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(25)ジンタ町で(5)
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ダイヤキングを始めとしたカード達の暴走によって、いつの間にか教会跡地がシンロイ商会として活用されることになったジンタ町。
商会開設の一報は聞いているのだが、場所や決定した販売物品については一切聞いていない、いや、聞いてしまうときっと碌な事にならないと思って敢えて聞こうとしていないロイは、結構長くこの町に滞在したのでそろそろ次の町に向かおうかと考えている。
「長らくお世話になりました。今日は旅立とうと思っているので、ここで食事をするのはこの朝食が最後です。とても美味しかったですよ」
そう決めたロイは朝食を食べている時に少し顔見知りになった従業員にこう告げると、店員は慌てて厨房に入って行き、即料理人や他の従業員を引き連れてロイの前にやってきた。
何故かフロントで対応している人まで勢揃いしている。
「ロイ様!私達はこの御恩を一生忘れません。またこの町に来られる時がありましたら、是非とも当宿をご使用ください。最上のおもてなしでお迎えさせていただきます」
まるで練習したかのように、一斉に腰を折って深くロイに頭を下げる従業員達。
ロイが聞いているのはこの町の癒し手不足の対策をした事と教会跡地にシンロイ商会を立ち上げる事しか聞いていないので、なぜここまで従業員一同に感謝されているのかがわからない。
その真相は当然ダイヤキングによる大量の高級食材の提供を始めとして、過剰なまでの金銭の支払いが行われていたからだ。
実は一部の従業員やその家族達の中には万屋として活動したハート部隊の二人の回復魔法を受けた者がいるのだが、そこからロイに繋がる事は無い。
「え?ど、どういたしまして?」
訳が分からないのだが、恐らく……いや、間違いなくダイヤキングが何かしでかしたのだろうと思い、少々疑問形になりつつも問題ない旨を告げ食事を終えると、全従業員の見送りの元で宿を出て少々恥ずかしい思いをしながらも町から出て行く為に移動するロイ。
この町に設置するシンロイ商会の為にハートセブンとダイヤセブン、そして女性だけでは舐められるとの事でクラブセカンドが残る事は聞いているので、三人を残して門を出る。
「おっ!また会ったな!今度はどこに行くんだ?方向が同じであればもちろん無料で乗せてやるぞ?俺達はバルサ村に行く予定だが」
門を出た所にいたのは、ジンタ町に来る途中で食事をご馳走した冒険者一行。
そのうちの一人の命を救った事が万屋発祥の切っ掛けとなっているが、そこは秘匿事項なので、ロイとしては食事をご馳走してそのお返しに町まで荷馬車に乗せてもらっただけの関係と言う事になっている。
「特に明確な目的がある訳ではないですが、その村は結構な距離がありますか?」
「う~ん、馬車で一週間は必要だな」
そう聞くと、もっと近い場所に行った方が良い気がするロイは申し出を断る。
「そっか。まっ、旅は気の向くまま……次に会う機会があればまたよろしく頼むな!」
このやり取りで次の目的地までの距離を把握しておく必要がある事を思い出し、他のスペード部隊を召喚して最も近い町を調べてもらう事にした。
この一連の動作は街道に入って歩きながら行っており、周囲に人はいないとスペードキングがロイに報告済みなので、スペード部隊の空いている五体を即座に召喚して活動してもらう。
「うん!分かり易い」
ロイがこう嬉しそうに言うのは、彼らの首にはチョーカーが付いており、その先端にはダイヤ部隊特性の識別用のタグが付けられているからだ。
そこにロイにしか見えない状態で部隊とナンバーが記載されているので、同じ個体と言っても過言ではない召喚したカード達の識別ができるようになっているのだが、王都に残している面々には別動隊が態々チョーカーを届けに向かっている。
ロイが感動している最中に恐らくカードのままであるスペード部隊の誰かを経由してキングに情報が渡ったのだろう……スペードキングが最も近い町までの方向、到着に必要なおおよその時間を報告してくれた。
「そっか、俺の動きで十時間……結構あるね。少しインチキしても良い?」
インチキとは椅子の形の荷台に座り、その荷台をクラブの部隊が高速で運ぶ事であるのだが、頼られたカード達は嬉しいので即この案は採用される事になる。
「一応、目的の町、アザヨ町だっけ?そこに二時間ほどで到着する位置まで運んでくれる?」
こうして誰の目にも止まらない程の速さで移動するロイ。
途中でジンタ町に巣くっていた教会の者、スーレシア一行をぶち抜いた事はロイの実力では把握できない。
ダイヤキングはカードで保管されており周囲は把握できないし、顕現しているクラブの部隊にとってみれば取るに足らない一般人と言う認識なので報告をせず、ロイの陰に潜んでいるスペードキングもスーレシア一行はただの一般人と言う認識だ。
「やっぱり相当ズルだけど、仕方がない……な。体力をつけるのはこの二時間の運動と言う事で!」
カードの有用性にすっかりはまってしまっているロイだが、一応この世界で自分個人の力は最弱に近い為に運動の意味も兼ねて歩き始めて結構な時間が経過する。
「我が主、街道のはずれに人の気配があります。特に外敵に襲われていると言うわけではありませんが、暫く同じような場所をうろうろしているような気配です。ひょっとしたら、街道に戻れなくなった人かもしれません」
