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サンクチュアリ
デカメロン
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「・・・・・ん?デカメロン?
何だそれ?でっかいメロンのことか?
ていうか誰が言ったんだ?」
涼介は目の前の二人を交互に見比べ、あきらかに不審な顔をした。
たった今宙から聞こえた声。それは言わずもがな・・・
涼介には姿の視えない茜音の声であった。
視えはしないが、どういうわけか、今の声だけは聞こえてしまったらしい。
三人がしりとりに興じる様子を見て、つい仲間に入りたくなった茜音は、とうとう黙って見守ることが出来ず声を出してしまったのだ。
(あちゃー・・・・聞こえちゃったんだ今の声)
蒼音と琴音は目を合わせ、茜音の方に振り返った。
『えへへ・・・・・』
茜音は舌を出して失態を誤魔化そうとしていた。
しかし、今更仕方のないことだ。
二人はこの場を取り繕おうと必死に御託を並べた。
「ぼ、僕が言ったんだ。
うんそう僕がね、なんとなく語呂合わせのつもりで言ったんだ。
そう、デカメロンって僕の造語だよ。
大きなメロンって意味で」
蒼音はあたふたと言い訳した。
「そ、そうなんだ~園田君ってユーモアがあるのね。
でっかいメロンなんて誰も思いつかないわよね~すごい発想よね・・・
うん本当」
蒼音の話しに調子を合わせ、琴音も一生懸命に協力してくれた。
「え?
園田君の声だったのか?
にしてはちょっと変な感じだったけど・・・」
涼介はいぶかしんだ。
「何言ってるんだよ。
僕と桜井さんしかここにはいないじゃないか。
他に誰の声だっていうんだよ。やだな~菅沼君は変なこと言い出して・・・」
「ふうん、でも・・・・・・・・
余計なお世話かもしれないけど、でっかいメロンでデカメロンって、それ思いっきりすべってるよ。
こけてるよ。
僕達以外の人には、それ言わない方がいいよ。
空気が凍るからね」
涼介は平然と蒼音を小馬鹿にした。
けれど、茜音の存在を嗅ぎつけられるよりは、小馬鹿にされるぐらい我慢できた。
「うん忠告ありがとう。
肝に銘じておくよ。
今後言わないよ、そんな馬鹿らしいことは・・・・・
絶対にね」
蒼音は男らしく堪えた。愚か者の烙印を押されることを甘んじて受け入れた。
「そ、そんなことないよね?
すべってないよ。傑作だったよ。
デカメロン。
ね園田君」
琴音はことの真相を知っているだけに、どうフォローすべきか迷ったが、一応は蒼音をかばいつつ茜音のことを隠し通した。
「ところでさ・・・」
涼介は立て続けに最後の一撃を突きつけた。
「最後に《ン》がついたから園田君の負けね。しりとりだから造語もNGね」
涼介の一言で、しりとりはあっけなく終了した。
補足すると・・・・
「デカメロン」とはでっかいメロンでもなく、陸ガメの一種でもなく・・・・
十四世紀のイタリアの作家、ボッカッチョが書いた傑作。
男女の悲喜、人間賛歌をおおらかに描いた、世界的に有名な長編小説のことである。
まだ四年生の三人は、そのような題名の小説がこの世に存在することなど知る由もなく・・・
互の無知をさらけ出し、ああだこうだと、丁々発止とわたりあっていたのである。
では、なにゆえ茜音がそんな小説を知っていたのかというと、答えは単純である。
蒼音が授業中、ひとり暇を持て余した茜音は、誰もいない図書室に入り浸り、挿絵のついた本をめくって楽しんでいたのだ。
そこで目にした美しい挿絵が添えられた小説デカメロン。
まだ、字をあまり読めない茜音だけれど、簡単なカタカナくらいは図書館で独学したらしい(?)
デカデカと表紙に書かれた「デカメロン」くらいは読めたのだろう。
しりとりの時、咄嗟に発した言葉がソレであった。
とまあ、至極単純明瞭なからくりであることは、いうまでもなかった。
閑話休題。
何だそれ?でっかいメロンのことか?
