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第三章(最終章)
4-2.
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4-2.
準決勝の相手は昨年の準優勝者、ラギアスに決勝で敗れた男。ラギアスへの雪辱を果たすため、この一年腕を磨き続けて来た。というのを、観客席で隣になった見ず知らずの男に解説を受けた。
彼によれば、対戦相手は帝国軍でも三本の指に入る実力者で、剣、魔術ともに卓越した使い手なのだそうだ。
「去年までのラギアス様なら、それでもぶっちぎりで優勝だったんだろうがなあ」
隣の男の言葉に、周囲から賛同の声があがる。
「やっぱ、あの噂は本当なのかねえ。女に腑抜けになっちまってるって」
「剣の腕はともかく、魔術がからっきしになっちまってるもんなあ」
魔力付与に必要なのは、魔力量そのものもだが、それを剣に無駄なくのせられるかの操作技術も必要となってくる。鍛練を怠れば、途端に使い物にならなくなってしまう類いのものなのだ。
「二回戦まではともかくよ、こっからは魔術無しじゃあ厳しいだろう」
「…それでも、ラギアスは勝つ」
ラギアスへの散々な評価に、思わず言葉が口をついた。
「あー。あんたラギアス様を応援してんのかい?確かにいい男だし、女に人気あるもんなあ。…いや、あの人は男からの人気も高いな」
「人気はわからんが、実力は確かだ。ラギアスなら、剣一本で優勝してみせる」
「へえ」
男の視線が、改めてというようにこちらを眺める。
「そういや、あんたラギアス様と同じ制服だな。どこの軍だい?」
「ダーマンドル、北の辺境領軍だ」
「ほお!そりゃ!」
周囲からも感嘆の声があがる。北の勇、北方領軍は武に名高い。帝都においてもその勇名は変わらない。
「じゃあ、あんたは本気でラギアス様の優勝を信じてんだな?」
「当然だ。見てみろ、ラギアスは全く圧されていないだろう?」
己の言葉に、皆の関心が試合へと戻る。
「剣だけと言うが、彼がその剣にどれだけの心血を注いでいるかを私は知っている」
一気に攻勢を仕掛けたラギアスの怒涛の斬撃が、相手を追い詰める。魔力ののらない、しかし跳ね返すことの出来ない重い一撃が重なる。
「それに、」
対戦相手の剣が弾かれ、喉元にラギアスの剣が突き付けられる。
「魔力が無くとも、剣一つで人はあそこまで強くなれる。彼はそれを証明してみせてくれただろう?」
準決勝の相手は昨年の準優勝者、ラギアスに決勝で敗れた男。ラギアスへの雪辱を果たすため、この一年腕を磨き続けて来た。というのを、観客席で隣になった見ず知らずの男に解説を受けた。
彼によれば、対戦相手は帝国軍でも三本の指に入る実力者で、剣、魔術ともに卓越した使い手なのだそうだ。
「去年までのラギアス様なら、それでもぶっちぎりで優勝だったんだろうがなあ」
隣の男の言葉に、周囲から賛同の声があがる。
「やっぱ、あの噂は本当なのかねえ。女に腑抜けになっちまってるって」
「剣の腕はともかく、魔術がからっきしになっちまってるもんなあ」
魔力付与に必要なのは、魔力量そのものもだが、それを剣に無駄なくのせられるかの操作技術も必要となってくる。鍛練を怠れば、途端に使い物にならなくなってしまう類いのものなのだ。
「二回戦まではともかくよ、こっからは魔術無しじゃあ厳しいだろう」
「…それでも、ラギアスは勝つ」
ラギアスへの散々な評価に、思わず言葉が口をついた。
「あー。あんたラギアス様を応援してんのかい?確かにいい男だし、女に人気あるもんなあ。…いや、あの人は男からの人気も高いな」
「人気はわからんが、実力は確かだ。ラギアスなら、剣一本で優勝してみせる」
「へえ」
男の視線が、改めてというようにこちらを眺める。
「そういや、あんたラギアス様と同じ制服だな。どこの軍だい?」
「ダーマンドル、北の辺境領軍だ」
「ほお!そりゃ!」
周囲からも感嘆の声があがる。北の勇、北方領軍は武に名高い。帝都においてもその勇名は変わらない。
「じゃあ、あんたは本気でラギアス様の優勝を信じてんだな?」
「当然だ。見てみろ、ラギアスは全く圧されていないだろう?」
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「それに、」
対戦相手の剣が弾かれ、喉元にラギアスの剣が突き付けられる。
「魔力が無くとも、剣一つで人はあそこまで強くなれる。彼はそれを証明してみせてくれただろう?」
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