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邂逅_かいこう__
憑依?
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「・・・・・・もー!!
なんなんだよ!
どうしてついてくるんだよ!
僕は用足しに来たの!
悪いけど来ないでくれるかな?」
『え、だめなの?
だったら戸のとこで待ってる』
「絶対だよ!入ってきたら怒るからね!」
蒼音はそう吐き捨ててトイレに籠城した。
しごく普通に考えてみたら、今自分はとてつもなく非現実的な状況に置かれている。
改めて己の不運を呪った。
こういう場合はどうするのが適当なのか?
(とりあえずお母さんが帰ってきたら相談して、お祓いに連れて行ってもらおうかな・・・
こういう霊視体験は世間でもたま~にあるようだしね。
僕の頭がおかしくなったわけでもないよね?悪夢でもないんだよね?
あ~でもまさか、僕の身の上にこんな奇々怪々現象が起こるなんて・・・
僕だって信じられないよ)
暫くトイレで悩んでいた蒼音だが、いつまでも篭っているわけにはゆかなかった。
『蒼音まだ?』
ドアの向こうではしびれを切らした座敷童子・・・
いや、背後霊が自分を呼んでいるではないか。
蒼音はドアを開けて一喝した。
「あのね!
人間にはプライバシーってものがあるの。
一人になれる時間と空間が必要なんだよ。
わかる?君にそこんとこ!」
『・・・わかんない。
だってさっき、ひとりはいやだって叫んでたでちょ?』
「う・・・そ、そうだけど・・・
そ、それよりさ、この世から消えることができないのなら、せめて僕から少し距離を置いてくれない?
はっきり言うと、僕の視界から消えてくんないかな。
隣の部屋に居るとかさ。
小町と遊ぶとかさ、お昼寝するとかさ、いろいろあるでしょ」
目の前のこの小娘は、今度こそ僕の心情を酌み取り、言うとおりにしてくれるだろうと蒼音は期待した。
『そだね。
でもね・・・・
あたち蒼音のそばがいい。
蒼音のそばが安心できるの』
「うっ・・・・・」
見上げる二つのつぶらな瞳に懇願され、蒼音はちくりと胸を突かれた。
よくよく見れば、純真無垢で小さな可愛い女の子ではないか。
霊と呼ぶには程遠い容姿をしている。
天使や妖精と呼ぶにふさわしい女の子なのだ。
「・・・・そう言われてもな。
でも・・・だって・・・
困ったなう~ん・・・・・
・・・じゃあさ、約束して!
僕のこと・・・・・・その・・・
呪わない?」
『うん!
なんのことかわかんないけど、あたち、のろわない!
約束する』
「本当?絶対だよ」
『うんぜったい約束する、だって、蒼音から離れられないのあたち。
蒼音とあたちはあんまり離れられないみたいなの。
一心同体なのあたちたち!』
蒼音の背後に浮遊したり、足元にひっついたり・・・確かに先程から一時たりとも離れよとしない。
「?えーと・・・・
それはどういう意味なのかな?」
『離れようにも離れられないの』
「え、えっと・・・・・
そのつまり、物理的に距離を空けられないってこと?
そういう意味・・・・なのかな?」
『うんそうみたいなの』
背後霊とはそういうものなのだろうか?
だからこそ背後・・・
と呼ぶのだろうか?
蒼音は妙に納得していた。
いたが・・・・
納得しきれない部分も多々あった。
しかし、そういう道理であるらしい以上、今は事実をのむしかなかった。
あまり無理じいして、それこそ呪われでもしたら厄介だからだ。
「わかったよ。言い分はわかったよ。
でも、僕の邪魔はしないでよ。
トイレの中まで入ってこないでよ。
消えられる時はすぐに消えてよ」
『わかった。
あたち蒼音の嫌がることは絶対ちない。
だってあたち他にどこも行くところないもん。
消えろって言われても消えられないもん』
「あ、うん・・・
そう・・・だね。
そうだよね。
うん、本当にそうだったね」
蒼音は妙に納得してしまった。
確かにいくらなんでも、いきなり消えろといわれて、素直に存在を消せる人間などいるはずもなく。
たとえ人間でなくとも、他人からそのような冷たい言葉を投げられたら、幽霊だって妖怪だって傷つくに違いない。ましてや相手は小さな女の子なのだ。
と、蒼音はこの短時間に人間の傲慢さを反省するまでに至っていた。
とういうより、そう思うより他なかった。というのが正しい結論だ。
「ごめんね。
僕も無理を言いすぎたよ」
『うん、えへ・・・
でもよかった!
蒼音のそばにいられてよかった!』
予想外だった。本当に予想外だった。
そんな満面の笑顔を向けられて、またもや蒼音の心臓がキュン・・・
と切なく収縮した。
(何なんだろうこの感覚?
切ないんだけど心地よくて懐かしい感じがする。
知っていたような初めて味わうような・・・
何なんだろう?
想い出せない・・・・・
でも心地いい・・・・・・・・)
狐か狸につままれたようなこの出逢い。
蒼音は、とりあえずは受け入れる気持ちでいた。
ただ、受け入れる・・・・
とはいっても、大人に相談するつもりではいた。
いくらなんでも、一生背後霊につきまとわれるのは勘弁願いたかった。
この状況を一刻でも早く解決したいことに変わりなかった。
なんなんだよ!
