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サンクチュアリ
正念場
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蒼音は四の五の屁理屈をこねるのをやめた。
そう決心してしまうと、心が軽くなった。
とても晴れやかな気持ちに切り替えることができた。
蒼音と茜音が話し合うのを見あげていた琴音は、遠慮がちに問いかけた。
「園田君・・・
あの、何か方法がみつかったのね。
どうするの?」
「そうだよ、さっきから何ぶつぶつ、ひとり言つぶやいてるんだよ。
解決策でも見つかったのか園田君」
「うん、大丈夫。
桜井さん、安心して。
僕がこれから山を登って、先生を呼んでくるから。
絶対に約束する。
不安だろうけど、しばらくここで菅沼君と待っていて。
絶対に先生を連れて戻るから。こんな頼りない僕だけど、信じて待っていてほしいんだ」
それは揺るぎない自信に満ちた声だった。
蒼音はその場に自分のリュックを下ろしてすっくと立ち上がった。
ついさっきまで涼介に泣きついていたのとは大違いだ。
「園田君・・・・
あ、まさか一人でじゃないよね・・・ね。
うんそうだよね。
わかった。あたし待ってる。
園田君が戻るまでここで涼介と御神木と・・・ここで待ってる」
蒼音の自信のわけは、琴音にはわからなかったが、それでも信じられた。
確たるものはないけれど信じられた。
きっと今の蒼音にならやりとげられる、そう感じていた。
「え?
園田君一人で行くのか?
道はわかってるのかよ?
本当に大丈夫なのか?
俺のほうが体力あるぞ。
戻る道はわからないけど、俺は方向音痴じゃないぞ」
納得しきれない涼介には、蒼音の自信の程が信じられなかった。
「大丈夫だよ心配しないで。
僕こうみえても、以外に肝が据わっているから。
もう泣いたりしないから。
菅沼君は桜井さんが不安にならないように、その場所から面白い話しをしてあげて。
その代わり絶対にすべらない話しだよ。知的な菅沼君なら、まさかそんな失態はしないだろうけどね」
蒼音はにんやり笑うと、先ほどのしりとりでの仕返しをした。
「わ、わかったよ。
それなら助けを呼びに行く大役は、園田君に譲るよ。
その代わり絶対慎重にな。また滑って転がるなよ」
「うん、じゃあ行ってくる。
あ、そうだ。二人とも待ってる間虫除けしたほうがいいよ。
蚊に刺されちゃうよ」
「わかったよ。人のこと心配する前に、自分の足元も気をつけろよ園田君。
絶対怪我するなよ!」
「大丈夫だよ」
二人に見送られて、蒼音は茜音の示す方に向かって、落ちてきた急な斜面をまたよじ登っていった。
湿った地面は、予想外に粘度があり滑りやすかった。
怖かった。本当はものすごく不安だった。
それでも弱音は吐かず、歯を食いしばり、這いつくばって懸命に登っていった。
「あいつ・・・・大丈夫かな」
「大丈夫だよ。
園田君を信じよう。
園田君には多分・・・
いい守護霊がいるはずだよ。きっとね。
そんな気がするの」
斜面をよじ登る蒼音の後ろ姿を見上げ、残された二人はこの場で待つことに徹した。
転げ落ちる時はものの数秒だった山道は、登るとなると一筋縄ではいかなかった。
しかも蒼音とて手足に傷を負い、いたるところにカサブタが出来始めていた。
それでも負けたくなかった。
涼介に?
