【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

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ロカール日常シリーズ ▶️50話

【ロックバード狩り】#1 初めましてのご挨拶

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「どうもー、バフはお任せ、呪術師のシオンです!」

「…援護射撃は任せて下さい、魔導師のセリです。」

「怪我しても大丈夫!僕が絶対に治してあげる☆ヒーラーのエルちゃんです!」

「ヘイト稼ぎが俺の仕事!シーフのルキです!」

「「「「四人合わせて、『深淵をのぞく四翼しよくの風』です!」」」」

見事なユニゾンが食堂に響き渡る。もう何回目になるかわからないほどに使い慣れたフレーズに、向かいの席の剣士さんが固まった。

「…え?あ…、ども…?…剣士のフィートです…?」

(…うん。ドン引きされてる。)

ここまでが一セット。うちのパーティーが臨時の仲間を雇う際のお約束、様式美だったりする。

「なぁ、ほんと、マジ、これ要る?毎回要る?」

「もう、ルキはいっつもグダグダうるさいなー。シオンがやりたいって言ってるんだから、やらせてあげなよ。僕は楽しいよ☆」

「…お前の順応力な。」

異世界に異文化を持ち込んだ兄のシオンに、エルは優しく、ルキは引き気味だ。ちなみにクソダサいで有名なうちのパーティー名も兄が考えた。大体、「あの穴底の」とか「あの羽だか風だかの」としか呼ばれない。そもそも、深淵をのぞいたことなんてないから看板に偽りありだし、メンバーが増えたらどうするんだろう?

「えーっと、じゃあ、フィートさん?改めまして、俺がリーダーのシオンね。で、今日の討伐依頼のお手伝いについてなんだけど、…ギルドからどこまで聞いてる?」

「あ、えと、討伐内容までは。ただ、実力あるパーティーだから、勉強してこい、としか…」

「おけおけ、了解。じゃあ、簡単に説明するね?えー、まず、今日は、カルドの森に住みついちゃったロックバード狩りに行きます。」

「ロッ!?ロックバード!?えっ!?いや、俺、無理です!俺まだF級で!」

「大丈夫大丈夫。俺がバフとかバンバンかけちゃうし、ルキがタゲ取りに行ってくれるから、フィートさんはこう、やつの足元をチクチクしといてくれれば、」

「無理ですって!死にます!絶対、死にます!」

「大丈夫大丈夫!あ、でも、まぁ、そうだね?実際、やってみないと分かんないか。じゃ、早速、出発しよう!はい、しゅっぱーつ!」

「しゅっぱーつ☆」

「えっ!?」

元気いっぱい立ち上がった兄とエルを見上げて、フィートさんの顔面が蒼白になった。

(…どうしよう?)

コミュニケーションに難ありの私では、この絶望に打ちひしがられた若者をどうすることも─

「…あんた、剣士なんだよな?武器、なに?なに使ってんの?」

「あ…、えっと、…ルキさん?」

「ああ。よろしくな。…俺さ、双剣使ってんだけど…」

言って、ルキが自分の武器をフィートさんに見せびらかしている。

「こう、リーチがな。どうしても、足んなくてさ。タゲ取るくらいは出来んだけど、ロックバードの足元に届かないわけ。」

「は、はぁ…?」

あまり、ルキの言葉を理解できていない様子のフィートさんに、横から口をはさんだ。

「…今回、討伐と同時にロックバードの羽根を納品しようと考えているんです。ですから、足元だけを狙う。私の魔法攻撃では羽根を傷つけてしまいかねないので、フィートさんの協力が必要なんです。」

「…いや、でも、俺、本当に。」

「ああ、まぁ、お前の心配分かるけど。一応、あれでうちのリーダー優秀だからさ、まぁ、ちょっと付き合ってくれよ。」

「…」

最後、押し付け気味にフィートさんと肩を組んで食堂を後にするルキ。フィートさんは、何も言えなくなってしまった。

(…見た目的には、ルキが一番怖いから。)

燃えるような赤髪をツンツンに立て、血のように真っ赤な瞳は常に好戦的。目つきが悪いとも言える。

(…ヤンキー、前世でいうところのヤンキー。)

だけど─

(…良いなぁ、フィートさん。)

ルキの腕が回った肩が羨ましい。私は、そんなルキのことが好きだったりする。




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