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河の流れのように
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民子は、車が見えなくなるまで玄関先で見送り・・・
そのまま黙って自宅ドアを開けて、リビングに戻った。
「ふうううゥゥゥ・・・・・・・・・」
安堵と達成感?なのか、自然と大きなため息が漏れた。
彼女達が去った後に残されたもの・・・
それは何だったのだろうか?
虚無。
民子はしばし呆然と立ちすくみ、そしてその場にしゃがみこんで惚けてしまった。
「終わった・・・・終わったのよね、なんとか無事お披露目は乗り越えたのよね?
今日のお茶会は成功したのよ・・・・・ね?」
ポツリと力なく独り言を呟いた。
しばらく抜け殻のように宙を見つめていたが・・・・
ふいに鳴り響いた電話のベルで我に返った。
ルルルルル・・・・・・
「はい、多田野でございます」
いつもの民子に戻り受話器をとると、それは姑の松子であった。
「あらお義母さん、先日は沢庵ご馳走さまでした。
え?沢庵要るか?って・・・・・あの・・・・つい先日いただきましたけど、ごっそりと。
はい、それはもう冷蔵庫からはみ出るくらいに・・・・はあ」
民子はいぶかしんだ。
姑まで自分をからかうのか・・・・と。
「もう郵便で送ったって・・・・あの!お義母さん!あの・・・」
一方的にそう告げられ、電話を切られてしまった民子はパニックに陥りそうだった。
「もう~何よ~みんなして、自分勝手なんだからっ!」
そうこうしているうちに、一年生の長男浩太が学校から帰ってきた。
「ただいま~」
「あら早かったわね。今日五時間だったのね?
あのね浩太・・・・おばあちゃんまた沢庵送ってくれたんだって。
どうする?まだ食べられる?そんなにたくさん」
民子はなんとなくだが、浩太に解決を求めてみた。
すると浩太は事も無げに答えたのだ。
「ああ・・・・仕方ないでしょ。おばあちゃんボケてるんだから。
お父さんがしばらくは秘密だぞって言ってたけど、おばあちゃん一人暮らしできないから、そのうち、僕んちに来るんだってね。
僕いやだな~おばあちゃんと暮らすの、同じ話ばっかりするんだもん。
それにゲップするしおならするし・・・
ま、いっか、僕時々おばあちゃんからおこづかいもらえるなら、それでいいや。
じゃ、遊びに行ってくるね~」
民子が絶句していると・・・・続けて娘の結衣が帰宅した。
「ただいま~」
「あ、結衣おかえり。あのね結衣!お父さん何か言ってた?おばあちゃんのことで・・・・・」
真相を確かめるべく民子はすかさず結衣を呼び止めた。
「何?これから麻紀ちゃんちに遊びいくから忙しいの。後でにして」
結衣は煙たそうに玄関を出て行こうとした。
「え?麻紀ちゃんて他のクラスの?
月ちゃんは?眞里亜ちゃんや千尋ちゃんとは遊ばないの?」
「まさか!あの子たちとなんかもうずっと遊んでないよ。面白くないんだよね~話が噛み合わなくて。幸ちゃんはずっと休んでるしさ。
疲れるンだわ、ああいう家庭のお嬢様たちって・・・・
ま、どうせあの子たち、そのうち中学お受験するから、うちらと別世界に行っちゃうしね。
もういいんだよね。
じゃね。行ってくる。五時に帰るから」
そういって結衣も浩太も、民子の知らぬ間に成長し、それぞれに己の審美眼で見つけた友人のところへ遊びに行ってしまった。
「はあぁぁぁ・・・・・・・~」
民子は大きな溜息を洩らした。
なんだったのだろうか?結局のところ。
詰まるところ・・・・
自分のしていることは?
自分の生きざまは?
何をどうしたかったのだろうか?
わからない。
もう答はわからない。
ただ、必死に生き抜いてきたのだ。
子供のため、この地域で暮らすため。
いいや、自分のため?
もう、今更ウダウダ語るまい。
ただ・・・・・いえることは・・・・・
ママ友たちは、けっこう上流のセレブだったのではあるまいか?
プチセレブ・・・・
だなどど、勝手に判断してお付き合いしてきたが、存外にも、彼女達はきちんとセレブ妻の役割を心得・・・
それなりに逞しく生きている、民子などよりもずっと前向きで自分に正直な女達なのではないか?
