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鬨の声_ときのこえ_
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しかし、目の前の二人は互に顔を見合わせ、何か言いたげだった。
「あのさ・・・そのことなんだけど。
また動揺しないで聞いてくれる?
園田君。茜音ちゃん。
あたしと涼介で勝手に相談して決めたの。
実は、あたしたちも、園田君と一緒に、おばあちゃんの所に行こうって。
茜音ちゃんの手助けがしたいの。
ごめんね。
勝手に決めて迷惑かな?」
なんと二人は、この旅に同行したい、と申し出てくれたのだ。
蒼音には心強く嬉しい限りだったが・・・
「ほんと!え?
でもそんなこと大丈夫なのかな?
だって、子供だけの旅だよ。
おばさんたちには何ていうの?
お金は?
僕の友達なら、時バアも歓迎してくれるだろうけど、黙って出てくるのは絶対に駄目だからって、言われたし・・・」
嬉しいやら、困ったらやら、それでも蒼音はやっぱり嬉しかった。
「大丈夫だよ、そんなのなんとでもなるよ。
お金なら、俺たちもこづかい貯金してるから大丈夫さ。
それに、行き先と電話番号と理由を書いた手紙を、家に置いて出てくればいいんだよ。
別に悪いことするわけじゃないんだ。
これは人助けだろう?
だからいいだろう園田君?
俺一緒に行きたいんだ。でないときっと後悔するから」
涼介の主張する正論に、蒼音はなんとなく納得したような、しないような。
「わかった。
僕のほうこそ、よろしくお願いします。
二人を巻き込んじゃうけど、何かあったら、全責任はこの僕が被るよ。
だから、僕に力を貸してください」
『琴音・・・涼介・・・ありがと。
あたち、行きたい。
時バアの家に還りたい。
だからほんとにありがと』
蒼音と、そして傍にいた茜音は一緒に並んで、琴音と涼介の二人に深々と頭を下げた。
「もう、やめてよ園田君も茜音ちゃんも。
あたしたち勝手についていくんだから。
迷惑じゃないなら、一緒に行かせてね」
琴音もあらたまってお辞儀をした。
皆で行くと決まった以上、もうあれこれ言う必要はなかった。
となれば、出発日時を決めなくてはならない。
「ということは・・・
来週の木曜日なんてどうだろう?
夏休みも終わり間近だし、夜行列車も空いてそうだよね、菅沼君?」
「そうだな、その日の夜ならなんとかなりそうだ。
切符は当日も買えるしな。
夕方早めに、遊びに行くふりをして家を出て、そのまま汽車に乗ってしまえば、後はこっちのもんだな」
「うふふ、なんかドキドキするね。
あたしそんなに遠出するの初めてかも」
「じゃあ決定!
来週の五時にここに集合しよう。
おむすび、飲み物、おやつに着替え地図にお金。
最低限のものだけあれば大丈夫だね。
じゃあさ、折角だからみんなで掛け声をかけない?」
珍しく蒼音が中心になってみんなの士気を鼓舞した。
『かけごえ?』
「お、いいな」
「どうするの?」
「じゃあ、こうやって前で手を合わせて、そう茜音も一緒にだよ」
四人は輪になり右手を差し出し合わせた。
「じゃあ言うよ。
この旅を成功させるぞー!
エイエイオー!」
「オー!」
堤防沿いの公園から西の方角を見ると、夕陽が地平の遥か彼方に浮かんでいた。
八月の終わり、すすきの穂が実りはじめ、さやさやと風に薙いでいる。
あと少しで、長かった夏休みが終わろうとしている。
「あのさ・・・そのことなんだけど。
また動揺しないで聞いてくれる?
園田君。茜音ちゃん。
あたしと涼介で勝手に相談して決めたの。
実は、あたしたちも、園田君と一緒に、おばあちゃんの所に行こうって。
茜音ちゃんの手助けがしたいの。
ごめんね。
勝手に決めて迷惑かな?」
なんと二人は、この旅に同行したい、と申し出てくれたのだ。
蒼音には心強く嬉しい限りだったが・・・
「ほんと!え?
でもそんなこと大丈夫なのかな?
だって、子供だけの旅だよ。
おばさんたちには何ていうの?
お金は?
僕の友達なら、時バアも歓迎してくれるだろうけど、黙って出てくるのは絶対に駄目だからって、言われたし・・・」
嬉しいやら、困ったらやら、それでも蒼音はやっぱり嬉しかった。
「大丈夫だよ、そんなのなんとでもなるよ。
お金なら、俺たちもこづかい貯金してるから大丈夫さ。
それに、行き先と電話番号と理由を書いた手紙を、家に置いて出てくればいいんだよ。
別に悪いことするわけじゃないんだ。
これは人助けだろう?
だからいいだろう園田君?
俺一緒に行きたいんだ。でないときっと後悔するから」
涼介の主張する正論に、蒼音はなんとなく納得したような、しないような。
「わかった。
僕のほうこそ、よろしくお願いします。
二人を巻き込んじゃうけど、何かあったら、全責任はこの僕が被るよ。
だから、僕に力を貸してください」
『琴音・・・涼介・・・ありがと。
あたち、行きたい。
時バアの家に還りたい。
だからほんとにありがと』
蒼音と、そして傍にいた茜音は一緒に並んで、琴音と涼介の二人に深々と頭を下げた。
「もう、やめてよ園田君も茜音ちゃんも。
あたしたち勝手についていくんだから。
迷惑じゃないなら、一緒に行かせてね」
琴音もあらたまってお辞儀をした。
皆で行くと決まった以上、もうあれこれ言う必要はなかった。
となれば、出発日時を決めなくてはならない。
「ということは・・・
来週の木曜日なんてどうだろう?
夏休みも終わり間近だし、夜行列車も空いてそうだよね、菅沼君?」
「そうだな、その日の夜ならなんとかなりそうだ。
切符は当日も買えるしな。
夕方早めに、遊びに行くふりをして家を出て、そのまま汽車に乗ってしまえば、後はこっちのもんだな」
「うふふ、なんかドキドキするね。
あたしそんなに遠出するの初めてかも」
「じゃあ決定!
来週の五時にここに集合しよう。
おむすび、飲み物、おやつに着替え地図にお金。
最低限のものだけあれば大丈夫だね。
じゃあさ、折角だからみんなで掛け声をかけない?」
珍しく蒼音が中心になってみんなの士気を鼓舞した。
『かけごえ?』
「お、いいな」
「どうするの?」
「じゃあ、こうやって前で手を合わせて、そう茜音も一緒にだよ」
四人は輪になり右手を差し出し合わせた。
「じゃあ言うよ。
この旅を成功させるぞー!
エイエイオー!」
「オー!」
堤防沿いの公園から西の方角を見ると、夕陽が地平の遥か彼方に浮かんでいた。
八月の終わり、すすきの穂が実りはじめ、さやさやと風に薙いでいる。
あと少しで、長かった夏休みが終わろうとしている。
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