに。」

「…」

残念ながら、こちらの世界にも復活の呪文は存在しないし、甦生も反魂も冒険の書も無いから、つまり、死んだらそこでおしまい、なんだけど─

「…まあ、でも、彼らのおかげで、一つ助かったことはあるんだよね。」

「助かる、ですか?」

「そう。君達のパーティランク昇級のためのポイント稼ぎ。結構、時間的にギリギリだから、ここで一気に稼がせて貰おう。」

「えっと…?」

ニコリと穏やかに微笑んだイグナーツさんが、あっという間に作成した依頼書は二枚。

「ロカール初のS級冒険者誕生は、うちの支部の悲願でもあるから。」

言って、イグナーツさんが差し出した二枚の依頼書、内一つは「ゴブリンの群れ討伐依頼」、もう一枚には─




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