そればかりか、民子の子供達は、子供特有の本能に素直に従い、自分の立ち位置を心得ていたのだ。
今日のお茶会で得たこと。それは教訓でもなんでもなく、ごくごく単純なことだ。
身の丈にあったお付き合いをしろ!ということであった。
でないと今に自分も血祭りにあげられかねないのだ。
尤も、・・・・芸能人や昼ドラみたいな華やかで危険なゴシップなどとは微塵も縁のない民子だったが・・・
今日さっそく得られたホヤホヤの自分ネタがあった。
それは・・・・認知症を患った姑との同居生活~!!!
あたしに割り当てられたゴシップはそんなものか~
姑との同居と、続く介護。
つくづく庶民ね~あたしという女も。
民子はそう自嘲気味に呟いた。
でもいいの!あたしはやっぱり平凡が一番!
非凡で素人で野暮ったくて・・・・
噂話にも浮上しない地味な主婦よ!でもそれが何だっていうの!
家族みんなが健康で幸せで・・・・あたしは、あたしでよかったと思っている。
強がりじゃないわ!
あたしには役割がある。
その役割をまっとうしてやるわ!
そう思うと・・・・あのフクロウも、まんざら捨てたもんじゃないわね。
御利益があるってうんだもの。
なんとなく愛着が湧くわね!
フフフ♪
「さ~て、洗濯物を取り込んで、それから懸賞に応募しなくちゃ!
あ、夕方のタイムセールにも行かなくちゃ~忙しい~」
何故か以前よりも大張り切りの民子は、何かを払拭したかのように
キラキラと幸せを噛み締めていた。
ただ・・・・
民子は気づいていなかった。
自分だけがママ友の彼女たちから、これまで、「民子さん」と呼ばれることは、ただの一度もなく・・・
今までもこれからも、ずっと多田野さん!と呼ばれ続けることを。
それくらいの距離感が、無意識に心地よかった。
だからこそ、気にもならなかった。
さてさて・・・・・今回は平凡主婦民子の視線でお話を進めましたが・・・機会があれば、今回の他のママさんの胸中を探ってみたいですね。
終わり
そのまま黙って自宅ドアを開けて、リビングに戻った。
「ふうううゥゥゥ・・・・・・・・・」
安堵と達成感?なのか、自然と大きなため息が漏れた。
彼女達が去った後に残されたもの・・・
それは何だったのだろうか?
虚無。
民子はしばし呆然と立ちすくみ、そしてその場にしゃがみこんで惚けてしまった。
「終わった・・・・終わったのよね、なんとか無事お披露目は乗り越えたのよね?
今日のお茶会は成功したのよ・・・・・ね?」
ポツリと力なく独り言を呟いた。
しばらく抜け殻のように宙を見つめていたが・・・・
ふいに鳴り響いた電話のベルで我に返った。
ルルルルル・・・・・・
「はい、多田野でございます」
いつもの民子に戻り受話器をとると、それは姑の松子であった。
「あらお義母さん、先日は沢庵ご馳走さまでした。
え?沢庵要るか?って・・・・・あの・・・・つい先日いただきましたけど、ごっそりと。
はい、それはもう冷蔵庫からはみ出るくらいに・・・・はあ」
民子はいぶかしんだ。
姑まで自分をからかうのか・・・・と。
「もう郵便で送ったって・・・・あの!お義母さん!あの・・・」
一方的にそう告げられ、電話を切られてしまった民子はパニックに陥りそうだった。
「もう~何よ~みんなして、自分勝手なんだからっ!」
そうこうしているうちに、一年生の長男浩太が学校から帰ってきた。
「ただいま~」
「あら早かったわね。今日五時間だったのね?
