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ロイドとヨナ
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「ヨナ、漸く<六剣>本来の目的は果たしたと言えるだろ?一旦故郷に戻ってみるか?」
他の<六剣>達同様に、ほぼ隣同士とも言える場所の広大な土地の屋敷で共に生活している<闇剣>ヨナに、ロイドが話を振る。
そもそも<無剣>と<六剣>は、この世界が安定したために存在意義は薄くなっていた。
そうなると、<無剣>を守るために初代<無剣>から仕えていた<闇剣>としても、その任から解放される事になる。
そう言った事も含め、ケジメをつけるためにも一旦<闇剣>の一族が住む場所、ヨナの故郷に戻るのはどうだとロイドは提言している。
あの戦闘の後、ヨナは<闇>魔術を使って自らの存在を隠そうとする事も無くなって、素顔を曝け出しており、更には名前を第三者がいる所で呼ばれる事も問題無くなっていた。
この弊害としては、今迄謎に包まれていた<闇剣>ヨナが余りにも美しい存在であったため、ファンクラブなるモノが出来て騒ぎ立てるようになった事だろうか。
「ウフフ、そうしなさいな、ヨナ」
優しく微笑んでいるのは、ロイドの母であり先代<無剣>所持者であるユリナス。
共にこの屋敷に住んでおり、時折……と言うよりも、ほぼ毎日のようにアルフォナが顔を出しに来てユリナスと話している。
ユリナスの所には、日中に来ているアルフォナだ。
「留守なら見ておくわよ。と言っても、皆さんがいらっしゃるから何もする事は無いけれど……」
当然この屋敷にも多数の使用人が住み込みで働いているので、特にこれと言ってユリナスの言う通り何もする事は無い。
「わかりました。ロイド様、行きましょう!」
表情も豊かになり口数も多くなってきているヨナ。
改めて微笑まれたロイドは美しいヨナを直視できない時があるのだが、そんな息子ロイドの姿を嬉しそうに見ているユリナスは、微笑むだけで茶化す様な事は決して口にしない。
こうして決定した<闇剣>一族の故郷への訪問。
二人の力が有れば、どのような距離でも問題ないし、どのような結界でも障害なくすり抜ける事が出来る。
「ここです!ロイド様!」
「なんだか、瞬間に着いたから感慨が何もないのが残念だな」
贅沢な愚痴をこぼしているロイド。
「ようこそお越しいただきました。私がこの村の村長をしておりますラトルと申します」
明らかに強い<闇>属性を持っていると思わせる男性が音もなく現れるのだが、今の二人にとっては全て良く見えている。
「始めまして。今代<無剣>所持者のロイドです。母であるユリナスからもくれぐれもよろしくお伝えくださいと言われております。長きに渡り、<無剣>所持者に仕えて頂きましてありがとうございます。既にご承知かと思いますが、<六剣>と<無剣>は目的を達成しており、その存在を秘匿する事も、守り抜く必要もなくなっております。皆さんは自由です。長きに渡り、その身を盾にして<無剣>を守って頂き、ありがとうございました」
心の底からのお礼を伝えるロイド。
傍にいるヨナも、そんなロイドを見て両手を口に当てて涙を流している。
「ロイド様、お礼を申し上げるのは我らの方です。初代<無剣>所持者時代に我らは<無剣>を守ると決めたのです。そしてその使命を果たさせてくださった上に、この世界を守る事が出来た。これ以上嬉しい事はありません」
そっとロイドの手を取って語るラトル。
「確かにロイド様の言われる通り、我らは使命を果たしたと言えます。ですから、今後は結界を変更して、身を守るための結界、魔獣達からの防衛と言う意味の結界だけを残して外界との交流を始めようかと思っております」
ヨナの故郷は<闇剣>所持者として一族を輩出してきた為、その集落の存在すら隠蔽していたのだ。
その環境から脱却し、これからは表の世界で活動すると宣言した。
その後は……一族を上げて守り抜いた<無剣>の今代所持者であるロイドを歓迎する祭り、そして<闇剣>を継承する一族としての任務を終えた事、やり遂げた事に対する祭りが開催された。
「ロイド様……」
お酒を飲んで、ほんのりと赤くなった奇麗な顔で幸せそうにロイドにもたれるヨナ。
既にロイドも酔っているのだが、意識はしっかりとしている。
ロイドは、出がけにこっそりと母であるユリナスに言われていることがあった。
一つ目は、長きに渡って<無剣>を守り抜いてくれた一族への深い感謝を伝える事。
二つ目は、その末裔である今代<闇剣>所持者のヨナとの関係をしっかり告げて来る事だ。
流石は母であるユリナス。
息子であるロイドの気持ち、そしてヨナの気持ちもすっかり見抜いており、良い機会だからハッキリしろと発破をかけたのだ。
幸せそうな顔をしているヨナを見て、その言葉を改めて思い出し、今この場がその時だと決断するロイド。
ヨナに向かい合い、真剣な目でこう告げる。
「ヨナ、今迄一族で俺達を守り続けてくれてありがとう。自分自身の存在すら秘匿して長きに渡り付き従ってくれて、感謝しかない。そんなヨナを、俺は心底大切に思っている。正直に言うと、もうヨナ無しでは生きていけない。これからも、俺と共に未来へ向けて歩いてくれないだろうか?」
柄にもなく、手に汗をかいているロイド。
