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二度目の戦闘

私はレイラ(3)

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 ふと目が覚めると、柔らかい日差しが入っている部屋のフカフカのベットの上でした。
 その横には、ラム殿が椅子に座った状態で優しくこちらを見ています。

「目が覚めた?調子はどうかな?」

「ありがとうございます。なぜ眠くなってしまったのか、寝てしまったのかわかりませんが、おかげで頭もすっきりした気がします。これからジン様の元へ伺いたいのですがいいですか?」

「もちろん。でも・・・そっか、契約魔獣だからジン様の状態は何となくわかっているんだったよね?」

「はい、その通りです。契約者と契約魔獣、そして契約魔獣通しはお互いの状態が何となくわかってしまうんです。なので、モモ様の状態も何となくわかります」

「そっか。なら説明は必要ないわね。行きましょ」

 ラム殿は私と共に部屋を出て、ジン様の部屋に行ったのです。
 もちろんジン様の状態は分かっています。
 モモ様を奪われて、そして前世で裏切られても、以前は優しく接してくれていたあの女に身を切られ・・更には私を除く幻獣部隊の全滅。あまりのショックに相当ふさぎ込んでしまっている状態なのは把握しています。

 睡眠をとったおかげでしょうか?私は幻獣部隊のメンバーについて、悲しいながらも区切りをつけることができました。
 と言うのも、私が逆の立場だったとしたら、ジン様の為に喜んでこの命を差し出します。その結果、ジン様が無事であるならば後悔は一切ない・・いえ、ジン様と共に過ごせないことは大きな後悔にはなりますが、ジン様のお命と比べれば些細なことです。
 そして、私の仲間たちはその想いのままジン様のために命を散らせたのです。なので私は、悲しい気持ちには蓋をして、その蓋が決してあかないように、ジン様への想いをその蓋の上に乗せることにしたのです。

 でも、時々は、楽しかった仲間との思い出を思い出させてくださいね。
 きっとその思い出が、私に更なる力を与えてくれるでしょう。
 ジン様にして頂いたことを自慢して羨ましがられたり、逆に羨ましい話を聞かされたり、そのやり取りを見て少し呆れているウェイン・・そんな楽しい思い出が・・・

 よし!!気持ちは切り替わりました
 丁度ジン様の部屋の前につきました。

 私とラム殿はジン様の部屋に入ります。
 すると、トーカ様、シロ様がジン様に寄り添っています。
 ソラ様はモモ様とドルロイの偵察任務に行っているので不在です。

 私を見たジン様はソファから立ち上がり、私を優しく抱きしめて下さいました。

「レイラ、他の皆の事・・済まない」

 ジン様も震えています。

「ジン様、私は思うんです。私もですが、皆はとっても幸せだったと。召喚して頂いた上に契約までして頂き、そしてLvの大幅な増加。その後は要職に就かせて頂いた上に自由に部隊を調整もできる。更にはお祭りも経験させて頂きました。召喚魔獣として、こんなにも幸せな暮らしができた者はこれまでいないでしょう。そして、私たちはジン様の為に存在するのです。ジン様をお守りすることができて、皆心から喜んでいます。ですから、決して謝らないでください。皆、本当にジン様の為になれて喜んでいるんです」

 あれ?なんだか視界がぼやけていますが、私の言いたいことはきっとジン様に伝わっているでしょう。

 ジン様が私を優しく、本当に優しく抱きしめて続けて下さいます。
 フフフ、皆、羨ましいでしょ?でも、これは皆がジン様の為に戦ってくれたご褒美だから、この喜びは皆で分け合いましょうね。

「ジン様、ありがとうございます。これからも私は幻獣部隊を代表してジン様の為にこの力を使わせて頂きたいと思っています。これが皆の望みなのです。ですから、何も気に病むことはありません。私は悲しいジン様のお顔を見ていると、とても切なくなってしまいます。お辛いでしょうが、幻獣の皆、そして<アルダ王国>の皆様の為にも笑顔でいて頂けないでしょうか?」

 ジン様の私を抱きしめる力が少し強くなりました。

「わかった。こんなにウジウジしていたら、ウェインにも何言われるかわからないしな。丁度ユージにも同じようなことをさんざん言われていたんだ。お前のためだけに、お前の事だけを想って散った命を無駄にするのか!!とかね。ありがとうレイラ。そしてトーカ、シロ、ラム、これからもこんな俺をよろしくね」

