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ロカール日常シリーズ ▶️50話
【聖職者さんの護衛】#3 寝起きドッキリ、大成功
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(遅い。流石に遅すぎる…)
寝起きが鬼のように悪い兄。朝が駄目だというわけではないが、自分のタイミングでしか目を覚まそうとしない。兄を起こすという特殊勤務は前世で諦めた。だから、いつもなら自力で起きてくるまで放っておくのだけれど。
(…依頼、見に行く時間、無くなっちゃう。)
これはもう腹を括るしかないかと、重い腰を上げて兄の部屋へと向かった。
「…兄さん、起きて。朝、というか、もう昼。」
部屋の外、全力のノックの後に、そう声をかけてみるも、返事はない。
(…想定内。)
だから、部屋の扉を開けた。何の警戒もなく、バーンと。だけど、「起きろー」と一応、言ってみるつもりだった口は、「お」の形のまま固まった。
「…」
「…ん?あー、はよ、セリ。」
「…」
「今、何時?てか、外、メッチャ明るいなぁ、おい。…あー、悪い、寝過ごした。」
「…」
「シオンは、…って、駄目だ、コレ。まだ、当分起きねぇわ。」
「…」
「俺、一回、家帰ってまた戻って来るからさ。ギルド、二人で行こうぜ。依頼確認しに。」
「…」
「あ、セリ、朝飯食ったか?まだだったら、俺、ついでに何か買ってくっから、ここで一緒に食っていい?」
「…」
「って、セリ?おーい、聞いてっかー?」
「…何で…」
何で、ルキがここに。兄さんの部屋に、上半身裸で寝ていたのか。喋りながらシャツを着こんだルキの腹筋が服の下に隠されていく様子を、マジマジとかぶり付きで見てしまった。
見てしまってから言うのはアレだけど、
「…ルキ、昨日、泊まったんですか?」
「ああ、まあ、そんなつもりは無かったんだけど。成り行きで。」
(…危なかった。)
既に出かける準備も万端の魔導師スタイルになっていて良かった。危うく、ヨレヨレ部屋着の休日スタイルをルキに見られるところだった。
(女子バレするにしても、それはスゴく嫌。というか、駄目だと思う。)
私の乙女心は守られた。
腹筋が隠されたおかげで漸くルキの顔を見ることが出来るようになったので、顔を上げる。
「…兄さんが、迷惑をかけたんじゃないんですか?」
「ん?ああ、まあ、何か、シオンのやつ、昨日は変な飲み方したせいで、グダグダになっててさ。ここまで連れ帰ったはいいんだけど、なかなか離してくんなくて。」
「…」
「仕方ないから、床で雑魚寝した。」
(…兄さん、ズルい。)
おかげで身体が痛いと笑うルキには申し訳ないが、兄が羨ましい。その兄本人は、まだ床で寝こけたまま。「ベッドに運んでやるか」というルキの優しい言葉は丁寧に辞退して、ルキを朝食に誘った。
(そのまま、寝違えるがいい…)
妹の嫉妬心により、床に取り残された兄は幸せそうな顔で眠っている。
「…セリ、いいのか?俺が朝飯食って。これ、シオンの分だろ?」
「いいんです。兄の分は起きたら作りますから。」
兄が自分で。
「そか?じゃあ、ありがたく頂きます。」
「はい。どーぞ。」
朝はコーヒー派だというルキに、日頃の十倍は丁寧にドリップしたコーヒーを出す。
(…いい。何か、新婚さんみたい。)
それもこれも、兄のはた迷惑のせいではあるけれど。
「…ルキ、兄がご迷惑をかけて、すみませんでした。あの、連れ帰ってくれてありがとうございます。」
「いいって、そんなん。気にすんな。それに、今回のこれは、シオンばっかを責めれないっつーか。まあ、あいつもショックだったんだろうな、と…」
「ショック…?」
「ああ…。…なぁ、セリ。」
「はい。」
「セリってさぁ…」
「?」
「…あー、やっぱ、いい。悪い、何でもない。そんなん、個人の嗜好、自由だもんな。」
「??」
「俺は、まあ、うん、悪くないと思う。そういうのもアリだと思うし、な。」
