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邂逅_かいこう__
ふれあい
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夕方、いつもより少し早い時間に母の梢は帰宅した。
「ただいま~蒼音!
新しい学校どうやった?
友達できた?
先生どんな人やった?
可愛い女の子はおった?
給食おいしかった?
なあ、どないやったん~?
黙ってんと、はよ教えてや~」
陽気な母は関西育ちで転勤族の妻であった。
ただこの度、夫の本社勤務を機に転勤妻人生は終りを告げ、晴れて念願のマイホームを購入した喜びで、ここ最近、少々浮かれポンチになっていたのだ。
「おかえりお母さん。
あのさ、それより・・・・」
「あ!蒼音、もう温泉煎餅の袋あけてしもたんや、楽しみにとっておいたのに~
時バアが温泉街に行ったとき、蒼音にって、買って送ってくれたんやでコレ」
「お母さん、もうちゃんと聞いてよ!」
「はいはい、聞いてますよ。
ご飯支度しながら聞きますよ~教えてちょうだい今日あったこと」
母は手際よく夕食準備にとりかかりながら、蒼音の話に耳を傾けてくれた。
「あのさ、驚かないで見てほしいんだけど、僕の後ろをよく見て・・・・・」
蒼音は、まずはその目で確かめてもらおうと母に背を向けた。
「うん?何?何を見んの?」
「もう!よく見てよ。
僕の周囲を見渡して!」
「見てって言われても、なーんもないで」
「そんなわけない!
いるでしょ!何かいるでしょ?」
「小町が蒼音の足元にひっついてるのは見えるけど」
母は野菜を洗いながら、横目で我が子を見回していた。
「他に何がおるの?
新居に早速ゴキブリでも出た?」
(嘘だ!嘘だ!
お母さんには視えないの!
僕の横にぴったりと寄り添う、この女の子が視えていないの?
そんな!)
蒼音のあまりの落胆ぶりを心配して、女の子は思わず声をかけた。
『蒼音・・・・大丈夫?』
「あ、今の聞こえたお母さん!
ね、聞こえたでしょ?」
「何が?」
「え?今の声もわからなかったの?
本当は聞こえてるんでしょ?」
「だから何が?
もー何をわけわからんこと言ってんの?
それより宿題ちゃんとした?
あ、今日は蒼音の好きな餃子やで、宿題早く済ませて手伝ってよ」
母の陽気ぶりに反して、蒼音の落ち込みようは激しかった。
「うん・・・・わかった。
部屋で宿題すませてくる。
ご飯できたら呼んでね」
つい先ほどまでは楽観的にとらえていたこの怪奇現象だったが、どうやら事はそううまく運びそうにもなかった。
だとすると、今後のことを考えてみても、そう悠長に構えてはおられないようだ。
母に相談すればお清めやお祓いでなんとかしてくれるかもと、一縷の望みをかけていたけれど、あの様子ではさすがに信じてくれそうにもない。
忘れていた・・・
何しろ母は、神仏宗教宇宙人が苦手な、超現実主義者なのだ。
そんな蒼音の心理を知ってか知らずか、相変わらず女の子はそばにいた。
そして心配そうな瞳で蒼音を見上げていた。
『蒼音・・・・・
ごめんね。
あたちが出てきちゃったから困ってる?』
「・・・・うん、困ってる。
困ってるけど・・・・・・
でも・・・・
大丈夫だよ。多分大丈夫だよ」
蒼音は気をとりなおして、女の子に優しく微笑みかけた。
「心配しないで、僕そんなに冷たい人間じゃないよ。
僕だって普通の血のかよった人間なんだよ。
そりゃ、強い人間でもないけどね。
でもね・・・生身の人間ってね、温かい血が流れているんだよ。
ほら」
そういうと、自分の両手で女の子の紅葉のような小さな手を、そっと優しく包み込んだ。
「ほら・・・・ね」
『本当だ・・・・
蒼音の手、あったかい・・・・
とくとく・・・って感じる』
それは蒼音の手にも同じように感じられた。
幽霊ってもっと冷たい感触だと思っていたけど、案外温かいんだな・・・
そう感じていた。
この子の手を通して、自分の脈打つ鼓動が心地よく響いてくるような気さえした。
彼自身も驚いていたのだ。自分がこの状況下で、他人に対してこんなにも優しい気持ちになれることが新しい発見だった。
「ただいま~蒼音!
