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第一章 追放と告白

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「…そんな、追放だなんて。嘘でしょう?」

アンベル魔法学園の第三研究室、放課後の西日の差すその部屋に、メリルの唖然とした呟きが零れ落ちた。メリルの前に立つのは四人の男女。つい先ほどまで、メリルが仲間だと信じていた人達。彼らに突き付けられた言葉に、メリルは堪えきれない痛みを感じて唇を噛んだ。

ここで泣いては駄目だ。溢れそうになる涙を押し込めて、メリルはパーティーのリーダーであるキーガンの黒の瞳を見つめる。同じ研究室に所属して三年、初めて出会った一年次の頃からずっと共に勉学に励んで来た彼なら、他の三人をとりなしてくれるかもしれない。

「キーガン、お願い。私……!」

「うるせぇ。しゃべんなって言っただろ?メリル、本当、お前、自分がしゃべるばっかで、人の話聞かねぇのな?」

「っ!?」

メリルの胸にキーガンの言葉が深く突き刺さる。自分がしゃべるばかり。決してそんなつもりはなかった。けれど、「もし」とメリルは怯えた。もしも今まで、皆にそう思われていたのだとしたら。そう考えると、メリルはそれ以上、口を開くことが出来なくなった。

キーガンがため息とともに自身の赤い髪をクシャリとかきあげる。その横で、彼に寄り添うように立つ少女が口を開いた。

「キーガン先輩、そんなにキツい言い方をしなくても」

場をとりなそうとする優しい声。パーティの最年少であるロッテの言葉に、メリルは彼女に縋る眼差しを向けた。メリルと視線の合ったロッテの碧色の瞳が曇り、髪色と同じ金の眉尻が困ったように下げられる。

「メリル先輩、ごめんなさい。私はこのままでも良いと思うんです。今まで通りの五人パーティで。ですけど……」

言い淀んだロッテの言葉に被せるように、ロッテの隣に立つもう一人の少女が口を開いた。

「ロッテちゃん、やっさしー。けど、駄目だよー?ここは、キーガンに任せよ?ね?」

そう言ってロッテの肩に手を置き、彼女を制止したベルタ。彼女とメリルは一年の頃から同じ錬金クラスに所属している。メリルにとって、ベルタはたった一人の親友とも呼べる存在だ。なのに、今、ベルタの黒の瞳はメリルを見ようともしない。

「ベルタの言う通りだよ」

彼女の言葉を、パーティのまとめ役であるエリアスが肯定した。常に冷静沈着な彼の茶色の瞳が、煩わしそうにメリルを一瞥する。エリアスの視線が、理解を求めるようにロッテへと向けられた。

「メリルには今まで散々、忠告してきたんだ。それで改善されなかったんだから、もうここで引導を渡すしかない」

エリアスの言葉に、ロッテは益々困った顔をする。けれど、自身よりも年上である彼らに、それ以上、何かを言うことはなかった。

「つーわけだから、お前は俺らのパーティから外す」

キーガンに告げられた言葉に、メリルの顔が絶望に染まる。そんなメリルの反応に構うことなく、キーガンは言葉を続けた。

「研究室にももう来るなよ。二度と俺らの前に現れんな」

今日まで共に過ごした時間を否定され、メリルは動けない。動かなくなったメリルに舌打ちしたキーガンが、メリルの背中を押した。

(何か、何か言わなくちゃ……)

このままでは研究室もパーティも追い出され、独りぼっちになってしまう。けれど、メリルが何かを言う前に、メリルの身体は研究室の外へと押し出されてしまった。

メリルの背後、ドアの閉まる音が聞こえた。




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