暴走能力によって、いつの間にか大陸に名を轟かせる商会長!

 とある複数の町や村でまことしやかに囁かれている噂があり、やがてその噂は尾ひれや背びれが付いて大きくなって大陸中に広まっている。
 噂とは、火のない所に煙は立たないと言われている程度に真実味の有りそうなモノであれば、余計な装飾が付いて広がって行くのが世の常。
 もちろん人々の願望であったり、欲望であったりする内容であれば真実は二の次で広がる事もあるだろう。

「俺、ちょっと困っている事があってさ……冒険者ギルドに依頼したわけよ」

「え?何を??」

「蔵を掃除していたらさ、年代モンの魔道具が出てきたわけさ」

「あ~、良くありがちな、価値がありそうと期待しているって感じ?」

「それはそうだろ?だけどよ、ギルドでは一般の物品の鑑定はしていないと言うから魔道具を販売している店に持ち込んだら、ガラクタだって言うんだよ」

「大体そうでしょ?変に期待しすぎ!」

「でもよ?そのガラクタを回収させろってうるせーんだよ。そんな態度、誰がどう考えても怪しいだろう?」

「……確かに。で、どうするの?私は鑑定魔法を使えないわよ」

 と、日常生活にありそうな悩みや……


「神父様、何とか娘を、娘をお願いします!」

「……大変申し訳ありませんが、私達の力では完治させる事はできないのです」

 自らを頼ってきてくれた、病に侵されている少女を連れた父親に己の無力を伝えなくてはいけない、回復魔法を使える神父の悩みや……

「隣国の状況がおかしいぞ。不可侵協定があるはずだが、万が一の事もある。しかし、我が国が独自で調査をしたことが明るみになると、逆に侵攻のきっかけを与えかねない」

 国家規模の悩みもあるのだが、全てこの大陸中に広まっている噂に縋る事になる。

 依頼達成難易度は一切関係ないが、受けるか否かの明確な判断基準は公になっていない。

 しかし一旦依頼を受けてもらえれば、どのような依頼であっても必ず完遂すると噂になっている万屋の話……

 一部の人々は、やはり願望からそのような店があると思いたいだけだと軽く噂を聞き流しているが、一方で実際に依頼を受けてもらえた人々は確実に存在しており、彼等はその噂を聞いても自ら率先して肯定する事も無ければ、当然否定する事もない。

 そんな万屋……商会長が持つ力によってありとあらゆる事を解決しているのだが、商会長の望みとは異なって配下は一切大人しくしておらず、商会長の為にと言う気持ちが暴走して過剰な行動を行っている。

 その商会長と暴走配下が周囲を巻き込んで徐々に活動の幅を増やして行く。
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