「……ロイド様!!嬉しいです。はい。はいっ!宜しくお願いします!」
もちろん身体能力が極めて高いヨナの一族、酔ってはいるが全てが聞こえており、ここからさらに盛り上がったのは言うまでもない。
他の<六剣>達同様に、ほぼ隣同士とも言える場所の広大な土地の屋敷で共に生活している<闇剣>ヨナに、ロイドが話を振る。
そもそも<無剣>と<六剣>は、この世界が安定したために存在意義は薄くなっていた。
そうなると、<無剣>を守るために初代<無剣>から仕えていた<闇剣>としても、その任から解放される事になる。
そう言った事も含め、ケジメをつけるためにも一旦<闇剣>の一族が住む場所、ヨナの故郷に戻るのはどうだとロイドは提言している。
あの戦闘の後、ヨナは<闇>魔術を使って自らの存在を隠そうとする事も無くなって、素顔を曝け出しており、更には名前を第三者がいる所で呼ばれる事も問題無くなっていた。
この弊害としては、今迄謎に包まれていた<闇剣>ヨナが余りにも美しい存在であったため、ファンクラブなるモノが出来て騒ぎ立てるようになった事だろうか。
「ウフフ、そうしなさいな、ヨナ」
優しく微笑んでいるのは、ロイドの母であり先代<無剣>所持者であるユリナス。
共にこの屋敷に住んでおり、時折……と言うよりも、ほぼ毎日のようにアルフォナが顔を出しに来てユリナスと話している。
ユリナスの所には、日中に来ているアルフォナだ。
「留守なら見ておくわよ。と言っても、皆さんがいらっしゃるから何もする事は無いけれど……」
当然この屋敷にも多数の使用人が住み込みで働いているので、特にこれと言ってユリナスの言う通り何もする事は無い。
「わかりました。ロイド様、行きましょう!」
表情も豊かになり口数も多くなってきているヨナ。
改めて微笑まれたロイドは美しいヨナを直視できない時があるのだが、そんな息子ロイドの姿を嬉しそうに見ているユリナスは、微笑むだけで茶化す様な事は決して口にしない。
こうして決定した<闇剣>一族の故郷への訪問。
二人の力が有れば、どのような距離でも問題ないし、どのような結界でも障害なくすり抜ける事が出来る。
「ここです!ロイド様!」
「なんだか、瞬間に着いたから感慨が何もないのが残念だな」
贅沢な愚痴をこぼしているロイド。
「ようこそお越しいただきました。私がこの村の村長をしておりますラトルと申します」
明らかに強い<闇>属性を持っていると思わせる男性が音もなく現れるのだが、今の二人にとっては全て良く見えている。
「始めまして。今代<無剣>所持者のロイドです。母であるユリナスからもくれぐれもよろしくお伝えくださいと言われております。長きに渡り、<無剣>所持者に仕えて頂きましてありがとうございます。既にご承知かと思いますが、<六剣>と<無剣>は目的を達成しており、その存在を秘匿する事も、守り抜く必要もなくなっております。皆さんは自由です。長きに渡り、その身を盾にして<無剣>を守って頂き、ありがとうございました」
心の底からのお礼を伝えるロイド。
傍にいるヨナも、そんなロイドを見て両手を口に当てて涙を流している。
「ロイド様、お礼を申し上げるのは我らの方です。初代<無剣>所持者時代に我らは<無剣>を守ると決めたのです。そしてその使命を果たさせてくださった上に、この世界を守る事が出来た。これ以上嬉しい事はありません」
そっとロイドの手を取って語るラトル。
「確かにロイド様の言われる通り、我らは使命を果たしたと言えます。ですから、今後は結界を変更して、身を守るための結界、魔獣達からの防衛と言う意味の結界だけを残して外界との交流を始めようかと思っております」
ヨナの故郷は<闇剣>所持者として一族を輩出してきた為、その集落の存在すら隠蔽していたのだ。
その環境から脱却し、これからは表の世界で活動すると宣言した。
その後は……一族を上げて守り抜いた<無剣>の今代所持者であるロイドを歓迎する祭り、そして<闇剣>を継承する一族としての任務を終えた事、やり遂げた事に対する祭りが開催された。
「ロイド様……」
お酒を飲んで、ほんのりと赤くなった奇麗な顔で幸せそうにロイドにもたれるヨナ。
既にロイドも酔っているのだが、意識はしっかりとしている。
ロイドは、出がけにこっそりと母であるユリナスに言われていることがあった。
一つ目は、長きに渡って<無剣>を守り抜いてくれた一族への深い感謝を伝える事。
二つ目は、その末裔である今代<闇剣>所持者のヨナとの関係をしっかり告げて来る事だ。
流石は母であるユリナス。
息子であるロイドの気持ち、そしてヨナの気持ちもすっかり見抜いており、良い機会だからハッキリしろと発破をかけたのだ。
幸せそうな顔をしているヨナを見て、その言葉を改めて思い出し、今この場がその時だと決断するロイド。
ヨナに向かい合い、真剣な目でこう告げる。
「ヨナ、今迄一族で俺達を守り続けてくれてありがとう。自分自身の存在すら秘匿して長きに渡り付き従ってくれて、感謝しかない。そんなヨナを、俺は心底大切に思っている。正直に言うと、もうヨナ無しでは生きていけない。これからも、俺と共に未来へ向けて歩いてくれないだろうか?」
柄にもなく、手に汗をかいているロイド。
「……ロイド様!!嬉しいです。はい。はいっ!宜しくお願いします!」
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