辺境の娘 英雄の娘

リコピン

文字の大きさ
上 下
51 / 74
第三章(最終章)

4-2.

しおりを挟む
4-2.

準決勝の相手は昨年の準優勝者、ラギアスに決勝で敗れた男。ラギアスへの雪辱を果たすため、この一年腕を磨き続けて来た。というのを、観客席で隣になった見ず知らずの男に解説を受けた。

彼によれば、対戦相手は帝国軍でも三本の指に入る実力者で、剣、魔術ともに卓越した使い手なのだそうだ。

「去年までのラギアス様なら、それでもぶっちぎりで優勝だったんだろうがなあ」

隣の男の言葉に、周囲から賛同の声があがる。

「やっぱ、あの噂は本当なのかねえ。女に腑抜けになっちまってるって」

「剣の腕はともかく、魔術がからっきしになっちまってるもんなあ」

魔力付与に必要なのは、魔力量そのものもだが、それを剣に無駄なくのせられるかの操作技術も必要となってくる。鍛練を怠れば、途端に使い物にならなくなってしまう類いのものなのだ。

「二回戦まではともかくよ、こっからは魔術無しじゃあ厳しいだろう」

「…それでも、ラギアスは勝つ」

ラギアスへの散々な評価に、思わず言葉が口をついた。

「あー。あんたラギアス様を応援してんのかい?確かにいい男だし、女に人気あるもんなあ。…いや、あの人は男からの人気も高いな」

「人気はわからんが、実力は確かだ。ラギアスなら、剣一本で優勝してみせる」

「へえ」

男の視線が、改めてというようにこちらを眺める。

「そういや、あんたラギアス様と同じ制服だな。どこの軍だい?」

「ダーマンドル、北の辺境領軍だ」

「ほお!そりゃ!」

周囲からも感嘆の声があがる。北の勇、北方領軍は武に名高い。帝都においてもその勇名は変わらない。

「じゃあ、あんたは本気でラギアス様の優勝を信じてんだな?」

「当然だ。見てみろ、ラギアスは全くされていないだろう?」

己の言葉に、皆の関心が試合へと戻る。

「剣だけと言うが、彼がその剣にどれだけの心血を注いでいるかを私は知っている」

一気に攻勢を仕掛けたラギアスの怒涛の斬撃が、相手を追い詰める。魔力ののらない、しかし跳ね返すことの出来ない重い一撃が重なる。

「それに、」

対戦相手の剣が弾かれ、喉元にラギアスの剣が突き付けられる。

「魔力が無くとも、剣一つで人はあそこまで強くなれる。彼はそれを証明してみせてくれただろう?」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。 時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。 「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」 「ほう?」 これは、ルリアと義理の家族の物語。 ※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。 ※同じ話を別視点でしている場合があります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...