 皆、ジン様は持ち直していただけましたよ。皆が私に力をくれたおかげですね。

 そして、ジン様は笑顔を見せて下さいました。
 
「よし、じゃあまずは辛いけど被害状況の確認だ。俺の知る限り、幻獣の皆、そしてウェインの<影魔法>にのまれたままの【諜報部隊】隊員、そしてモモが操られている・・・だけど、これ以上の被害はある?」

「いいえ、防壁の被害はありますが、人の被害はそこまでです。何とか<アルダ王国>全員の力で抑え込めました」

 そこには、悲しさを内に秘めながらもいつも通りに振舞っていただいているジン様のお姿がありました。
 
「そうか、<神狼>の町の状況はソラからある程度情報は入るとして、地下迷宮ダンジョンはどうなっているのか確認しよう。水晶さんんに全ての権限を使っていいようにしているから、上手くやってくれているとは思うんだ。管理補助者であるモモがあっちにいる以上、何が起こっても不思議ではないからな」

 そうして、ジン様はおそらく<念話>で交信を行っているのでしょうが、いつもと違い何の反応もありません。

「・・まずいな。水晶さんと連絡が取れない。<神狼>の地下迷宮ダンジョンの状況確認ができなくなっている。すでに解除はしているはずだが、あそこから他の地下迷宮ダンジョンに<転移>することができる機能があるので、安全のためにまずは状況を確認しよう」

 地下迷宮ダンジョンをいつもジン様の代わりに管理してくださっている水晶様との連絡が取れない。そうなりますと、ジン様の危惧されている通り、万が一モモ様の管理補助者の権限を利用して他の地下迷宮ダンジョンに<転移>されてしまうと、ここ<魔界森>については戦力的には大丈夫かもしれませんが、その他の地下迷宮ダンジョンの町については壊滅的なダメージを受けてしまうかもしれません。
 これは確かに一大事で、即確認する必要があるでしょう。

「ジン様、では私レイラがその任務お引き受けします」

「いや、モモがあっちにいる以上この任務は神獣でないと危険だ。・・・今ソラに確認したが、やはりモモがいる以上ソラはあの場に意識を向ける必要があるそうなので、トーカ、行ってくれるか?」

「ジンが心配だけど、わかった。シロ、ジンのことよろしくね」

 ジン様はソラ様に<念話>で確認を取られたようです。
 そして、シロ様がトーカ様に頷いた瞬間に、トーカ様は<転移>を使われました。
 きっと、即<神狼>の町に行ったのでしょう。

 確かにジン様の仰る通り、私では力不足です。少々悲しいですが、こればかりはどうしようもありません。万が一私が<心身操作>でもされたらジン様にご迷惑をおかけしてしまいます。

「トーカの調査結果待ちになるけど、万が一<神狼>の地下迷宮ダンジョンにあいつらが侵入していたら、あそこは廃棄しなくてはならないだろうな」

 ジン様の仰っている廃棄とは、以前ドルロイの国にある<S:帝級>を育てることができる地下迷宮ダンジョンと同じように、完全に潰してしまう事を仰っているのでしょう。
 少し悲しそうなのは、モモ様との再会された場所であるからだと思います。
 
 程無くして、トーカ様が戻ってこられました。
 この短い時間ジン様の元を離れるだけでも、ジン様の事を心配されてた気持ちはよくわかりますね。

「ジン、これはもうソラから聞いていると思うけど、あいつらは<神狼>の町にいるだけで地下迷宮ダンジョンにはいなかったよ。それでね、地下迷宮ダンジョンなんだけど、何だか膜が張ってて中に入れなかったの。<転移>もできなかったよ」

「そうなのか?俺も試してみるか・・」

 ジン様は<転移>を試されているようですが、一向に<転移>する気配はありません。

「俺も行けなくなってる。水晶さんとも連絡が取れないし、何かあるな。だが、そうするとあいつらも入れないという事か?まさかあいつらが何かしてこんな状況になっているなら本当に最悪の状況だが・・今のところ他の地下迷宮ダンジョンには異常はないな・・トーカ、ソラと協力してあいつらの監視を強化した上で、状況を確認してくれ」

「わかったわ」

 そういってトーカ様は再び<転移>を使用して<神狼>の町に行かれました。
 ドルロイのせいで平和が脅かされています。
 早く前のように楽しい世界が訪れますように。
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