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第二章 嫁入りと恋の季節
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「…」
「…」
「…ボルド、マリーヌさんのお店って、…何のお店?」
「…」
「…なるほど?」
十五歳には、もしくは「妻」という存在には言えないお店、という解釈でよさそうだ。必死に目を合わすまいとするボルドの分かりやす過ぎる態度に、逆に確信してしまった。
(まあ、薄々はね…?)
彼女達の装い、発言の内容、私に対する敵意からも、そういう「女」を匂わすものはあったから。でもだとしたら、
(マリーヌ、そうっとう、イイ性格してるよね!?)
こちらに友好的な態度を見せていたから、コロッと騙されて、油断しきっていた。それを、最後にあの発言。あんなの、あんなの―
「滅茶苦茶気になるー!!『また』って何!?『また』って!?」
「クロエ、マリーヌのあれは、その、仕事で、」
「いやー!!ボルド!言わないで!言っちゃダメ!聞きたくない!ぜーったい、聞きたくないから!!」
「…」
地団駄を踏む五歳も年上の女をどうしていいのかわからず、オロオロするボルドには悪いが、もう、ほんっとう、無理なのだ。
(ムカムカする!イライラする!)
それは、ユーグだって立派な成人男子なのだ。しかも、世界一のイケメン。女が放っておくはずがない。今まで付き合った女なんて星の数ほど居るに決まってる。そういう意味で言えば、マリーヌ達は未だ、個人的なお付き合いではない分、少しはマシ、…マシ、なはずー
(あ、駄目だ…)
ドロドロしたものが込み上げてくる。吐きそうだ。ユーグに愛され、ユーグに大切にされた誰か。そんな人がもし目の前に現れたら、正気じゃいられなくなる。
(って、思っちゃう時点で、もう、結構、ヤバいかも…)
考えて、落ち込んだ。
ユーグの過去、彼が何を思い、何を選択して、何をして生きてきたのか。そんなの、ユーグの勝手じゃないか。そういうの全部の積み重ねで出来上がったユーグに、私はあの瞬間一目惚れしたのだから。彼の過去に勝手に嫉妬して落ち込むなんて、本当、本当、間違ってる。
(そうだよ。私だって、形だけとは言え婚約してた過去があるんだし。)
しかもそれを伝え忘れていた私を、ユーグはあんなに優しく許してくれたじゃないか。
「…ごめんね、ボルド。掃除、続きしよ?」
「…」
箒を掴んだ手を必死に動かす。
考えてしまわないように。考えても答えなんて出ない、ただ、落ち込むだけだとわかっているから。だから、今は何も考えない。これ以上は、もう何もー
「っ!やっぱ、無理ー!!」
「ク、クロエ!?」
(無理だよ無理!そんなの絶対無理!ムカつく!嫉妬する!ドロッドロだよ!)
「っ、だ、だって、私っ…」
(ユーグと、何もしてないー!!)
「クロエ、床、汚い。立って…」
(そうだよ!エ、エッチとか、その前に、キス、キスすらしてないし!!)
そんなの、過去の女に嫉妬しまくり、羨ましくてしょうがないに決まってる。だからせめて、手を出してくれないのなら、別の何かで彼の気持ちを知りたい。せめてー
「クロエ、手。」
「好きって言って欲しい!!」
ボルドの言葉に叫んだ私の声が重なって、目の前の大きな手が固まった。「あ、ごめん」とボルドに謝ろうとしたところで聞こえた、二つの声。
「え?何なの、この状況。」
「ボルド、お前、団長の女、護衛してたんじゃねぇーの?」
いぶかしむような、からかうような二人組の登場に、ノロノロと身体を起こして立ち向かう。どうやら、今日は千客万来らしい。
「…」
「…ボルド、マリーヌさんのお店って、…何のお店?」
「…」
「…なるほど?」
十五歳には、もしくは「妻」という存在には言えないお店、という解釈でよさそうだ。必死に目を合わすまいとするボルドの分かりやす過ぎる態度に、逆に確信してしまった。
(まあ、薄々はね…?)
彼女達の装い、発言の内容、私に対する敵意からも、そういう「女」を匂わすものはあったから。でもだとしたら、
(マリーヌ、そうっとう、イイ性格してるよね!?)
こちらに友好的な態度を見せていたから、コロッと騙されて、油断しきっていた。それを、最後にあの発言。あんなの、あんなの―
「滅茶苦茶気になるー!!『また』って何!?『また』って!?」
「クロエ、マリーヌのあれは、その、仕事で、」
「いやー!!ボルド!言わないで!言っちゃダメ!聞きたくない!ぜーったい、聞きたくないから!!」
「…」
地団駄を踏む五歳も年上の女をどうしていいのかわからず、オロオロするボルドには悪いが、もう、ほんっとう、無理なのだ。
(ムカムカする!イライラする!)
それは、ユーグだって立派な成人男子なのだ。しかも、世界一のイケメン。女が放っておくはずがない。今まで付き合った女なんて星の数ほど居るに決まってる。そういう意味で言えば、マリーヌ達は未だ、個人的なお付き合いではない分、少しはマシ、…マシ、なはずー
(あ、駄目だ…)
ドロドロしたものが込み上げてくる。吐きそうだ。ユーグに愛され、ユーグに大切にされた誰か。そんな人がもし目の前に現れたら、正気じゃいられなくなる。
(って、思っちゃう時点で、もう、結構、ヤバいかも…)
考えて、落ち込んだ。
ユーグの過去、彼が何を思い、何を選択して、何をして生きてきたのか。そんなの、ユーグの勝手じゃないか。そういうの全部の積み重ねで出来上がったユーグに、私はあの瞬間一目惚れしたのだから。彼の過去に勝手に嫉妬して落ち込むなんて、本当、本当、間違ってる。
(そうだよ。私だって、形だけとは言え婚約してた過去があるんだし。)
しかもそれを伝え忘れていた私を、ユーグはあんなに優しく許してくれたじゃないか。
「…ごめんね、ボルド。掃除、続きしよ?」
「…」
箒を掴んだ手を必死に動かす。
考えてしまわないように。考えても答えなんて出ない、ただ、落ち込むだけだとわかっているから。だから、今は何も考えない。これ以上は、もう何もー
「っ!やっぱ、無理ー!!」
「ク、クロエ!?」
(無理だよ無理!そんなの絶対無理!ムカつく!嫉妬する!ドロッドロだよ!)
「っ、だ、だって、私っ…」
(ユーグと、何もしてないー!!)
「クロエ、床、汚い。立って…」
(そうだよ!エ、エッチとか、その前に、キス、キスすらしてないし!!)
そんなの、過去の女に嫉妬しまくり、羨ましくてしょうがないに決まってる。だからせめて、手を出してくれないのなら、別の何かで彼の気持ちを知りたい。せめてー
「クロエ、手。」
「好きって言って欲しい!!」
ボルドの言葉に叫んだ私の声が重なって、目の前の大きな手が固まった。「あ、ごめん」とボルドに謝ろうとしたところで聞こえた、二つの声。
「え?何なの、この状況。」
「ボルド、お前、団長の女、護衛してたんじゃねぇーの?」
いぶかしむような、からかうような二人組の登場に、ノロノロと身体を起こして立ち向かう。どうやら、今日は千客万来らしい。
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