星空を見ても星は降らない

飛騨 栄治

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2話:始まりの朝は

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(はぁ····学校めんどくさい)
いつも学校への道のりは不安と雑念で混在している。部活をしているわけでもなくバイトもしていない、休日でさえいつの間にか終わってしまう僕にとって学校は酷く退屈で窮屈で嫌な場所だ。

「おっ、おはよ亮一。」
今日の時間割を反芻しながら自転車を漕いでいるとそんな声が聞こえた。

「うん、おはよう圭吾。」
目の前には雑誌を読んでいる圭吾、彼の横にはイヤホンをしている広平もいたが毎度の如く朝方の活動は苦手なようで気だるげな顔をしながらコクコクとうなづいていた。

彼らと出会ったのは高一の時だ。進学先の高校に中学の同級生いなかった僕にとって、最初に話しかけてくれた圭吾は救世主のようだった。その後も彼の幼馴染の広平、クラスメイトの山遠里奈、醒ヶ井ゆきなど数人ではあるが友人たちはできていった。

「相変わらず広平は朝がキツそうだね。」

「ああ、今日も朝のジョギングに誘ったけど断られた。」
(幼馴染である君がなぜその行動に移ったのかが一番の謎だよ····)

「広平、もう着くけど大丈夫?」

「ん。」
相も変わらず表情を変えずに短い返事を返してきた。


教室に着くとまばらではあるが、いくらかの席は埋まっていた。
僕の隣の席の彼女も既に席に着いていた。

「おはよう、亮一くん。」
黒いロングストレートの髪、美しい白肌と学年一の美貌を重ね持つ少女。醒ヶ井ゆきだ。

「おはよ。今日はなんの本読んでるの?」
彼女はいつも本を持ち歩いている。種類は多岐にわたりサスペンス、SF、恋愛など様々だった。

「これだよ、『星空の中に』っていうの」
そう言って彼女が見せた本は美しい流星群が表紙に描かれていた。

おそらく、いや間違いなくこの本と彼女の出会いがこの夏のきっかけ。
星をめぐるひと夏の物語の序章だったんだろう。

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