そこに、ロイであれば弱者や困っている人を見捨てないとダイヤキングから何度も言われてその通りだと思っているスペードキングから情報が上がる。
商会開設の一報は聞いているのだが、場所や決定した販売物品については一切聞いていない、いや、聞いてしまうときっと碌な事にならないと思って敢えて聞こうとしていないロイは、結構長くこの町に滞在したのでそろそろ次の町に向かおうかと考えている。
「長らくお世話になりました。今日は旅立とうと思っているので、ここで食事をするのはこの朝食が最後です。とても美味しかったですよ」
そう決めたロイは朝食を食べている時に少し顔見知りになった従業員にこう告げると、店員は慌てて厨房に入って行き、即料理人や他の従業員を引き連れてロイの前にやってきた。
何故かフロントで対応している人まで勢揃いしている。
「ロイ様!私達はこの御恩を一生忘れません。またこの町に来られる時がありましたら、是非とも当宿をご使用ください。最上のおもてなしでお迎えさせていただきます」
まるで練習したかのように、一斉に腰を折って深くロイに頭を下げる従業員達。
ロイが聞いているのはこの町の癒し手不足の対策をした事と教会跡地にシンロイ商会を立ち上げる事しか聞いていないので、なぜここまで従業員一同に感謝されているのかがわからない。
その真相は当然ダイヤキングによる大量の高級食材の提供を始めとして、過剰なまでの金銭の支払いが行われていたからだ。
実は一部の従業員やその家族達の中には万屋として活動したハート部隊の二人の回復魔法を受けた者がいるのだが、そこからロイに繋がる事は無い。
「え?ど、どういたしまして?」
訳が分からないのだが、恐らく……いや、間違いなくダイヤキングが何かしでかしたのだろうと思い、少々疑問形になりつつも問題ない旨を告げ食事を終えると、全従業員の見送りの元で宿を出て少々恥ずかしい思いをしながらも町から出て行く為に移動するロイ。
この町に設置するシンロイ商会の為にハートセブンとダイヤセブン、そして女性だけでは舐められるとの事でクラブセカンドが残る事は聞いているので、三人を残して門を出る。
「おっ!また会ったな!今度はどこに行くんだ?方向が同じであればもちろん無料で乗せてやるぞ?俺達はバルサ村に行く予定だが」
門を出た所にいたのは、ジンタ町に来る途中で食事をご馳走した冒険者一行。
そのうちの一人の命を救った事が万屋発祥の切っ掛けとなっているが、そこは秘匿事項なので、ロイとしては食事をご馳走してそのお返しに町まで荷馬車に乗せてもらっただけの関係と言う事になっている。
「特に明確な目的がある訳ではないですが、その村は結構な距離がありますか?」
「う~ん、馬車で一週間は必要だな」
そう聞くと、もっと近い場所に行った方が良い気がするロイは申し出を断る。
「そっか。まっ、旅は気の向くまま……次に会う機会があればまたよろしく頼むな!」
このやり取りで次の目的地までの距離を把握しておく必要がある事を思い出し、他のスペード部隊を召喚して最も近い町を調べてもらう事にした。
この一連の動作は街道に入って歩きながら行っており、周囲に人はいないとスペードキングがロイに報告済みなので、スペード部隊の空いている五体を即座に召喚して活動してもらう。
「うん!分かり易い」
ロイがこう嬉しそうに言うのは、彼らの首にはチョーカーが付いており、その先端にはダイヤ部隊特性の識別用のタグが付けられているからだ。
そこにロイにしか見えない状態で部隊とナンバーが記載されているので、同じ個体と言っても過言ではない召喚したカード達の識別ができるようになっているのだが、王都に残している面々には別動隊が態々チョーカーを届けに向かっている。
ロイが感動している最中に恐らくカードのままであるスペード部隊の誰かを経由してキングに情報が渡ったのだろう……スペードキングが最も近い町までの方向、到着に必要なおおよその時間を報告してくれた。
「そっか、俺の動きで十時間……結構あるね。少しインチキしても良い?」
インチキとは椅子の形の荷台に座り、その荷台をクラブの部隊が高速で運ぶ事であるのだが、頼られたカード達は嬉しいので即この案は採用される事になる。
「一応、目的の町、アザヨ町だっけ?そこに二時間ほどで到着する位置まで運んでくれる?」
こうして誰の目にも止まらない程の速さで移動するロイ。
途中でジンタ町に巣くっていた教会の者、スーレシア一行をぶち抜いた事はロイの実力では把握できない。
ダイヤキングはカードで保管されており周囲は把握できないし、顕現しているクラブの部隊にとってみれば取るに足らない一般人と言う認識なので報告をせず、ロイの陰に潜んでいるスペードキングもスーレシア一行はただの一般人と言う認識だ。
「やっぱり相当ズルだけど、仕方がない……な。体力をつけるのはこの二時間の運動と言う事で!」
カードの有用性にすっかりはまってしまっているロイだが、一応この世界で自分個人の力は最弱に近い為に運動の意味も兼ねて歩き始めて結構な時間が経過する。
「我が主、街道のはずれに人の気配があります。特に外敵に襲われていると言うわけではありませんが、暫く同じような場所をうろうろしているような気配です。ひょっとしたら、街道に戻れなくなった人かもしれません」
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