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真夏の夜の夢
誰そ彼_たそかれ_
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「・・・・・・うん、あたしも、成仏するってそう言う意味なんだと思う。
またいつか生まれてくることを願い、魂を浄化することを言うんだと思うの。
だからって、その人の痕跡が全く無くなるわけではないと信じたいの。
たとえ気配が消えたとしてもね」
茜音がいなくなる。
やっぱりそうなんだ。
でもそんなの仕方ないことだろう?
茜音が消えてしまうといっても、僕は以前の暮らしに戻るだけのこと。
それだけの話なんだ。
蒼音は自分に言い聞かせようとした。
「園田君?
園田君はどうするのが一番いいと思うの?
それに、茜音ちゃんはどうしたいんだろう?」
(そういえば・・・・
茜音がどうしたいか。
聞いたことなかったな)
琴音にそう指摘されて、蒼音は隣でりんご飴を食べる茜音に目を向けた。
(茜音は・・・
茜音は、自分の生前を知りたい?
・・・・
僕とサヨナラして安らかになりたい?)
と、その時・・・・・・
ひゅるひゅると音がしたかと思うと、夜空がひときわ明るく照らされ、大輪の花が
開いた。
ドーン!
と大きな轟が響き、夜空に花火が打ち上げられた。
「わあ・・・・・」
周囲に歓声があがった。
花火大会が始まったのだ。
「おーいもう始まってるぞー」
出店に買い出しに行ってくれた涼介が、ラムネ数本を抱えて駆けてきた。
「あ、涼介ありがとう、重かったでしょ」
彼等はとりあえずそれぞれラムネを持って、公園の遊具の所に移動した。
昨夜は広場で盆踊りが催されたようだ。
櫓の骨組みがまだ残っていた。
「堤防まで戻ってる時間ないよね。
ここで鑑賞しない?
あっちに戻ってお兄ちゃんと彼女の邪魔しちゃ悪いし」
琴音はそういって、また少し大人びた様子をみせた。
ドーン!ドーン!ドーン!
ドドン!ドン!
夜空に大輪が咲くごとに、大きな音が共鳴して、花火大会は宴もたけなわだった。
「うわぁぁ・・・・綺麗だな」
三人は一様に感嘆の声をあげた。
『きれいね・・・きれいね』
茜音も、花火があがる度に声をあげていた。
(茜音は花火を観るのは初めてなのかな?
そういえば思い出すな・・・
僕が小さかった頃、お父さんとお母さんとで花火を観に行ったことがあったけ。
三人で手を繋ぎ、夜空を見上げたあの日・・・
茜音はどこにいたのだろう?
視えはしなかったけど、やっぱりずっと僕の近くにいたんだろうか?
三人で観ていたつもりだったけど、本当は四人で観ていたのかもしれない・・・・)
花火が上がる度に、周囲はきらきらと光に照らしだされ、多くの観客・・・
そして、あまたいる精霊も幽霊も皆一緒になって夜空を見上げている。
『きれいね・・・・
きれいね・・・
赤、黄色、花火いっぱい。
あの日もいっぱい観たね・・・・
蒼音、あの夜も花火きれいだったね。
みんなで一緒に観たね。
あたち・・・・
少ち思い出ちた気がするの・・・』
茜音は何事かを無意識に呟いていた。
それは、本当に無意識のひとり言だった。
「え?
何?今なんて言ったの茜音?」
花火の大音響にかき消され、茜音のひとり言は蒼音の耳に届かなかった。
夜空を彩る大輪の花火。
刹那的で儚い一瞬の夏の夜の夢。
火の花は跡形もなく夜空に散り去る。
だからこそ心を惹きつけ残像に残るのだろう。
目に見える永遠などありはしない。
あるとすれば・・・・
それは誰もが持っている心。
永遠に色褪せることはない、心の花。
またいつか生まれてくることを願い、魂を浄化することを言うんだと思うの。
だからって、その人の痕跡が全く無くなるわけではないと信じたいの。
たとえ気配が消えたとしてもね」
茜音がいなくなる。
やっぱりそうなんだ。
でもそんなの仕方ないことだろう?
茜音が消えてしまうといっても、僕は以前の暮らしに戻るだけのこと。
それだけの話なんだ。
蒼音は自分に言い聞かせようとした。
「園田君?
園田君はどうするのが一番いいと思うの?
それに、茜音ちゃんはどうしたいんだろう?」
(そういえば・・・・
茜音がどうしたいか。
聞いたことなかったな)
琴音にそう指摘されて、蒼音は隣でりんご飴を食べる茜音に目を向けた。
(茜音は・・・
茜音は、自分の生前を知りたい?
・・・・
僕とサヨナラして安らかになりたい?)
と、その時・・・・・・
ひゅるひゅると音がしたかと思うと、夜空がひときわ明るく照らされ、大輪の花が
開いた。
ドーン!
と大きな轟が響き、夜空に花火が打ち上げられた。
「わあ・・・・・」
周囲に歓声があがった。
花火大会が始まったのだ。
「おーいもう始まってるぞー」
出店に買い出しに行ってくれた涼介が、ラムネ数本を抱えて駆けてきた。
「あ、涼介ありがとう、重かったでしょ」
彼等はとりあえずそれぞれラムネを持って、公園の遊具の所に移動した。
昨夜は広場で盆踊りが催されたようだ。
櫓の骨組みがまだ残っていた。
「堤防まで戻ってる時間ないよね。
ここで鑑賞しない?
あっちに戻ってお兄ちゃんと彼女の邪魔しちゃ悪いし」
琴音はそういって、また少し大人びた様子をみせた。
ドーン!ドーン!ドーン!
ドドン!ドン!
夜空に大輪が咲くごとに、大きな音が共鳴して、花火大会は宴もたけなわだった。
「うわぁぁ・・・・綺麗だな」
三人は一様に感嘆の声をあげた。
『きれいね・・・きれいね』
茜音も、花火があがる度に声をあげていた。
(茜音は花火を観るのは初めてなのかな?
そういえば思い出すな・・・
僕が小さかった頃、お父さんとお母さんとで花火を観に行ったことがあったけ。
三人で手を繋ぎ、夜空を見上げたあの日・・・
茜音はどこにいたのだろう?
視えはしなかったけど、やっぱりずっと僕の近くにいたんだろうか?
三人で観ていたつもりだったけど、本当は四人で観ていたのかもしれない・・・・)
花火が上がる度に、周囲はきらきらと光に照らしだされ、多くの観客・・・
そして、あまたいる精霊も幽霊も皆一緒になって夜空を見上げている。
『きれいね・・・・
きれいね・・・
赤、黄色、花火いっぱい。
あの日もいっぱい観たね・・・・
蒼音、あの夜も花火きれいだったね。
みんなで一緒に観たね。
あたち・・・・
少ち思い出ちた気がするの・・・』
茜音は何事かを無意識に呟いていた。
それは、本当に無意識のひとり言だった。
「え?
何?今なんて言ったの茜音?」
花火の大音響にかき消され、茜音のひとり言は蒼音の耳に届かなかった。
夜空を彩る大輪の花火。
刹那的で儚い一瞬の夏の夜の夢。
火の花は跡形もなく夜空に散り去る。
だからこそ心を惹きつけ残像に残るのだろう。
目に見える永遠などありはしない。
あるとすれば・・・・
それは誰もが持っている心。
永遠に色褪せることはない、心の花。
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