新しい学校どうやった?
友達できた?
先生どんな人やった?
可愛い女の子はおった?
給食おいしかった?
なあ、どないやったん~?
黙ってんと、はよ教えてや~」
陽気な母は関西育ちで転勤族の妻であった。
ただこの度、夫の本社勤務を機に転勤妻人生は終りを告げ、晴れて念願のマイホームを購入した喜びで、ここ最近、少々浮かれポンチになっていたのだ。
「おかえりお母さん。
あのさ、それより・・・・」
「あ!蒼音、もう温泉煎餅の袋あけてしもたんや、楽しみにとっておいたのに~
時バアが温泉街に行ったとき、蒼音にって、買って送ってくれたんやでコレ」
「お母さん、もうちゃんと聞いてよ!」
「はいはい、聞いてますよ。
ご飯支度しながら聞きますよ~教えてちょうだい今日あったこと」
母は手際よく夕食準備にとりかかりながら、蒼音の話に耳を傾けてくれた。
「あのさ、驚かないで見てほしいんだけど、僕の後ろをよく見て・・・・・」
蒼音は、まずはその目で確かめてもらおうと母に背を向けた。
「うん?何?何を見んの?」
「もう!よく見てよ。
僕の周囲を見渡して!」
「見てって言われても、なーんもないで」
「そんなわけない!
いるでしょ!何かいるでしょ?」
「小町が蒼音の足元にひっついてるのは見えるけど」
母は野菜を洗いながら、横目で我が子を見回していた。
「他に何がおるの?
新居に早速ゴキブリでも出た?」
(嘘だ!嘘だ!
お母さんには視えないの!
僕の横にぴったりと寄り添う、この女の子が視えていないの?
そんな!)
蒼音のあまりの落胆ぶりを心配して、女の子は思わず声をかけた。
『蒼音・・・・大丈夫?』
「あ、今の聞こえたお母さん!
ね、聞こえたでしょ?」
「何が?」
「え?今の声もわからなかったの?
本当は聞こえてるんでしょ?」
「だから何が?
もー何をわけわからんこと言ってんの?
それより宿題ちゃんとした?
あ、今日は蒼音の好きな餃子やで、宿題早く済ませて手伝ってよ」
母の陽気ぶりに反して、蒼音の落ち込みようは激しかった。
「うん・・・・わかった。
部屋で宿題すませてくる。
ご飯できたら呼んでね」
つい先ほどまでは楽観的にとらえていたこの怪奇現象だったが、どうやら事はそううまく運びそうにもなかった。
だとすると、今後のことを考えてみても、そう悠長に構えてはおられないようだ。
母に相談すればお清めやお祓いでなんとかしてくれるかもと、一縷の望みをかけていたけれど、あの様子ではさすがに信じてくれそうにもない。
忘れていた・・・
何しろ母は、神仏宗教宇宙人が苦手な、超現実主義者なのだ。
そんな蒼音の心理を知ってか知らずか、相変わらず女の子はそばにいた。
そして心配そうな瞳で蒼音を見上げていた。
『蒼音・・・・・
ごめんね。
あたちが出てきちゃったから困ってる?』
「・・・・うん、困ってる。
困ってるけど・・・・・・
でも・・・・
大丈夫だよ。多分大丈夫だよ」
蒼音は気をとりなおして、女の子に優しく微笑みかけた。
「心配しないで、僕そんなに冷たい人間じゃないよ。
僕だって普通の血のかよった人間なんだよ。
そりゃ、強い人間でもないけどね。
でもね・・・生身の人間ってね、温かい血が流れているんだよ。
ほら」
そういうと、自分の両手で女の子の紅葉のような小さな手を、そっと優しく包み込んだ。
「ほら・・・・ね」
『本当だ・・・・
蒼音の手、あったかい・・・・
とくとく・・・って感じる』
それは蒼音の手にも同じように感じられた。
幽霊ってもっと冷たい感触だと思っていたけど、案外温かいんだな・・・
そう感じていた。
この子の手を通して、自分の脈打つ鼓動が心地よく響いてくるような気さえした。
彼自身も驚いていたのだ。自分がこの状況下で、他人に対してこんなにも優しい気持ちになれることが新しい発見だった。
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