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ロカール日常シリーズ ▶️50話

【商人さんの護衛】#2 困った時に助けてくれる人は、やっぱり格好いい

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「あははははは!速い!ヤバい!…え?これ、マジでヤバくない?」

「…兄さん、足、切れてる。」

「うっそ!?マジで!?痛い!いや、メッチャ痛いと思ってたんだよ!」

「…エル。」

「はーい☆『ヒール』!」

「あ。サンキュ。治った。復活。はぁ、マジやばかったー。」

「…あのー…」

「あ、はい。何っすか?カガトさん。」

護衛の最中、運悪く、絶滅危惧種のボロベアーのつがいに出くわしてしまった。早々に雄を釣ったルキが近くの森にトレインしている隙に、カガトさんと荷馬車を逃がすはずだったが、誤算だったのは─夫婦仲が上手くいっていなかったらしい─雌が、その場に残って兄を標的にしたこと。下手に、カガトさんや荷馬車が狙われないよう、上手く逃げ回っていたのだけれど─

「その、倒さないんですか?」

カガトさんの疑問に兄が答える。

「あー、まぁ、一応、保護対象なんで、倒すのはちょっと。」

「…でも、あの、怪我されてます、よね?」

「ああ!まぁ、こんくらいは!」

「…」

「…兄さん、バフは?」

「かけてるかけてる。かけててコレ。流石ボロベアー!ザックリいかれたわ。」

ヘラヘラ笑う兄に、カガトさんは顔面蒼白だ。

(確かに、護衛がこんなやられてたら、怖い。)

「よし!じゃあ、作戦変更!カガトさん!走りますよ!」

「は?え?」

「エル!俺ら、逃げっから、馬車頼んだ!」

「はーい☆」

「…え、私も逃げるの?」

「ほら、行くぞ!」

全員の防御力と速度を上げた兄が、カガトさんの腕を引いて走りだす。

「セリ!お前、最後尾な!やられないよう、ギリギリでかわせ!でも、やられないよーに!」

「…横暴。」

ルキがパーティーに入ってから、久しくされていなかった兄からの無茶ぶり。ため息が出た。それでも、お仕事だから─

「…ほらー、こっちー。こっちだぞー。」

いきり立つ熊の鼻先を、フラフラしながら走る。チラチラとこちらを気にしていたカガトさんも、兄の容赦なさに覚悟を決めたのか、前を向いて走りだした。全力疾走。

(…護衛対象なのに、申し訳ない。)

なるべく早めに二手に別れようと決めて、ボロベアーの前足の攻撃を避け続けた。

上手く二手に別れた後、三十分近く走り続けても諦める様子の無いボロベアーのしつこさに、流石に疲れたなと思い始めた頃、

(あ…)

「セリ!悪い、待たせた!」

「ルキ…」

「怪我ねぇなっ!?」

「うん。」

「おっし!んじゃ、このまま、俺がこいつ連れてっから!セリはシオンと合流しとけ!」

「うん…、あ。」

返事をした途端、並走していたルキが振り返ってボロベアーの鼻先を蹴った。反社会的な感じのフロントキックで。

「ルキ…」

「大丈夫だって!ボロベアーだぞ?こんくらいじゃ、ダメージ入んねぇって!」

「…」

ただし、彼女の怒りは確実にルキに向いた。

「おら!行くぞ、雑魚!お前はこっちだ!」

「…」

ボロベアーがブンブン振り回す前足をかわしながら、ルキが楽しそうに笑っている。

(…嘲り?嘲りの表情?)

そういうのも、やっぱりちょっと格好いいなと思いながら、遠ざかっていくルキの姿を見送った。




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