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邂逅_かいこう__
巡り遭わせ
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転校初日をどうにか無事終えて、蒼音は一人ぽつねんと考え事をしながら下校した。
道すがら、前後に視線を伸ばせば、子供達がじゃれあいながら下校路を歩く姿が目に入る。
だとしても、だからどうだと言うのだ。
無遠慮に声をかければ、彼らが快く招き入れてくれるとも思えない。
子供というのは無邪気で残酷な生き物なのだ。
同じ子供でありながら、どこか排他的で諦めにも似た表情をにじませて、蒼音はただ機械的に歩き続けた。
(・・・この学校は僕を受け入れてくれるのかな?
ううん、どうせ僕なんか教室の隅に追いやられて、誰の記憶にも残らないような人間なんだ。
僕が転校しようと転入しようと、誰一人気にも留めてくれないさ。そうだよ、いつだってそうなんだ)
蒼音はいつになく悲観的だった。
引越しは今回が初めてではなかった。
記憶もおぼろげな幼い頃、また幼稚園の頃・・・・
さらに小学一年生の頃・・・
そして今回。
大人達の事情に振り回され、九歳にして幾度となくさすらいの運命を辿ってきたのだ。
だからもうこんなことには慣れている。
ただ、慣れているとはいっても、誰もいない自宅に帰宅するのはやはり寂しかった。
両親は共働きだった。
だから低学年の頃は放課後の学童ホーム・・・
そして中学年からは鍵っ子となった。
脇目もふらずもくもくと歩いた末に、ようやく我が家にたどり着いた。
我が家・・・
といっても懐かしき生家ではない。
新築独特の匂いのこもる、ニュータウンの一軒家。
近所にはちらほらと、学年は違えど、蒼音と同じような境遇で転校してきた小学生もいるにはいた。
しかし、それこそ、だからどうだと言うべきだろう。
友達というものが、そんな単純な理由から作れないことは知っていた。
低学年ならまだしも・・・思春期手前の四年生は複雑な年齢なのだ。
今朝、出勤前の母に渡された新しい鍵で、まだ慣れぬ新居のドアを大急ぎで開けると、玄関に靴を脱ぎ散らかしたまま、リビングのソファへ駆け寄りつっぷした。
(いいんだいいんだ!そうさ、僕にはこういうお気楽な放課後が似合っているんだ。
一人ってなんて気楽なんだろう。
この家のテレビもゲームもお菓子も、ソファーの特等席も夕方まではぜ~んぶ僕のものだ!
僕の自由なんだ!ははは、自由気ままで楽チンだな~
・・・・・
けど・・・だけど・・・・
いで・・・
しないで・・・・)
「僕をひとりにしないで!
・・・・誰かそばにいてよ!」
蒼音は感情に任せ、うつ伏せになったまま、大声で本音を吐き出し叫んでしまった。
「ニャ~ン・・・」
少々自虐的な蒼音だったが、ふと愛猫の鳴き声に起き上がった。
「あ、忘れてた!ごめんごめん・・・
おまえもいたよな。小町!」
そう声に出すと、蒼音は足元にすりよってきた、真っ白い綿毛のような愛猫の頭を撫でてやった。
「おまえはいいよな~本当の意味でお気楽で。
転校も勉強もないもんな。
ご主人様に黙ってついてきて、後は日がな一日、ここで寝ているだけなんだから・・・・
っったく、猫のくせに新居に馴染むのが早いよな。
小町、おまえ今まで何回引越しを経験した?
僕の生まれる前から飼われていたから、僕なんかよりもずっと色々なことを見知っていて、よっぽど人生経験は豊富だろうな」
猫の小町に愚痴をこぼしながら、蒼音はおやつを物色しにキッチンへ向かった。
引越しのダンボールがまだ数個放置されたままのキッチンで、蒼音は食品ストッカーの中を探った。
「あ!温泉煎餅だ!
お母さん、ちゃんと取り寄せてくれてたんだ」
先程までのむくっれ面から一変して、彼は母が取りおいてくれた、大好物の煎餅にかじりついた。
「うん、やっぱり美味しいな~時(とき)バアのところの温泉煎餅は」
「ニャー」
『それ美味ちいの?』
「あ、ごめん小町も食べたいよな、ほらちょっとだけだぞ」
蒼音は気前よく、大好物の煎餅を細かく割って小町にも分けてやった。
「・・・・・・・?え?
小町・・・?
今何か言った?」
『あたちも食べてみたい』
「・・・・・・・・・・・・・・・??????
こ・・・小町がしゃべったのか?