ていうか誰が言ったんだ?」
涼介は目の前の二人を交互に見比べ、あきらかに不審な顔をした。
たった今宙から聞こえた声。それは言わずもがな・・・
涼介には姿の視えない茜音の声であった。
視えはしないが、どういうわけか、今の声だけは聞こえてしまったらしい。
三人がしりとりに興じる様子を見て、つい仲間に入りたくなった茜音は、とうとう黙って見守ることが出来ず声を出してしまったのだ。
(あちゃー・・・・聞こえちゃったんだ今の声)
蒼音と琴音は目を合わせ、茜音の方に振り返った。
『えへへ・・・・・』
茜音は舌を出して失態を誤魔化そうとしていた。
しかし、今更仕方のないことだ。
二人はこの場を取り繕おうと必死に御託を並べた。
「ぼ、僕が言ったんだ。
うんそう僕がね、なんとなく語呂合わせのつもりで言ったんだ。
そう、デカメロンって僕の造語だよ。
大きなメロンって意味で」
蒼音はあたふたと言い訳した。
「そ、そうなんだ~園田君ってユーモアがあるのね。
でっかいメロンなんて誰も思いつかないわよね~すごい発想よね・・・
うん本当」
蒼音の話しに調子を合わせ、琴音も一生懸命に協力してくれた。
「え?
園田君の声だったのか?
にしてはちょっと変な感じだったけど・・・」
涼介はいぶかしんだ。
「何言ってるんだよ。
僕と桜井さんしかここにはいないじゃないか。
他に誰の声だっていうんだよ。やだな~菅沼君は変なこと言い出して・・・」
「ふうん、でも・・・・・・・・
余計なお世話かもしれないけど、でっかいメロンでデカメロンって、それ思いっきりすべってるよ。
こけてるよ。
僕達以外の人には、それ言わない方がいいよ。
空気が凍るからね」
涼介は平然と蒼音を小馬鹿にした。
けれど、茜音の存在を嗅ぎつけられるよりは、小馬鹿にされるぐらい我慢できた。
「うん忠告ありがとう。
肝に銘じておくよ。
今後言わないよ、そんな馬鹿らしいことは・・・・・
絶対にね」
蒼音は男らしく堪えた。愚か者の烙印を押されることを甘んじて受け入れた。
「そ、そんなことないよね?
すべってないよ。傑作だったよ。
デカメロン。
ね園田君」
琴音はことの真相を知っているだけに、どうフォローすべきか迷ったが、一応は蒼音をかばいつつ茜音のことを隠し通した。
「ところでさ・・・」
涼介は立て続けに最後の一撃を突きつけた。
「最後に《ン》がついたから園田君の負けね。しりとりだから造語もNGね」
涼介の一言で、しりとりはあっけなく終了した。
補足すると・・・・
「デカメロン」とはでっかいメロンでもなく、陸ガメの一種でもなく・・・・
十四世紀のイタリアの作家、ボッカッチョが書いた傑作。
男女の悲喜、人間賛歌をおおらかに描いた、世界的に有名な長編小説のことである。
まだ四年生の三人は、そのような題名の小説がこの世に存在することなど知る由もなく・・・
互の無知をさらけ出し、ああだこうだと、丁々発止とわたりあっていたのである。
では、なにゆえ茜音がそんな小説を知っていたのかというと、答えは単純である。
蒼音が授業中、ひとり暇を持て余した茜音は、誰もいない図書室に入り浸り、挿絵のついた本をめくって楽しんでいたのだ。
そこで目にした美しい挿絵が添えられた小説デカメロン。
まだ、字をあまり読めない茜音だけれど、簡単なカタカナくらいは図書館で独学したらしい(?)
デカデカと表紙に書かれた「デカメロン」くらいは読めたのだろう。
しりとりの時、咄嗟に発した言葉がソレであった。
とまあ、至極単純明瞭なからくりであることは、いうまでもなかった。
閑話休題。
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