いいや自分に負けたくなかった。
「ファイト~!!!」
喝を入れるために、正念場を迎えた蒼音は叫んだ。
声は森に木霊して、共鳴していた。
心から発した言葉には力が宿るという。言霊となって影響力を与えるのだろう。
良い言葉は良い影響を・・・
悪い言葉は悪い影響を・・・・
この世とは不思議なもので、森羅万象、全てのものごとがお互いに影響を与え支えあっているらしい。
偶然かと思われる出来事も実はそうではない。
あらゆる物事には意味があり、みえない糸で繋がっている。
だからこそ、蒼音と茜音はここに存在し、今懸命に努力しているのだから。
《さあ、こちらだよ・・・・希望の光はこの向こうにある。
茜音・・蒼音・・・・互に協力しあい、頑張りなさい・・・・》
そう決心してしまうと、心が軽くなった。
とても晴れやかな気持ちに切り替えることができた。
蒼音と茜音が話し合うのを見あげていた琴音は、遠慮がちに問いかけた。
「園田君・・・
あの、何か方法がみつかったのね。
どうするの?」
「そうだよ、さっきから何ぶつぶつ、ひとり言つぶやいてるんだよ。
解決策でも見つかったのか園田君」
「うん、大丈夫。
桜井さん、安心して。
僕がこれから山を登って、先生を呼んでくるから。
絶対に約束する。
不安だろうけど、しばらくここで菅沼君と待っていて。
絶対に先生を連れて戻るから。こんな頼りない僕だけど、信じて待っていてほしいんだ」
それは揺るぎない自信に満ちた声だった。
蒼音はその場に自分のリュックを下ろしてすっくと立ち上がった。
ついさっきまで涼介に泣きついていたのとは大違いだ。
「園田君・・・・
あ、まさか一人でじゃないよね・・・ね。
うんそうだよね。
わかった。あたし待ってる。
園田君が戻るまでここで涼介と御神木と・・・ここで待ってる」
蒼音の自信のわけは、琴音にはわからなかったが、それでも信じられた。
確たるものはないけれど信じられた。
きっと今の蒼音にならやりとげられる、そう感じていた。
「え?
園田君一人で行くのか?
道はわかってるのかよ?
本当に大丈夫なのか?
俺のほうが体力あるぞ。
戻る道はわからないけど、俺は方向音痴じゃないぞ」
納得しきれない涼介には、蒼音の自信の程が信じられなかった。
「大丈夫だよ心配しないで。
僕こうみえても、以外に肝が据わっているから。
もう泣いたりしないから。
菅沼君は桜井さんが不安にならないように、その場所から面白い話しをしてあげて。
その代わり絶対にすべらない話しだよ。知的な菅沼君なら、まさかそんな失態はしないだろうけどね」
蒼音はにんやり笑うと、先ほどのしりとりでの仕返しをした。
「わ、わかったよ。
それなら助けを呼びに行く大役は、園田君に譲るよ。
その代わり絶対慎重にな。また滑って転がるなよ」
「うん、じゃあ行ってくる。
あ、そうだ。二人とも待ってる間虫除けしたほうがいいよ。
蚊に刺されちゃうよ」
「わかったよ。人のこと心配する前に、自分の足元も気をつけろよ園田君。
絶対怪我するなよ!」
「大丈夫だよ」
二人に見送られて、蒼音は茜音の示す方に向かって、落ちてきた急な斜面をまたよじ登っていった。
湿った地面は、予想外に粘度があり滑りやすかった。
怖かった。本当はものすごく不安だった。
それでも弱音は吐かず、歯を食いしばり、這いつくばって懸命に登っていった。
「あいつ・・・・大丈夫かな」
「大丈夫だよ。
園田君を信じよう。
園田君には多分・・・
いい守護霊がいるはずだよ。きっとね。
そんな気がするの」
斜面をよじ登る蒼音の後ろ姿を見上げ、残された二人はこの場で待つことに徹した。
転げ落ちる時はものの数秒だった山道は、登るとなると一筋縄ではいかなかった。
しかも蒼音とて手足に傷を負い、いたるところにカサブタが出来始めていた。
それでも負けたくなかった。
涼介に?
いいや自分に負けたくなかった。
「ファイト~!!!」
喝を入れるために、正念場を迎えた蒼音は叫んだ。
声は森に木霊して、共鳴していた。
心から発した言葉には力が宿るという。言霊となって影響力を与えるのだろう。
良い言葉は良い影響を・・・
悪い言葉は悪い影響を・・・・
この世とは不思議なもので、森羅万象、全てのものごとがお互いに影響を与え支えあっているらしい。
偶然かと思われる出来事も実はそうではない。
あらゆる物事には意味があり、みえない糸で繋がっている。
だからこそ、蒼音と茜音はここに存在し、今懸命に努力しているのだから。
《さあ、こちらだよ・・・・希望の光はこの向こうにある。
茜音・・蒼音・・・・互に協力しあい、頑張りなさい・・・・》
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