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ロカール日常シリーズ ▶️50話
【Fバード討伐】#5 一緒に居られる条件があるなら教えて欲しい
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「…セリ?いつまでも、そんな顔してんなって。」
「…」
(…そんな顔。…どんな顔、してるんだろう…?)
灯りの乏しい街中を、ルキと二人並んで歩く。思い出すのは、さっきの、空気読まない俺様剣士の発言。
(ルキが、満足してない、とか、そんなの…)
言わないで欲しい。思い出させないで欲しい。
揺らさないでよ、私の世界を─
「セリ?あいつらの言ってたこと、気にしてんのか?」
「…」
「まさかとは思うけど、俺がお前らじゃなくてあいつら選ぶとか、んなこと思ってねぇよな?」
「…ルキは…」
でも、だって、ルキは─
脳裏に浮かぶのは、昔の、まだ、彼が前のパーティに居た頃の姿。今と同じ優しさを持って、でも、もっと、研ぎ澄まされた刃物みたいな鋭さを持っていたルキ。
ルキは、この町のトップランカー『暁星』の一員だった─
(…それが、パーティを抜けたって聞いて、私が浮かれて「一緒に組んでみたい」なんて、言ったから。)
それを本気で受け取った兄と、空気が読めなかった自分のせいで、なし崩し的にルキとパーティを組めることになった。
(…ルキは、それでも「良い」って、言ってくれたけど。)
日頃は忘れていられる事実を無神経剣士にほじくり返されて、焦燥が募る。
(ルキが、…もし、ルキがもっと強くなりたい、もっと、強くなれるパーティに入りたいって思ってたら…)
「セリ?おーい、セリ。聞いてっか?」
「…ごめんなさい。」
「あー、だから、んな顔すんなって。…何?セリは、何をそんな不安がってんの?」
「ルキ…。ルキは、何で、私達と…」
一緒に、居てくれるの─?
「んー?いや、何でって聞かれるとアレだけど…」
「…」
「まぁ、うん、何でだろな?でも、そんなん、フィーリングとしか言いようないんじゃねぇの?セリ達と一緒に居て楽しいし、面白いし。」
「楽しい…。ルキ、私達といて、楽しいんですか?」
「いや、滅茶苦茶楽しいわ!見てわかんだろ?俺、大概、笑ってる気ぃすっけど?」
「楽しい…。」
ルキが、私達と居て、楽しい─
「…セリは?」
「え?」
「セリはどうなわけ?…そもそも、俺をパーティ入れたがったのってセリなんだろ?セリは、元から俺のこと知ってたんだよな?」
「…知って、ました。…サンドビーよりも前に、ルキに助けられたことがあります。」
兄と二人で依頼をこなしていた頃、魔物に追い詰められていた自分達を、通りすがりのルキが助けてくれた。仲間たちの制止を振り切って、何の見返りも求めずに。ただ、「大丈夫か?」って─
「…ルキは、私の命の恩人です。」
「あー、え、そっか。悪い、覚えてねぇ、かも…」
「…だと思います。」
それくらい、ルキは優しい。
何度も礼を言うこちらに、「気にするな」の一言で笑って去って行ったルキ。ルキにとっては、本当に気にする程でもない「よくあること」だったから。困っている相手を見つければ手を貸さずにはいられない。私は、そんなルキが─
「…まぁ、じゃあ、過去の俺、いい仕事したな?セリを助けられて良かった。…おかげで、今こうして一緒に居られる。」
「…」
「んで、まぁ、これからも、よろしくって思ってっから。セリはあんま悩むな、な?」
「…はい。」
頭に乗せられた掌の重み、今でも信じられないくらいの、奇跡みたいなルキとの距離。
「…」
(…そんな顔。…どんな顔、してるんだろう…?)
灯りの乏しい街中を、ルキと二人並んで歩く。思い出すのは、さっきの、空気読まない俺様剣士の発言。
(ルキが、満足してない、とか、そんなの…)
言わないで欲しい。思い出させないで欲しい。
揺らさないでよ、私の世界を─
「セリ?あいつらの言ってたこと、気にしてんのか?」
「…」
「まさかとは思うけど、俺がお前らじゃなくてあいつら選ぶとか、んなこと思ってねぇよな?」
「…ルキは…」
でも、だって、ルキは─
脳裏に浮かぶのは、昔の、まだ、彼が前のパーティに居た頃の姿。今と同じ優しさを持って、でも、もっと、研ぎ澄まされた刃物みたいな鋭さを持っていたルキ。
ルキは、この町のトップランカー『暁星』の一員だった─
(…それが、パーティを抜けたって聞いて、私が浮かれて「一緒に組んでみたい」なんて、言ったから。)
それを本気で受け取った兄と、空気が読めなかった自分のせいで、なし崩し的にルキとパーティを組めることになった。
(…ルキは、それでも「良い」って、言ってくれたけど。)
日頃は忘れていられる事実を無神経剣士にほじくり返されて、焦燥が募る。
(ルキが、…もし、ルキがもっと強くなりたい、もっと、強くなれるパーティに入りたいって思ってたら…)
「セリ?おーい、セリ。聞いてっか?」
「…ごめんなさい。」
「あー、だから、んな顔すんなって。…何?セリは、何をそんな不安がってんの?」
「ルキ…。ルキは、何で、私達と…」
一緒に、居てくれるの─?
「んー?いや、何でって聞かれるとアレだけど…」
「…」
「まぁ、うん、何でだろな?でも、そんなん、フィーリングとしか言いようないんじゃねぇの?セリ達と一緒に居て楽しいし、面白いし。」
「楽しい…。ルキ、私達といて、楽しいんですか?」
「いや、滅茶苦茶楽しいわ!見てわかんだろ?俺、大概、笑ってる気ぃすっけど?」
「楽しい…。」
ルキが、私達と居て、楽しい─
「…セリは?」
「え?」
「セリはどうなわけ?…そもそも、俺をパーティ入れたがったのってセリなんだろ?セリは、元から俺のこと知ってたんだよな?」
「…知って、ました。…サンドビーよりも前に、ルキに助けられたことがあります。」
兄と二人で依頼をこなしていた頃、魔物に追い詰められていた自分達を、通りすがりのルキが助けてくれた。仲間たちの制止を振り切って、何の見返りも求めずに。ただ、「大丈夫か?」って─
「…ルキは、私の命の恩人です。」
「あー、え、そっか。悪い、覚えてねぇ、かも…」
「…だと思います。」
それくらい、ルキは優しい。
何度も礼を言うこちらに、「気にするな」の一言で笑って去って行ったルキ。ルキにとっては、本当に気にする程でもない「よくあること」だったから。困っている相手を見つければ手を貸さずにはいられない。私は、そんなルキが─
「…まぁ、じゃあ、過去の俺、いい仕事したな?セリを助けられて良かった。…おかげで、今こうして一緒に居られる。」
「…」
「んで、まぁ、これからも、よろしくって思ってっから。セリはあんま悩むな、な?」
「…はい。」
頭に乗せられた掌の重み、今でも信じられないくらいの、奇跡みたいなルキとの距離。
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