どうしてついてくるんだよ!
僕は用足しに来たの!
悪いけど来ないでくれるかな?」
『え、だめなの?
だったら戸のとこで待ってる』
「絶対だよ!入ってきたら怒るからね!」
蒼音はそう吐き捨ててトイレに籠城した。
しごく普通に考えてみたら、今自分はとてつもなく非現実的な状況に置かれている。
改めて己の不運を呪った。
こういう場合はどうするのが適当なのか?
(とりあえずお母さんが帰ってきたら相談して、お祓いに連れて行ってもらおうかな・・・
こういう霊視体験は世間でもたま~にあるようだしね。
僕の頭がおかしくなったわけでもないよね?悪夢でもないんだよね?
あ~でもまさか、僕の身の上にこんな奇々怪々現象が起こるなんて・・・
僕だって信じられないよ)
暫くトイレで悩んでいた蒼音だが、いつまでも篭っているわけにはゆかなかった。
『蒼音まだ?』
ドアの向こうではしびれを切らした座敷童子・・・
いや、背後霊が自分を呼んでいるではないか。
蒼音はドアを開けて一喝した。
「あのね!
人間にはプライバシーってものがあるの。
一人になれる時間と空間が必要なんだよ。
わかる?君にそこんとこ!」
『・・・わかんない。
だってさっき、ひとりはいやだって叫んでたでちょ?』
「う・・・そ、そうだけど・・・
そ、それよりさ、この世から消えることができないのなら、せめて僕から少し距離を置いてくれない?
はっきり言うと、僕の視界から消えてくんないかな。
隣の部屋に居るとかさ。
小町と遊ぶとかさ、お昼寝するとかさ、いろいろあるでしょ」
目の前のこの小娘は、今度こそ僕の心情を酌み取り、言うとおりにしてくれるだろうと蒼音は期待した。
『そだね。
でもね・・・・
あたち蒼音のそばがいい。
蒼音のそばが安心できるの』
「うっ・・・・・」
見上げる二つのつぶらな瞳に懇願され、蒼音はちくりと胸を突かれた。
よくよく見れば、純真無垢で小さな可愛い女の子ではないか。
霊と呼ぶには程遠い容姿をしている。
天使や妖精と呼ぶにふさわしい女の子なのだ。
「・・・・そう言われてもな。
でも・・・だって・・・
困ったなう~ん・・・・・
・・・じゃあさ、約束して!
僕のこと・・・・・・その・・・
呪わない?」
『うん!
なんのことかわかんないけど、あたち、のろわない!
約束する』
「本当?絶対だよ」
『うんぜったい約束する、だって、蒼音から離れられないのあたち。
蒼音とあたちはあんまり離れられないみたいなの。
一心同体なのあたちたち!』
蒼音の背後に浮遊したり、足元にひっついたり・・・確かに先程から一時たりとも離れよとしない。
「?えーと・・・・
それはどういう意味なのかな?」
『離れようにも離れられないの』
「え、えっと・・・・・
そのつまり、物理的に距離を空けられないってこと?
そういう意味・・・・なのかな?」
『うんそうみたいなの』
背後霊とはそういうものなのだろうか?
だからこそ背後・・・
と呼ぶのだろうか?
蒼音は妙に納得していた。
いたが・・・・
納得しきれない部分も多々あった。
しかし、そういう道理であるらしい以上、今は事実をのむしかなかった。
あまり無理じいして、それこそ呪われでもしたら厄介だからだ。
「わかったよ。言い分はわかったよ。
でも、僕の邪魔はしないでよ。
トイレの中まで入ってこないでよ。
消えられる時はすぐに消えてよ」
『わかった。
あたち蒼音の嫌がることは絶対ちない。
だってあたち他にどこも行くところないもん。
消えろって言われても消えられないもん』
「あ、うん・・・
そう・・・だね。
そうだよね。
うん、本当にそうだったね」
蒼音は妙に納得してしまった。
確かにいくらなんでも、いきなり消えろといわれて、素直に存在を消せる人間などいるはずもなく。
たとえ人間でなくとも、他人からそのような冷たい言葉を投げられたら、幽霊だって妖怪だって傷つくに違いない。ましてや相手は小さな女の子なのだ。
と、蒼音はこの短時間に人間の傲慢さを反省するまでに至っていた。
とういうより、そう思うより他なかった。というのが正しい結論だ。
「ごめんね。
僕も無理を言いすぎたよ」
『うん、えへ・・・
でもよかった!
蒼音のそばにいられてよかった!』
予想外だった。本当に予想外だった。
そんな満面の笑顔を向けられて、またもや蒼音の心臓がキュン・・・
と切なく収縮した。
(何なんだろうこの感覚?
切ないんだけど心地よくて懐かしい感じがする。
知っていたような初めて味わうような・・・
何なんだろう?
想い出せない・・・・・
でも心地いい・・・・・・・・)
狐か狸につままれたようなこの出逢い。
蒼音は、とりあえずは受け入れる気持ちでいた。
ただ、受け入れる・・・・
とはいっても、大人に相談するつもりではいた。
いくらなんでも、一生背後霊につきまとわれるのは勘弁願いたかった。
この状況を一刻でも早く解決したいことに変わりなかった。
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