ははは・・・・まさかね・・・・・」
『それちょうだい』
それは、空耳と呼ぶには鮮明すぎるほどの声色で、蒼音の耳孔(じこう)に響いた。
彼のすぐ背後から、ただならぬ気配と、聞いたこともない声が囁いたのだ。
身の毛がよだち、全身が凍りついた。それでも怖いもの見たさなのだろうか、反射的にだろうか、蒼音はうっかり、でもおそるおそる、後ろを振り返ってしまった。
「う・・・・・
うわぁぁぁ・・・・・・・・・・・・!!!!」
『ね、早くちょうだい』
道すがら、前後に視線を伸ばせば、子供達がじゃれあいながら下校路を歩く姿が目に入る。
だとしても、だからどうだと言うのだ。
無遠慮に声をかければ、彼らが快く招き入れてくれるとも思えない。
子供というのは無邪気で残酷な生き物なのだ。
同じ子供でありながら、どこか排他的で諦めにも似た表情をにじませて、蒼音はただ機械的に歩き続けた。
(・・・この学校は僕を受け入れてくれるのかな?
ううん、どうせ僕なんか教室の隅に追いやられて、誰の記憶にも残らないような人間なんだ。
僕が転校しようと転入しようと、誰一人気にも留めてくれないさ。そうだよ、いつだってそうなんだ)
蒼音はいつになく悲観的だった。
引越しは今回が初めてではなかった。
記憶もおぼろげな幼い頃、また幼稚園の頃・・・・
さらに小学一年生の頃・・・
そして今回。
大人達の事情に振り回され、九歳にして幾度となくさすらいの運命を辿ってきたのだ。
だからもうこんなことには慣れている。
ただ、慣れているとはいっても、誰もいない自宅に帰宅するのはやはり寂しかった。
両親は共働きだった。
だから低学年の頃は放課後の学童ホーム・・・
そして中学年からは鍵っ子となった。
脇目もふらずもくもくと歩いた末に、ようやく我が家にたどり着いた。
我が家・・・
といっても懐かしき生家ではない。
新築独特の匂いのこもる、ニュータウンの一軒家。
近所にはちらほらと、学年は違えど、蒼音と同じような境遇で転校してきた小学生もいるにはいた。
しかし、それこそ、だからどうだと言うべきだろう。
友達というものが、そんな単純な理由から作れないことは知っていた。
低学年ならまだしも・・・思春期手前の四年生は複雑な年齢なのだ。
今朝、出勤前の母に渡された新しい鍵で、まだ慣れぬ新居のドアを大急ぎで開けると、玄関に靴を脱ぎ散らかしたまま、リビングのソファへ駆け寄りつっぷした。
(いいんだいいんだ!そうさ、僕にはこういうお気楽な放課後が似合っているんだ。
一人ってなんて気楽なんだろう。
この家のテレビもゲームもお菓子も、ソファーの特等席も夕方まではぜ~んぶ僕のものだ!
僕の自由なんだ!ははは、自由気ままで楽チンだな~
・・・・・
けど・・・だけど・・・・
いで・・・
しないで・・・・)
「僕をひとりにしないで!
・・・・誰かそばにいてよ!」
蒼音は感情に任せ、うつ伏せになったまま、大声で本音を吐き出し叫んでしまった。
「ニャ~ン・・・」
少々自虐的な蒼音だったが、ふと愛猫の鳴き声に起き上がった。
「あ、忘れてた!ごめんごめん・・・
おまえもいたよな。小町!」
そう声に出すと、蒼音は足元にすりよってきた、真っ白い綿毛のような愛猫の頭を撫でてやった。
「おまえはいいよな~本当の意味でお気楽で。
転校も勉強もないもんな。
ご主人様に黙ってついてきて、後は日がな一日、ここで寝ているだけなんだから・・・・
っったく、猫のくせに新居に馴染むのが早いよな。
小町、おまえ今まで何回引越しを経験した?
僕の生まれる前から飼われていたから、僕なんかよりもずっと色々なことを見知っていて、よっぽど人生経験は豊富だろうな」
猫の小町に愚痴をこぼしながら、蒼音はおやつを物色しにキッチンへ向かった。
引越しのダンボールがまだ数個放置されたままのキッチンで、蒼音は食品ストッカーの中を探った。
「あ!温泉煎餅だ!
お母さん、ちゃんと取り寄せてくれてたんだ」
先程までのむくっれ面から一変して、彼は母が取りおいてくれた、大好物の煎餅にかじりついた。
「うん、やっぱり美味しいな~時(とき)バアのところの温泉煎餅は」
「ニャー」
『それ美味ちいの?』
「あ、ごめん小町も食べたいよな、ほらちょっとだけだぞ」
蒼音は気前よく、大好物の煎餅を細かく割って小町にも分けてやった。
「・・・・・・・?え?
小町・・・?
今何か言った?」
『あたちも食べてみたい』
「・・・・・・・・・・・・・・・??????
こ・・・小町がしゃべったのか?
ははは・・・・まさかね・・・・・」
『それちょうだい』
それは、空耳と呼ぶには鮮明すぎるほどの声色で、蒼音の耳孔(じこう)に響いた。
彼のすぐ背後から、ただならぬ気配と、聞いたこともない声が囁いたのだ。
身の毛がよだち、全身が凍りついた。それでも怖いもの見たさなのだろうか、反射的にだろうか、蒼音はうっかり、でもおそるおそる、後ろを振り返ってしまった。
「う・・・・・
うわぁぁぁ・・・・・・・・・・・・!!!!」
『ね、早くちょうだい』
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