「???」
一人、納得したように頷くルキに、?が積み重なる。ルキの、困ったような、優しい瞳に見つめられていた。
寝起きが鬼のように悪い兄。朝が駄目だというわけではないが、自分のタイミングでしか目を覚まそうとしない。兄を起こすという特殊勤務は前世で諦めた。だから、いつもなら自力で起きてくるまで放っておくのだけれど。
(…依頼、見に行く時間、無くなっちゃう。)
これはもう腹を括るしかないかと、重い腰を上げて兄の部屋へと向かった。
「…兄さん、起きて。朝、というか、もう昼。」
部屋の外、全力のノックの後に、そう声をかけてみるも、返事はない。
(…想定内。)
だから、部屋の扉を開けた。何の警戒もなく、バーンと。だけど、「起きろー」と一応、言ってみるつもりだった口は、「お」の形のまま固まった。
「…」
「…ん?あー、はよ、セリ。」
「…」
「今、何時?てか、外、メッチャ明るいなぁ、おい。…あー、悪い、寝過ごした。」
「…」
「シオンは、…って、駄目だ、コレ。まだ、当分起きねぇわ。」
「…」
「俺、一回、家帰ってまた戻って来るからさ。ギルド、二人で行こうぜ。依頼確認しに。」
「…」
「あ、セリ、朝飯食ったか?まだだったら、俺、ついでに何か買ってくっから、ここで一緒に食っていい?」
「…」
「って、セリ?おーい、聞いてっかー?」
「…何で…」
何で、ルキがここに。兄さんの部屋に、上半身裸で寝ていたのか。喋りながらシャツを着こんだルキの腹筋が服の下に隠されていく様子を、マジマジとかぶり付きで見てしまった。
見てしまってから言うのはアレだけど、
「…ルキ、昨日、泊まったんですか?」
「ああ、まあ、そんなつもりは無かったんだけど。成り行きで。」
(…危なかった。)
既に出かける準備も万端の魔導師スタイルになっていて良かった。危うく、ヨレヨレ部屋着の休日スタイルをルキに見られるところだった。
(女子バレするにしても、それはスゴく嫌。というか、駄目だと思う。)
私の乙女心は守られた。
腹筋が隠されたおかげで漸くルキの顔を見ることが出来るようになったので、顔を上げる。
「…兄さんが、迷惑をかけたんじゃないんですか?」
「ん?ああ、まあ、何か、シオンのやつ、昨日は変な飲み方したせいで、グダグダになっててさ。ここまで連れ帰ったはいいんだけど、なかなか離してくんなくて。」
「…」
「仕方ないから、床で雑魚寝した。」
(…兄さん、ズルい。)
おかげで身体が痛いと笑うルキには申し訳ないが、兄が羨ましい。その兄本人は、まだ床で寝こけたまま。「ベッドに運んでやるか」というルキの優しい言葉は丁寧に辞退して、ルキを朝食に誘った。
(そのまま、寝違えるがいい…)
妹の嫉妬心により、床に取り残された兄は幸せそうな顔で眠っている。
「…セリ、いいのか?俺が朝飯食って。これ、シオンの分だろ?」
「いいんです。兄の分は起きたら作りますから。」
兄が自分で。
「そか?じゃあ、ありがたく頂きます。」
「はい。どーぞ。」
朝はコーヒー派だというルキに、日頃の十倍は丁寧にドリップしたコーヒーを出す。
(…いい。何か、新婚さんみたい。)
それもこれも、兄のはた迷惑のせいではあるけれど。
「…ルキ、兄がご迷惑をかけて、すみませんでした。あの、連れ帰ってくれてありがとうございます。」
「いいって、そんなん。気にすんな。それに、今回のこれは、シオンばっかを責めれないっつーか。まあ、あいつもショックだったんだろうな、と…」
「ショック…?」
「ああ…。…なぁ、セリ。」
「はい。」
「セリってさぁ…」
「?」
「…あー、やっぱ、いい。悪い、何でもない。そんなん、個人の嗜好、自由だもんな。」
「??」
「俺は、まあ、うん、悪くないと思う。そういうのもアリだと思うし、な。」
「???」
一人、納得したように頷くルキに、?が積み重なる。ルキの、困ったような、優しい瞳に見つめられていた。
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