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第一章 集団お見合いと一目惚れ
1-3
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「え!?え!?アル!?何で!?」
「ずっとキアラが好きだった!僕と結婚して欲しい!」
「ウソ!?」
「何で?」と「ウソ」しか言えなくなったキアラと、彼女に向かって花を差し出したまま微動だにしないアルの姿をニヤニヤと眺める。
アルが手にしているのはヴィオレの花。元々は、生花で飾り立てたガランテの中に一本だけ差したこの花を、これだと思った女性に手渡すことで想いを伝える求婚の花。それを握る彼の手が僅かに震えているのが傍目にもわかる。
アルとヴィオレを交互に見つめるキアラは今までに無いほどの動揺を見せ、ウロウロと視線を彷徨わせていたが、
「クロエは、知ってたの…?」
「うん。」
「!何で言ってくれなかったの!?」
突然向けられた視線にも、つのる声にも、自然と口元が緩んでしまう。
「そんなの、アルから直接聞いた方がいいでしょう?」
「!?でも!だけど!」
「妻乞いを楽しみにしてるキアラに行かせてあげたいけど、他の人にかっさらわれるのは嫌だから、ここで足止めしといてって頼まれたんだ。」
「!?」
私とアルと。忙しなく交互に向けられる視線を受け止めて―
「じゃあ、『後はお若いお二人で』?」
「え!?」
「協力頼まれたのはここまでだから。ちゃんと二人で話すんだよ。」
「クロエ!」
「ちょっと」とか「待って」とか呼び止める声にヒラヒラと手を振って、アルには一言、頑張れと声援を送って、広場の外へと歩きだす。村でも比較的歳の近い妹分と弟分。想いの質は違っても、互いが大事に思い合っているのは知っているから。
「上手くいくといいなぁ。」
そんなことを口にして、自然と緩んでしまう口元を引き締める。広場全体、街全体がソワソワ浮かれた雰囲気とはいえ、流石に一人ヘラヘラ笑う女は危なすぎる。
そんなことを考えながら、広場の外縁―妻乞いの場所取りとしてはいまいちな場所―に立ち並ぶガランテを、何とはなしに冷やかしながら、宿に向かって歩を進めていると、
「?」
周囲の、空気が変わった―
男性陣の、自己アピールに張り上げる声や通りすぎる女性を引き留める声も、遠目に―或いは近づきながら―ヒソヒソ、クスクスと笑いさざめく女性達の声も。潮が引くように消えていって―
シンと静まりかえる周囲の視線が一点に向けられる。その先を追えば、
「!?」
大通りから広場へと向かってくる一人の男性。青年、だけど、周囲の男性陣より一回り程は年上に見える。遠目にもわかる鍛え上げられた肉体は、それだけで他を威圧するには充分。でも、それよりも、周囲をこれだけ沈黙させてしまっているのは彼がその背に担ぐもの。
彼が広場へと向かって来ることや、飾り気が無いとはいえ一応の体裁を保っていることを考えれば、ガランテで間違いないだろう、彼の担ぐソレは、だけど―
「…お葬式…?」
思わず前世の記憶が飛び出してくる程に奇抜な彼の花輪は、華やかさとは一切無縁の茶色一色で統一されていた。
「ずっとキアラが好きだった!僕と結婚して欲しい!」
「ウソ!?」
「何で?」と「ウソ」しか言えなくなったキアラと、彼女に向かって花を差し出したまま微動だにしないアルの姿をニヤニヤと眺める。
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「クロエは、知ってたの…?」
「うん。」
「!何で言ってくれなかったの!?」
突然向けられた視線にも、つのる声にも、自然と口元が緩んでしまう。
「そんなの、アルから直接聞いた方がいいでしょう?」
「!?でも!だけど!」
「妻乞いを楽しみにしてるキアラに行かせてあげたいけど、他の人にかっさらわれるのは嫌だから、ここで足止めしといてって頼まれたんだ。」
「!?」
私とアルと。忙しなく交互に向けられる視線を受け止めて―
「じゃあ、『後はお若いお二人で』?」
「え!?」
「協力頼まれたのはここまでだから。ちゃんと二人で話すんだよ。」
「クロエ!」
「ちょっと」とか「待って」とか呼び止める声にヒラヒラと手を振って、アルには一言、頑張れと声援を送って、広場の外へと歩きだす。村でも比較的歳の近い妹分と弟分。想いの質は違っても、互いが大事に思い合っているのは知っているから。
「上手くいくといいなぁ。」
そんなことを口にして、自然と緩んでしまう口元を引き締める。広場全体、街全体がソワソワ浮かれた雰囲気とはいえ、流石に一人ヘラヘラ笑う女は危なすぎる。
そんなことを考えながら、広場の外縁―妻乞いの場所取りとしてはいまいちな場所―に立ち並ぶガランテを、何とはなしに冷やかしながら、宿に向かって歩を進めていると、
「?」
周囲の、空気が変わった―
男性陣の、自己アピールに張り上げる声や通りすぎる女性を引き留める声も、遠目に―或いは近づきながら―ヒソヒソ、クスクスと笑いさざめく女性達の声も。潮が引くように消えていって―
シンと静まりかえる周囲の視線が一点に向けられる。その先を追えば、
「!?」
大通りから広場へと向かってくる一人の男性。青年、だけど、周囲の男性陣より一回り程は年上に見える。遠目にもわかる鍛え上げられた肉体は、それだけで他を威圧するには充分。でも、それよりも、周囲をこれだけ沈黙させてしまっているのは彼がその背に担ぐもの。
彼が広場へと向かって来ることや、飾り気が無いとはいえ一応の体裁を保っていることを考えれば、ガランテで間違いないだろう、彼の担ぐソレは、だけど―
「…お葬式…?」
思わず前世の記憶が飛び出してくる程に奇抜な彼の花輪は、華やかさとは一切無縁の茶色一色で統一されていた。
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