あのね浩太・・・・おばあちゃんまた沢庵送ってくれたんだって。
どうする?まだ食べられる?そんなにたくさん」
民子はなんとなくだが、浩太に解決を求めてみた。
すると浩太は事も無げに答えたのだ。
「ああ・・・・仕方ないでしょ。おばあちゃんボケてるんだから。
お父さんがしばらくは秘密だぞって言ってたけど、おばあちゃん一人暮らしできないから、そのうち、僕んちに来るんだってね。
僕いやだな~おばあちゃんと暮らすの、同じ話ばっかりするんだもん。
それにゲップするしおならするし・・・
ま、いっか、僕時々おばあちゃんからおこづかいもらえるなら、それでいいや。
じゃ、遊びに行ってくるね~」
民子が絶句していると・・・・続けて娘の結衣が帰宅した。
「ただいま~」
「あ、結衣おかえり。あのね結衣!お父さん何か言ってた?おばあちゃんのことで・・・・・」
真相を確かめるべく民子はすかさず結衣を呼び止めた。
「何?これから麻紀ちゃんちに遊びいくから忙しいの。後でにして」
結衣は煙たそうに玄関を出て行こうとした。
「え?麻紀ちゃんて他のクラスの?
月ちゃんは?眞里亜ちゃんや千尋ちゃんとは遊ばないの?」
「まさか!あの子たちとなんかもうずっと遊んでないよ。面白くないんだよね~話が噛み合わなくて。幸ちゃんはずっと休んでるしさ。
疲れるンだわ、ああいう家庭のお嬢様たちって・・・・
ま、どうせあの子たち、そのうち中学お受験するから、うちらと別世界に行っちゃうしね。
もういいんだよね。
じゃね。行ってくる。五時に帰るから」
そういって結衣も浩太も、民子の知らぬ間に成長し、それぞれに己の審美眼で見つけた友人のところへ遊びに行ってしまった。
「はあぁぁぁ・・・・・・・~」
民子は大きな溜息を洩らした。
なんだったのだろうか?結局のところ。
詰まるところ・・・・
自分のしていることは?
自分の生きざまは?
何をどうしたかったのだろうか?
わからない。
もう答はわからない。
ただ、必死に生き抜いてきたのだ。
子供のため、この地域で暮らすため。
いいや、自分のため?
もう、今更ウダウダ語るまい。
ただ・・・・・いえることは・・・・・
ママ友たちは、けっこう上流のセレブだったのではあるまいか?
プチセレブ・・・・
だなどど、勝手に判断してお付き合いしてきたが、存外にも、彼女達はきちんとセレブ妻の役割を心得・・・
それなりに逞しく生きている、民子などよりもずっと前向きで自分に正直な女達なのではないか?
そればかりか、民子の子供達は、子供特有の本能に素直に従い、自分の立ち位置を心得ていたのだ。
今日のお茶会で得たこと。それは教訓でもなんでもなく、ごくごく単純なことだ。
身の丈にあったお付き合いをしろ!ということであった。
でないと今に自分も血祭りにあげられかねないのだ。
尤も、・・・・芸能人や昼ドラみたいな華やかで危険なゴシップなどとは微塵も縁のない民子だったが・・・
今日さっそく得られたホヤホヤの自分ネタがあった。
それは・・・・認知症を患った姑との同居生活~!!!
あたしに割り当てられたゴシップはそんなものか~
姑との同居と、続く介護。
つくづく庶民ね~あたしという女も。
民子はそう自嘲気味に呟いた。
でもいいの!あたしはやっぱり平凡が一番!
非凡で素人で野暮ったくて・・・・
噂話にも浮上しない地味な主婦よ!でもそれが何だっていうの!
家族みんなが健康で幸せで・・・・あたしは、あたしでよかったと思っている。
強がりじゃないわ!
あたしには役割がある。
その役割をまっとうしてやるわ!
そう思うと・・・・あのフクロウも、まんざら捨てたもんじゃないわね。
御利益があるってうんだもの。
なんとなく愛着が湧くわね!
フフフ♪
「さ~て、洗濯物を取り込んで、それから懸賞に応募しなくちゃ!
あ、夕方のタイムセールにも行かなくちゃ~忙しい~」
何故か以前よりも大張り切りの民子は、何かを払拭したかのように
キラキラと幸せを噛み締めていた。
ただ・・・・
民子は気づいていなかった。
自分だけがママ友の彼女たちから、これまで、「民子さん」と呼ばれることは、ただの一度もなく・・・
今までもこれからも、ずっと多田野さん!と呼ばれ続けることを。
それくらいの距離感が、無意識に心地よかった。
だからこそ、気にもならなかった。
さてさて・・・・・今回は平凡主婦民子の視線でお話を進めましたが・・・機会があれば、今回の他のママさんの胸中を探ってみたいですね。
終わり
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