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ロカール日常シリーズ ▶️50話

【聖書物の回収】#3 無事、お仕事完了しました

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「えー、はい。これ、えっと、…何だっけ?」

「『万物の流転し時、聖なる夜は明ける』、でしょ☆」

「そうそれ!…えっと、コークスさん、これ、依頼されてた『万物流転』です。間違いないか、確認してもらっていいですか?」

「…まさか、こんなに早く回収出来たというのか…?」

「あー、えと、はい。うちのシーフ、探索とか感知得意なんっすよね。そんで、まぁ、サクサクーっと。」

「…」

大体の居場所さえ分かれば、悪食のサンドワームを自分達を餌に釣り上げるのは簡単だった。もちろん、ワームの開口部から逃げ出せるだけのスピードを、兄が強化してくれていたおかげでもある。

後、これは兄が言わないだろうから、私が言っておく。

「…回収時に、保護魔法は既に解けかけていました。」

「っ!?」

「…表紙とか、サンドワームの胃液で少し溶けてたんです。」

「っ!何ということだっ!?」

焦って、手元の本を確かめようとする聖職者の人に、フッて笑って見せる。

「…端っこ、綺麗に修復されてますよね?」

「修復…、まさか…」

「はい。そのまさかです。うちのエルがやりました。エルは優秀なんです。ヒーラーだけじゃなくて、修復師としてもやってけるくらい、超優秀。」

「えー?セリちゃん、流石にそれはちょっと持ち上げ過ぎー☆」

「超、優、秀、です。」

「あははは。」

エルの乾いた笑いが響く。聖職者の人が、ぐぬぬってなってる。

「…訂正して下さい。この前のこと。エルは、情けなくなんてない。強いし、優しいし、格好いいし、可愛い。…それに、超優秀、です。」

「あははー、やだー、もう、シオンー、お宅のセリちゃんが、何か僕のこと泣かしにかかってるんだけどー。」

「あー、だねー。…セリ、もう、それくらいで勘弁してやって、ね?コークスさんじゃなくて、エルが涙目になってるから。」

「…でも。」

今度は私がぐぬぬってなってたら、ボソッと声が聞こえた。

「…すまなかった。」

「…よく、聞こえませんでした。大きい声で、もう一度お願いします。」

「っ!?…すまなかったっ!」

「…そんな、喧嘩腰で言われましても。」

「っ!?」

「うわぁ、セリちゃん、容赦ない☆」

「セリ、もういいだろ?コークスさん、謝ってくれてんだし、そんな追い詰めるようなこと言わないで。ほらほらー、どうどう。」

「…」

兄に腹立つ宥められ方をされるたおかげで、聖職者の人に少し冷静になれた。

「…失礼しました。」

「よーし!はい、じゃあ、これで依頼完了ー!帰ろー!」

「はーい☆」

頭を下げたら、はい終了終了って感じに。ルキに頭ポンポンされて、「帰んぞ」って優しく言われて歩きだす。

エルが、最後にクルッと聖職者さんを振り返った。

「次もまた、『深淵をのぞく四翼しよくの風』をよろしくねー☆ご指名、待ってます☆」

って、可愛く笑って手を振ってる。

「…エルは、凄いですね。」

「ん?これでも、僕、大人だからね☆」

「私は、中身が子どもなので、エルみたいにはなれないです。」

「うん、いいんじゃない?エルちゃん、そんなセリちゃんも、大好きだから☆」

「…私なら、恩きせがましく本人の前で修復してみせて、材料費も手間賃も、キッチリ頂きました。」

「やだー!セリちゃん、しっかりしてるー☆」

笑い飛ばせるエルの強さと優しさが、凄く好きだと思った。



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