【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

文字の大きさ
上 下
25 / 174
ロカール日常シリーズ ▶️50話

【聖書物の回収】#3 無事、お仕事完了しました

しおりを挟む
「えー、はい。これ、えっと、…何だっけ?」

「『万物の流転し時、聖なる夜は明ける』、でしょ☆」

「そうそれ!…えっと、コークスさん、これ、依頼されてた『万物流転』です。間違いないか、確認してもらっていいですか?」

「…まさか、こんなに早く回収出来たというのか…?」

「あー、えと、はい。うちのシーフ、探索とか感知得意なんっすよね。そんで、まぁ、サクサクーっと。」

「…」

大体の居場所さえ分かれば、悪食のサンドワームを自分達を餌に釣り上げるのは簡単だった。もちろん、ワームの開口部から逃げ出せるだけのスピードを、兄が強化してくれていたおかげでもある。

後、これは兄が言わないだろうから、私が言っておく。

「…回収時に、保護魔法は既に解けかけていました。」

「っ!?」

「…表紙とか、サンドワームの胃液で少し溶けてたんです。」

「っ!何ということだっ!?」

焦って、手元の本を確かめようとする聖職者の人に、フッて笑って見せる。

「…端っこ、綺麗に修復されてますよね?」

「修復…、まさか…」

「はい。そのまさかです。うちのエルがやりました。エルは優秀なんです。ヒーラーだけじゃなくて、修復師としてもやってけるくらい、超優秀。」

「えー?セリちゃん、流石にそれはちょっと持ち上げ過ぎー☆」

「超、優、秀、です。」

「あははは。」

エルの乾いた笑いが響く。聖職者の人が、ぐぬぬってなってる。

「…訂正して下さい。この前のこと。エルは、情けなくなんてない。強いし、優しいし、格好いいし、可愛い。…それに、超優秀、です。」

「あははー、やだー、もう、シオンー、お宅のセリちゃんが、何か僕のこと泣かしにかかってるんだけどー。」

「あー、だねー。…セリ、もう、それくらいで勘弁してやって、ね?コークスさんじゃなくて、エルが涙目になってるから。」

「…でも。」

今度は私がぐぬぬってなってたら、ボソッと声が聞こえた。

「…すまなかった。」

「…よく、聞こえませんでした。大きい声で、もう一度お願いします。」

「っ!?…すまなかったっ!」

「…そんな、喧嘩腰で言われましても。」

「っ!?」

「うわぁ、セリちゃん、容赦ない☆」

「セリ、もういいだろ?コークスさん、謝ってくれてんだし、そんな追い詰めるようなこと言わないで。ほらほらー、どうどう。」

「…」

兄に腹立つ宥められ方をされるたおかげで、聖職者の人に少し冷静になれた。

「…失礼しました。」

「よーし!はい、じゃあ、これで依頼完了ー!帰ろー!」

「はーい☆」

頭を下げたら、はい終了終了って感じに。ルキに頭ポンポンされて、「帰んぞ」って優しく言われて歩きだす。

エルが、最後にクルッと聖職者さんを振り返った。

「次もまた、『深淵をのぞく四翼しよくの風』をよろしくねー☆ご指名、待ってます☆」

って、可愛く笑って手を振ってる。

「…エルは、凄いですね。」

「ん?これでも、僕、大人だからね☆」

「私は、中身が子どもなので、エルみたいにはなれないです。」

「うん、いいんじゃない?エルちゃん、そんなセリちゃんも、大好きだから☆」

「…私なら、恩きせがましく本人の前で修復してみせて、材料費も手間賃も、キッチリ頂きました。」

「やだー!セリちゃん、しっかりしてるー☆」

笑い飛ばせるエルの強さと優しさが、凄く好きだと思った。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた! もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する! とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する! ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか? 過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談 小説家になろうでも連載しています!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...